2泊3日の余白が「自分らしさ」を浮き彫りにしたキャリアブレイク合宿
こんにちは。みづきです。
この記事は、6月に開催したキャリアブレイク当事者向けの「Our Dance Floor~短期滞在型プログラム~」の体験記事です。
基本的に自分の日記用に綴っていますが、キャリアブレイク当事者の方々は、何かの気づきやきっかけになるかもしれません。
余白、対話、表現を通じて自分とつながれるキャリアブレイク合宿
6月末、「キャリアブレイク(一時的な休職・離職)を文化に」というミッションを掲げる一般社団法人キャリアブレイク研究所さんからお誘いを受け、キャリアブレイク渦中にいる方々(一時的な離職・退職)を対象とした2泊3日の滞在型プログラムの運営に関わらせてもらえることになった。
今回の舞台は本厚木。
一棟貸し切りの素敵な宿からのコラボ依頼だそうで、宿にはプライベートサウナルームも完備されていた。まさに梅雨の「おこもりバケーション」にふさわしい場だった。
わたしにとっても、今回の合宿はすこし特別だった。
もしキャリアブレイク渦中にいることで自信をなくしている人がいたとしたら、このプログラム終了後にすこしでも
という状態になったらいいな、と思ってプログラムの内容を考えた。
わたし自身がキャリアブレイク当事者という熱もあったし、
参加してよかったと思ってもらえる時間にしたいという想いもあった。
だからこそ、自分が担当するワークは、
どうしたら楽しんでもらえるだろう?とアレンジを加えたりしながら準備を進めていった。
もちろんそれらも必要だったけれど、
わたしが今回の合宿で、忘れかけていたとても大切なことに気づいた。
何かをするよりも、何もしない「余白」や「間」にこそ、参加者それぞれが自分の内側の真実とつながる作用がある。
キャリアブレイクが終わり、また社会と接点を持つようになり、このことをついつい忘れかけていた。
日常は、やりたいこともやらなければこともたくさんある。
そして今回の場を経て、
自分の内側の真実を安心して語れる場が社会に必要
という確信を得る体験となった。
3時間の女子トーク、サウナの魔法
宿にはフィンランド式のサウナがあり、サウナーのわたしはプログラムよりも、宿にあるサウナを楽しみにしていた。(それもどうなん)
1日目の夕食のとき、子どものようにワクワクしながら
「サウナたのしみ~♪2泊3日で何回入れるかなあ~」
と久しぶりのサウナを待ちきれずはしゃいでいると、
参加者の1人、花柄のワンピースがお似合いのさきちゃんにこう聞かれた。
「わたし、サウナ苦手なんですけど・・・
そんなに良いならわたしも入ってみたいかも。
一緒に入ってもいいですか?」
そんなさきちゃんの不安そうな表情を見て、わたしも自身も元々はサウナが苦手だったことを思い出した。
「もちろん!
わたしもサウナ嫌いから、サウナーになったから苦手な気持ちもわかるなあ。一緒に入ってみて、無理そうだったら先に出ていいしね。」
みんなでワイワイと贅沢なBBQを平らげ、お腹が満たされた後にはゆったりとした時間がはじまった。
お酒を飲みながらテーブルで語っている人もいれば、ソファーでゴロゴロしている人もいた。
わたしはとさきちゃんは、「行く?」と目くばせしながら一緒に2階にあるサウナルームへに向かった。
さきちゃんは、
「サウナであつくなると、怖いって思って出ちゃうんですよね…」
と不安そうな表情を浮かべながら教えてくれた。
わたしもかつて同じような理由でサウナが嫌いだったのでさきちゃんの気持ちが手に取るようにわかった。
呼吸もしにくい高温サウナで身体が熱くなり身体が火照ってくると、倒れてしまうんじゃないかという予測が脳を駆け巡り、怖くなって足早にサウナを出てしまうのだ。
わたし自身も数年前からサウナ好きに転身したばかりの初心者サウナーのくせに、先輩風を吹かせながらサウナでどう自分の意識を保っているか、どう身体と対話しているかをシェアしながらサウナストーンに水をかけた。
