#101 テレビを観ない私が、この番組愛を語る
今朝もThe Repair Shop (リペアショップ) という夢を見るような番組によって目覚め、夫の淹れてくれた珈琲を飲みながら見入ってしまった。
先日の投稿でこの番組のことに触れたが、ここに持ち込まれる物には、涙なくしては観られないそれぞれのストーリーがある。
今朝のエピソードで、まずリペアショップに持ち込まれたのは、バラバラに壊れた幼児用の椅子。
依頼主のご長男が2歳の時に大叔父さんが作ってくれた思い出の品である。なぜそれほどまでに思い入れがあるかといえば、そのご長男は幼少の頃からの病気で、30代の若さでこの世を去っているから‥‥
バラバラになって初めて気づいたのが椅子の底に取り外しのできる秘密の空間があったことで、そこから大叔父さんからの手紙が出てきた。
そして家族は、この椅子が1935年に取り壊された船の一部で作られたものだと知る。それは1906年に作られた世界初の大型クルーズ船。大叔父さんはその乗船員だったのだ。
大叔父さんにとっても解体された船の魂を何かに吹き込みたいような想いでこの椅子を作られたのではないだろうか。
番組では、見事な木工技術でこの椅子の修理が進んでいく‥‥
そして、もともとの手紙とともに、今度は修理を手掛けた人の手紙も腰掛の裏の空間にそっと入れられて、完成の日を迎える。
画像のなかの存在感ではわかりにくいが、この椅子はお父さんが指一本でもち上げられるくらい小さなものだ。
もう一度あの頃の姿に戻った椅子を抱きしめながら
「普通は親が子どもに教えるものだが、子どもが (闘病を通して) 親に教えてくれたことは計り知れない‥‥」と涙を流すお父さん。
その椅子をまだ見たことのない、孫息子(他界された息子さんの子)に早く見せたい、と素敵な笑顔を見せた。
続いての依頼主は、ご両親のウエディングアルバムを抱えて現れる。
かつては真っ白だったピッグスキンのページを開くとMusic Box (オルゴール) が音色を奏でていた皮張りのフォトアルバム。火災による煙のダメージを受け、薄汚れてしまっていたが、愛してやまない妻を4年前に亡くした後、お父さんはこのアルバムを毎日開いていたという。
「ほとんどの写真は父が母の美しさに目を奪われているものばかりなんだ。父の愛おしそうな視線で、どれだけ母を愛したかが分かる‥‥」
そのお父さんのためにアルバムをもとの状態に戻してあげたいというのが息子さんの想い。
そこで皮表紙と製本、紙の復元、オルゴールの修理という3つの部門のスペシャリストたちが真心込めて仕事をしていく。
素晴らしい出来でアルバムが再生された。
ただ、息子さんの口からは、アルバムの完成を見ずにお父さんが亡くなられたことが告げられることとなった。
話す息子さんも、修理に携わった人たちの目も涙で潤んでいく。
似たような経験のある視聴者なら一緒に泣いたことだろう‥‥
そのアルバムは家族のなかできっと誇らしく大切に守られていくことだろう。
次なる依頼主はこんな大物とともに登場する。
彼女が子どもの頃、両親がビレッジショップ (村にひとつある何でもある店) を営んでいて、Humpy はその店先に置かれていたという。
壊れて使われなくなってからはずっと庭に野ざらしになっていたが、
自分が母親になって、我が子に、そしてまた海辺の村を訪れる子どもたちにも、動くHumpy に乗せてあげたいと思い、もとの姿にならないかと打診する。
これは中のモーターのシステムが錆びて電動部分は完全にプロへの発注が必要だったが、多くの専門分野の人たちの手で Humpy はどんどん元の輝きを取り戻していく。
とうとう納入の日がやってきた。
依頼者とともにやってきた息子君は Humpy を見るなり顔を輝かせるのだ。
お母さんに Humpy の背中に乗せてもらい、10pコインをマシンに入れる。
私たちにも憶えのある、あのうぃんうぃん上下する動きだ。
こうして、普通に考えれば絶望的な状態の Humpy が蘇ったのだ。
依頼主が子どもだった頃のままの10p (約15円) という破格のコイン投入形式を残して‥‥
新しくなったモーターならば、これからも長い間多くの子どもたちを喜ばせ続けていくことだろう。
そしてそれを見る家族の笑顔や笑い声も新生Humpy がさらに作っていくのだ思うと、こちらまでワクワクする。
モノは物質でしかないのだろうか‥‥
思い出を語る人がいて、その想いに寄り添い一生懸命にもとあった輝きを吹き込む人がいる。
再生された命に感嘆の声を上げ、その場の人のみならず、遠くTVを視聴する人もみんなが感動するのは、物に込められた魂があるからなのだと思う。
消費社会、使い捨て文化の真逆を行く、英国BBCの "The Repair Shop"。日本で是非観られるようになることを祈ってやまない。
物を大切にすることの美しさが溢れる世界。それは日本の持つ「もったいない」の精神を瞬時に取り戻す起爆剤になると私は思っている。
テレビ関係者のみなさんに是非ご一考いただきたいです。願いよ叶え‥‥
尚、サムネ画像は、https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2019/dec/26/the-repair-shop-we-can-fix-anything-but-a-broken-heart-and-brexit より引用しています。
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