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【映画レビュー】『フォレスト・ガンプ 一期一会』:1ミリも揺らがなかった一途な思い
体調を崩して休養することになった機会に、名作と言われているのに見ていなかった作品を見てみることにした。その一つが、この『フォレスト・ガンプ』である。
大事な人を一生涯思い続ける
フォレスト・ガンプは、軽い知的障害があるように描かれている。そのため、いろいろな人にいじめられたり、軽く見られたり、利用されたりもする。そういうできごとを多少おもしろおかしく描いている点もあるが、全体としてはフォレストを、愛すべき魅力的な人物として浮かび上がらせている。
彼の何よりも素敵なところは、自分のことを偏見なしに受け入れてくれた人のことを、一生ずっと一途に思い続けたことだと思う。決して裏切ったり、見捨てたりすることはなかった。そこが1ミリも揺らがなかったのが、観ていて私が心を打たれた最大の要因だった。
直感的に「信用できる」と
まずは、言うまでもなくママ。ママは、フォレストのためなら何でもしてくれた。そして、決して他の子たちと違うというようには扱わなかった。
そして、ジェニー。最初にスクールバスに乗ったときに、誰一人席を空けてくれなかったが、ジェニーだけが隣に座らせてくれた。そして、生涯の友、そして恋人となる。
次は、ベトナム戦争で出会った同僚兵士のババ。ババは、フォレストにいつも熱心にエビ漁のことを話してくれた。そして、除隊になったら、一緒にエビ漁をしようと本気で声をかけてくれた。
最後に、そのときの上司だったダン小隊長。それまでの高圧的な軍隊の上司たちとは違って、ダン小隊長は、フォレストたちが生き続けられることを一番に考えていた。信頼できる上司だとフォレストは感じた。
この4人は、フォレストのことを最初からちゃんと対等に扱ってくれた人たちだ。信用できる人たちだった。フォレストはそれを直感的に感じ取ったのだ。
そして、この4人のことを、ずっと忘れずに思い続けた。
数人、いや、一人いればいい
しかし、フォレストの一途な思いとは裏腹に、ジェニーには、何度も捨てられた。ババは戦死してしまった。ダン小隊長には戦地でなぜ命を救ったと罵られた。
それでも、フォレストは最初に信じた自分の直感のままに、彼らのことを信じ続け、思い続け、そして実際の行動でも尽くし続けた。それがとても美しかった。
とりわけ、私はダン小隊長とのエピソードが好きである。
自分にも、何人か、ずっと大切に思い続けられるような人がいてくれればなあと思った。そういう人のいる人生を送りたいなと思った。
たくさんでなくても、数人、いやもしかすると一人いれば十分かもしれない。
歴史大作のようなスケール感
映画は、フォレストが、バス停でバスを待つ間、隣に座ってバスを待っている人に対して、自分の過去の人生を子供時代から順に(一方的に)語っていくという形で進んでいく。
そのため、ドラマというよりは、客観的にフォレストの人生を追う伝記のような感じになっている。フォレストのモノローグで進行していくので、あくまでフォレスト目線ではあるけれども。
さらに、アメリカ歴代大統領にまつわる歴史的事件と絡めたドキュメンタリー映像も交えながら出来事を映し出していくのも、特徴的でおもしろい。
そうした表現方法によって、知的障害をもつ青年という難しいテーマを扱いながらも、あまりその点をくどくど説明はせず、歴史大作のような大きなスケール感で、見られるようになっているのではないか。
深くて固いつながり
そうした表現手法が何とも言えない余韻を生み出しているような気がする。観終わった後に、いろんなことを思い出して考えたくなる。
目を閉じてみると、運命に翻弄されたフォレストの生涯が浮かんでくる。そして、フォレストと大事な人たちとの、数少ない、しかし、なにがあっても1ミリも揺らがなかった深くて固いつながりの意味をかみしめたくなる。
主人公の伝記的な映画だとは知っていました、この作品をこれまで見てこなかったのは、もったいなかったです。でも、これで私の記憶にこの作品が刻み込まれました。