シダーウッドなアロマ入りの水を熱されたサウナストーンにかけると、
じゅわ~という音と共に蒸気が立ち込める。
「うわあ、あっつ~い!!!」
さきちゃんは、わたしの心配に反して、楽しそうに笑った。
うんうん、大丈夫そう。
時折言葉で今の身体の状態を確認しながらサウナの壁にかかっている
砂時計が落ちるのをじっと待つ。
サウナの熱さに耐え忍んださきちゃんに立ちはだかる次のステップは、水風呂だ。
サウナ嫌いになるのは、サウナ自体よりも水風呂が恐怖のケースも多い。(わたししらべ)
サウナ後に水風呂に入らなければととのいを経験できず、身体が火照って意識がおぼつかず、何が良いのかがさっぱりわからない。
水風呂もサウナの恐怖同様、まるで心臓がとまってしまうのではないかという不安に耐え切れず、数秒で出てしまうんだと何人かの友人に聞いた。
「さきちゃ~ん、水風呂では息を吐きながらゆっくり肩まで浸かってね~」
サウナルームから少し離れた水風呂に向かうさきちゃんに、親戚のおばあちゃんのような気持ちで叫ぶ。
サウナの熱で頬を真っ赤に染めたさきちゃんは、頷きながらぱたぱたと水風呂に向かっていった。
水風呂は1人用で一緒に入れないので、わたしはさきちゃんが水風呂に入っているであろう90秒を頭の中で数え、少し時差をつくってから水風呂に向かった。
サウナルームはちょうどよい温度を設定できたにも関わらず、水風呂は自家製だった。
製氷機から何往復もして湯船に入れた氷がすっかり溶けた水風呂に肩まで浸かり、さきちゃんが寝そべっている隣のととのい椅子に向かう。
顔を赤らめた彼女は、すこし興奮した様子で言った。
「なんか、しゅわしゅあ~ってなりました!!!」
「ととのった?いいね、いいね」
さきちゃん、初、ととのい体験。
すこしのあいだ、沈黙の時間を味わう。
肌にふれる風の心地よさに、ふたりとも言葉を失っていた。
ととのいタイムが終了してから、ゆるんだ表情のさきちゃんとベランダで語り合った。
6月末の夜の外気浴は、頬をなでるそよ風と鈴虫の声に包まれて、最高以外の何でもなかった。束の間、瞼を閉じて空っぽの状態でそこに居た。
「…わたし、パニック障害になって休職したんです。」
さきちゃんが、ぽつりぽつりと休職までの経緯を話しはじめた。
「上司にもついついおかしいなと思ったことを言ってしまうことも多くて。だからきっと可愛くないし、上司が変わっても変わっても、みんな最後には離れていってしまうんですよね。」
雲間から時折顔を出すまんまるの月を眺めながら、うんうん、とわたしはさきちゃんの内側の声に耳を澄ませた。
「今までいっぱい頑張って、戦ってきたんだね・・・。
わたしには、さきちゃんはすごくパッションを持っているように感じたよ。きっと色んな改革を起こそうとしてきたんだね。大きな組織になると改革も風当たりがつよいと思うし、めげてしまうこともあると思うし、そんな時は休息も必要だと思う。
無理せず環境を変えたっていいしね。
でも、話を聴いていてわたしはさきちゃんの情熱をすごい感じているから、素敵なギフトだし火を絶やさずに大切にしてほしいなと思うよ。」
さきちゃんは目をうるませながら、たくさんたくさんつらかったこと、
急に自分が自分じゃないみたいに症状が出てきて怖かったこと、
仕事に対する想い、家族に対する想いを語ってくれた。
わたしは、さきちゃんの話をゆっくり聴きながら、
こういう「余白」が心を動かすんだよな、と感じていた。
偶発的に起こる対話の時間。
ゆるんだ状態で出てくる「ほんとうの感情」と「その奥にある願い」。
人は、心身ともに安心安全な状態になってはじめて、
ぽつり、ぽつりと内側を吐露することができる。
サウナでゆるんだこともよかったし、自然が奏でるオーケストラを聴きながらの対話という環境も作用したんだろう。
「もう1回、入りますか?」
と今度はさきちゃんからのお誘いを受けて、
わたしたちはあたためられたサウナルームへと戻った。
