マガジンのカバー画像

「古今十七文字徘徊」帖

30
古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
運営しているクリエイター

2024年9月の記事一覧

#21  やすやすと出でていさよふ月の雲  芭蕉

#21  やすやすと出でていさよふ月の雲  芭蕉

 昨晩は、名月に憎まれ口をたたいたが、今夜の月は素晴らしい。

 そこでこの風雅な一文を。

堅田十六夜の弁  芭蕉

 望月の残興なほやまず、二三子いさめて、舟を堅田の浦に馳す。その日、申の時ばかりに、何某茂兵衛成秀といふ人の家のうしろに至る。「酔翁・狂客、月に浮れて来たれり」と、声々に呼ばふ。あるじ思ひかけず、驚き喜びて、簾をまき塵をはらふ。「園中に芋あり、大角豆あり。鯉・鮒の切り目たださぬこ

もっとみる
#20 野畠や大鶏頭の自然花 一茶

#20 野畠や大鶏頭の自然花 一茶

 秋の七草もよろしいのだが、秋を極める花は、鶏頭であるかもしれない。その証とも言えそうな茂吉の一首。

鶏頭の古りたる紅の見ゆるまでわが庭のへに月ぞ照りける 茂吉

 
 名月と鶏頭、意外な組み合わせであるが、似合いそうだ。
 では、これはどうだろう。

名月や鶏頭花もにょっきにょき 良寛

 名月ではないが、同じく良寛で。

綿は白しこなたは赤し鶏頭花

 今盛んに、我が菜園でも綿が吹いている最

もっとみる
#19   名をへくそかずらとぞいふ花盛り     虚子

#19 名をへくそかずらとぞいふ花盛り  虚子

 

 この花、屁糞葛と呼ばれている。畑の周囲に咲いている。

 まこと、命名というのは、慎重にしてほしいものだ。
 

名を へくそかずらとぞいふ 花盛り 虚子

 屁糞葛という呼ばれ様は、茎や葉を揉むと悪臭がすることからだ、その悪臭の素は、確かに屁の成分と同じだという。

 しかし、和名には、花の内側の赤色がお灸をすえた跡に似ることから「ヤイトバナ(灸花)」、また、筒状の小花を田植えをする早乙

もっとみる