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Photo by
inagakijunya
区分所有者
朽ちた民家は、赤い屋根。
暮らしは、
やさしく削られた木屑
アカシアの雨がやむとき
どこかの窓からきこえくる
陽のひかり
炙り出されて聳えたつ
からだという大自然の山稜は
うすいメタリック罫線のむこうの煌き
ねむりから繁茂した小さな庭。
すべての水とかたちなく午睡する樹木の詩
香辛料を知らないシタール奏者の髪を揺らす風
うろたえるほど美しい明けがたの囁きに
書き損じの五線譜くしゃくしゃに
いみじくも焼いたとき、
饐えた匂いのずっと奥、
背の低いブロック塀
緻密で厳格、清廉潔白な魂。
きらり目あった
精霊。
区分所有者がいる。