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「古今十七文字徘徊」帖

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古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
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#虚子

#19   名をへくそかずらとぞいふ花盛り     虚子

#19 名をへくそかずらとぞいふ花盛り  虚子

 

 この花、屁糞葛と呼ばれている。畑の周囲に咲いている。

 まこと、命名というのは、慎重にしてほしいものだ。
 

名を へくそかずらとぞいふ 花盛り 虚子

 屁糞葛という呼ばれ様は、茎や葉を揉むと悪臭がすることからだ、その悪臭の素は、確かに屁の成分と同じだという。

 しかし、和名には、花の内側の赤色がお灸をすえた跡に似ることから「ヤイトバナ(灸花)」、また、筒状の小花を田植えをする早乙

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#12 行水や美人住みける裏長屋  子規

#12 行水や美人住みける裏長屋  子規

 こう暑くては、風呂で汗を流すのが一番の楽しみだというと、爺さん臭いといわれそうだが、本当にそうだ。曲がりなりにも衣食住が満たされ、その上、毎夜風呂につかることが出来る隠居の日々に何の不足があろうかと、お天道様は云われるだろう。まったくだ、まったくだ。
 
 その風呂であるが、この頃のように家々に内風呂があるなんていうことは、考えられなかった。自分がまだはな垂れ小僧の頃まで、他の家の風呂にいれても

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