2022年11月の記事一覧
第5話 謎の甲板週番(3/6)
幹部候補生学校では陸上戦闘訓練も行います。訓練の総仕上げとして陸上自衛隊の演習場で約1週間、泊まり込みで戦闘訓練を行います。
訓練初日は台風が通り過ぎた後で、天気は最高でしたが演習場は足が取られるほどぬかるんでいました。当然、陸上戦闘シーンに天候等の環境条件は関係ありません。予定通り訓練は始まりました。しかし、昼過ぎに負傷者が出たとの報告が上がり、救急車もやってきました。
担架で運ばれてき
第5話 謎の甲板週番(2/6)
翌日、学生隊本部に出勤し当直学生等々の指示伝達、その他学生の指導を終えた後、机を横に並べている赤鬼に問いました。
「甲板週番A正の学生はどんな奴なんだ。存在感がなくて今まで全く気が付いていなかったがなかなか面白いやつだと思うんだが。」
すると赤鬼は一瞬、パソコンのキーボードの手を止めてディスプレイを見たまま言いました。
「お前もそう思うか。正直、あいつが甲板週番Aにつくまで全く気にも
第5話 謎の甲板週番(1/6)
五辻の思い出話は止まらない・・・・。
***
次の日の夜の巡検も私は彼のコースについていきました。
巡検ラッパが鳴り終わり、彼は回れ右をして当直士官にいつもどおり申告をして巡検コースの先導を始めました。
当直で巡検コースの後に赤鬼・青鬼が付いてくる可能性は3分の2です。私たちが自分の先導するコースについてくるかどうかが判明するのがこの回れ右をして後ろを向いた瞬間です。
ほどんど
第4話(4/4) 青鬼の思い出
翌朝、彼はA4用紙のレポートを2枚持ってきました。私はその場で彼を立たせたまま一読しました。書かれている内容は、昨晩私が指導した内容をよく理解した上で、護衛艦上のチームワーク、人間関係をいかに円滑に確立するかが戦闘能力を発揮できるかがカギである旨が書かれていた所見でした。個人的には文句はなかったのですが、恥ずかしながらこの物静かな候補生を私は全く注目していなかったんです。もちろん名前は知っていた
もっとみる第4話(3/4) 青鬼の思い出
「話が脱線したね。青鬼時代の話をしようか。私のことだけ話しても仕方がないし、幹部候補生学校のことも勉強されてきているだろうから、ちょっと横道にそれた話をしようかな。
赤鬼、青鬼は学生隊全体の服務指導、いわゆる生活面に関するしつけの指導をするんだけど候補生は多いときで約400人近くになるときがあるんだ。こちらは2人しかいないから物理的に指導することははっきり言って難しいんです。だから鬼として厳し