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この春も、世界は色で溢れてる。

明日で3月も終わるんだな。
年度末の実感がまるでない。
ここのところ地上10㎝を漂うように掴みどころのないふわふわした、それでいてやけに速いスピードで毎日が過ぎていく。
気を抜くと思考もふわふわ漂って、定期的にこっちだよと呼ばないと、得体の知れない不安の渦にすぐに巻き込まれていく。

そんなふわふわした状態の、ここ最近の私はというと。

毎年恒例、家族総出のお米の種まきを無事に終え、中途半端にアシメになっていた前髪を眉上に切り揃え、およそ1年ぶりのたこ焼きパーティーを彼氏ん家で開催。


寝て、起きて。仕事に行って、だるまを作って、金魚を描いて。また寝て。
そんな感じ。うん、とりあえず平和。


季節がすすむと、街を歩くのが楽しい。
暖かくなってきたから、花の色が濃くなった。
ちょっと歩くとそこかしこに鮮やかな色がある。

椿、たんぽぽ、桜、木蓮、そのほか色々。
イチオシは木瓜(ぼけ)の花。形といい、赤みの強い珊瑚色がとても好み。

これは実家の木瓜(ピンク)




1度も栞を挟まないで読み終えたお話は久しぶりだった。

『ソメイヨシノ』

「猫の目ってさ」
世の中の景色をさ,どんな風に見てるのかなあ?空の青とか同じなのかなあ?

『ソメイヨシノ』 /中島桃果子 著
『眠らないため息』より

色について、絵について。名前のつかない関係について。

お話のなかで、夕焼けから夜になるまで、刻々と変わる空の色が繊細に描かれている。ベースは桃色。そこに違う色が混ざっていく。
最高にぐっときた。
水彩絵の具で描きたいな、とも。

男の子の目の色は、"緑灰色"。
この男の子と同じように、小さな頃から波乗りをしていたあの子を思い出した。
もう私もあの子も、"あの子"と呼ぶ年齢は過ぎたかもしれない。
でも、「プロのサーファーになる」と言って夏休みを境に海の街へ転校していったあの子は、私の中では小学5年生のまま。
秘密基地を作ったり、池の小魚を捕まえたりしたあの子の目は何色だったんだろう。思い出せないだけなのか、そもそもちゃんと見つめていなかったのか。
でも、染めているわけではないあの子の髪がいつでも小麦色だったのと、まぶただけが日焼けしていなくて、「アイシャドウぬってるみたい。」と言って2人で笑ったことは、今でもおぼえている。

名前はつかないけど、まぎれもなく大切な人。遠すぎず、近すぎず、漂うような変動していくような絶妙な距離の心地よさってあると思う。

人の記憶も感覚も、どこまでも不確かで。
そこに"在る"っていうことだけが確かなら、もうそれで充分なんじゃないかな。
不確かなことは、おもしろがってさ。

椿の濃いピンク色も素敵だけど、見る人によって白だともピンクだとも言えるぼんやりと曖昧に柔らかい桜の色も、私はいいなって思うよ。

湿気を含んで、どこかぬめっと暖かい、春特有の夜の空気の中で、そんなことを考えた。




桜が咲くことにホッとした、そんな2022年の春です。

最後まで読んでくれたあなた。

ありがとうございました。

春瀬


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