2度目のサウナには、さきちゃんから進んで入った。
彼女はうっとりと目をつむり、解放された笑みを浮かべながら
「熱波、気持ちいい~~~」
と言った。
1度目は怖がっていたサウナルームで、
彼女は今にも眠ってしまいそうなうっとりとした表情で寝そべっていた。
ヨガと瞑想ではじまり、表現で終えた2日目
ロールカーテンの隙間から、これでもかという眩しい光が部屋に差し込み、
わたしは否応なしに起こされた。
アラームかけたはずなのにな、と手を伸ばしてiPhoneを確認すると、
まだ5時半だった。
昨夜はけっきょく深夜2時まで語り明かし、ベッドに溶け込むように眠りについた。
THE寝不足で今にも閉じてしまいそうな重い瞼をこすりながら音を立てないようにリビングに降りていく。
2度寝できそうな暗い場所を探すも、真っ暗な場所が無い。唯一真っ暗なシアタールームでメンズたちがすやすやと眠っている。
起きたら隣にわたしが寝ていたらさすがに事件だな、と思い、
自分の寝室に戻り、しばらくベッドでゴロゴロする。
目を閉じても感じるまぶしい光のおかげで、二度寝ができない。
わたしは仕方なく起きる決意をし、朝食を食べることにした。
女子だけではなく、メンズたちも遅くまで語り合っていたようで
起きてくるみんな揃って寝ぼけまなこである。
そんなまったりとした(気だるい感じの)空気感を感じて、2日目の朝のプログラムは変更することにした。
みんなが1日目にやりたい!と出してくれた付箋を眺めながらみんなで相談し、「ヨガ+瞑想」をやることが決まった。
リビングにある大きなモニターでどのyoutubeでヨガをしようかの相談タイム。
「わたしB-LIFEのまりこ先生のチャンネルでやっています!」
という声でチャンネルが決まった。
みんなでヨガをし、瞑想をする。
こんなにも「余白」という言葉がぴったりくる朝はないのではと思うくらいに、
それぞれが内側を見つめ、感じて、静かな時間をとっていた。
言葉が交わされないから、それぞれの内側で何が起きていたかはわからないけれど、思い思いに1日目を振り返ったり、今ここの状態を感じたりしていたような時間だった。
午後は哲学対話をしたり、近くのチョコレート屋さんまでお散歩したり、映画を観たり、サウナに入ったり。
そして2日目の夜は、みんなでキャンドルを囲み、昨年シューマッハ・カレッジで体験した詩の創作ワークをやった。
言葉は芸術の最小単位。
内側に湧き上がる想いから、言葉を紡いでいく。
それは意図せずとも個性があふれでてしまう、うつくしい時間だった。
そのあとは、キャンドルを灯して語り合ったり、お風呂に入ったり、内省したり、ベランダで語り合ったり、最後の夜を思い思いに過ごしていた。
一人でいてもいいし、みんなでいてもいい。
そこにはまるでひとつのシェアハウスで暮らしているような、日常で、特別な時間がやさしく流れていた。
あなたは天才、わたしも天才、誰もが天才!
ゆったりとした時間も束の間、いよいよ最終日。
この日は「予祝日記」からスタートした。
いいなあ、と感じたのが全員が「ヨーイ・ドン」で予祝日記に取り掛からなかったこと。
起きる時間も、準備のペースも人それぞれだったので、準備も終わって余裕のある人だけでこっそりはじまっていた予祝日記。
「みなさーん、ここからは予祝時間ですーー!」
と最後まで足並み揃えない感じが、この合宿そのものを表していた。
それぞれのマイペースを、それぞれの余白を大切にする。
これってなかなか通常の社会の中ではできないことだからこそ、
ちいさくそれが実現していたのがキャリアブレイク合宿ならではだな、と
微笑ましい気持ちになった。
最終日の振り返りの時間では、みんなで「天才ワーク」をした。
2泊3日共に過ごした仲間へ、「あなたは〇〇の天才!」という付箋を貼っていく。付箋を渡す相手との想い出を語りながら、2泊3日を振り返る時間だ。
「あなたは、機械を操る天才!
BBQの時に火を絶やさないでくれてありがとう!」
「あなたは、思いやりの天才!
常にみんなが含まれるように思いやりのある関わりありがとう!」
「あなたは、情熱の天才!」
「あなたは、分析の天才!」
「あなたは、内省の天才!」
・
・
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こんなに天才と言われるのは人生で最初で最後じゃないかと思うくらいに
天才呼ばわりしてくれる仲間たち(笑)
みんな気恥ずかしそうに、だけどうれしそうに受け取ってくれるから、
与えるほうも与える喜びを感じられる。
最後はひとりひとりにハグをして、思わず目に涙を浮かべる人も。
心が淡いオレンジやあたたかみのあるピンクに包まれるような、満たされる時間だった。
自然体でいることの力
天才ワークの中で、だからこういう合宿になったんだな、とハッとしたことがあった。
今回メインでナビゲーターをしていたまっくすさんとわたしは、ほとんど似通った天才ワードをもらっていた。
「自然体の天才」
「溶け込む天才」
「ナチュラルの天才」
「気づきを与える天才」…
そういえば、事前に綿密に打ち合わせをしたわけでもなく、
こういう場にしましょう、って合意をとったわけでもない。
だけどたぶん、「価値観」や「在り方(Being)」として大切にしていることが似ているのだ、と天才ワークを通じて気が付いた。それってほんとうに有難いことだな、と感謝が溢れた。
だからこそ今回の場は、
それぞれがありのままの自分と出会う時間になったんだと思う。
場の主催者が「ありのままで居られる場づくりがしたい」と思って
「ありのままの自分でいてくださいね」「自由になんでも言ってもいいよ」なんて言ったところで、その言葉はあまり意味をなさない。
あくまで参加者本人自身の感覚を持って「あ、ここだったら大丈夫かも」と感じられるようなそういう場と関係性は、主催者側の在り方に大きく影響する。
参加者の1人から、
となんともうれしい感想をいただいた。
真実の声は、真実の声を呼び覚ます。
自然体であるというのは自分の中の真実に素直にあるということだ。
相手の為に自己犠牲をするのではなく、もし相手からの承認が返ってこなかったとしても、自分がやりたいからやる、という。見返りは求めない。ただただそれをやることで自分が満たされる、という動機から行動を決める。
それを彼女は感じとってくれたのだろう。
やっぱり場づくりは在り方9割だな、と感じた瞬間だった。
キャリアブレイク合宿の意味とは
これを書いている今日、ちょうどナビゲーター3人での振り返りの時間があった。
ナビゲーターのまっくすさんから、
「今回みなさんと過ごした時間は、合宿も、プログラムも、リトリートもどれも言葉がしっくりとあてはまらない時間だった」
という意見があった。うんうん、わたしも同感、と縦にうなづいた。
わかりやすく、何かが得られるとか、参加後こうなっていますとか、
そういうメリットのようなものは提示していない。
この合宿で得たものは、今あるものさしで測れない、だけどとても価値のある人と人との間に必要な体感覚だった。
言葉にすると、表面的になってしまい、体験の9割がそぎ落とされてしまうことがもどかしい・・・。
だけど場を共にしてくれたみんなの感想をみると、
確かにそこには、わかりやすくヒトコトで言い表せない価値があった。
みんなからの感想も踏まえて、わたしなりにキャリアブレイク合宿の意味を言葉にしてみる。
キャリアブレイク合宿とは、
「余白の中でこそ、ありのままの自分が浮き彫りになる時間」
だったんじゃないかと思う。
参加者のそれぞれが、自分の感性を大切にして表現していく。
そして相手の感性を大切にして、聴きあい、つながりあう。
わたしが願っている世界が、そこにちいさく実現していて、心が熱くなった。
溢れる感謝~Special Thanks~
今回キャリアブレイク合宿のナビゲーターにお誘いいただいた、
まっくすさんはじめ一般社団法人キャリアブレイク研究所のみなさま、
小田原から駆けつけ試行錯誤の実験を共にしてくださったナビゲーターのまいさん、
なによりも、場にきて共に過ごしてくださった参加者のみなさん
ゆたかな場を共に創り出していただき、本当にありがとうございました。
photo: まっくすさん
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