【シロクマ文芸部】コピーロボット～星野スミレは再度輝く

　書く時間がね、無いのよ。本当に。
　ほら、私、この間の文学賞を取っちゃったじゃない。それに加えて女優の仕事もある訳よ。次々と執筆の予定が入ってくるのはいいんだけど、もう手一杯なの。それでね、ついにあれを使う事にしたのよ。

　あれ、分かる？

　小さい時にさ、パーマンって見たじゃない。パーマンって言っても、旧作じゃなくて新作の方よ、もちろん。私ねぇ、今でも主題歌歌えるわよ！
　ああ、パーマンはどうでもいいんだけどさ。パーマンにコピーロボットって出てきたじゃない。私ね、あれを使う事にしたのよ。どうやって手に入れたかって？それは、パー子･･･ううん、なんでもないわ。さる筋から手に入れたのよ。

　コピーロボットのお鼻をちょんと触ると、まんま私がそこにいるの。見た目はもちろん、中身も私そのものよ。とりあえず、彼女の事はコピ子って呼ぶ事にするわ。

　私は外のお仕事に行って、執筆はコピ子がやってくれる事になったんだよね。女優も執筆もどっちもこなせて、すごくいいの。

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　コピ子が書いた小説がすっごく売れたのよ。あなたも読んでくれたかしら？あれね、今度ドラマ化されるのよ。ヒロインはもちろん私よ。これぞまさに自作自演ね、なんちゃって。コピ子は、文句も言わずにせっせと執筆をしてくれるの。それが本当にいい文章なのよ、自分で言うのもなんだけどね。ちょっと自分に嫉妬するくらいよ。

　でね、そのドラマ化される小説が賞を取ったの。
　女優が書く小説なんて、片手間で書いたつまらない物、ゴーストライターに書かせたんじゃないのか、話題作りだなんだかんだと悪口も一杯書かれてるわ。もっとも、ゴーストライターはちょっと胸が痛い所ね。書いているのは私ではあるんだけどね。
　だけど、おかしな事に権威のある賞を取ったら、今度は称賛の言葉が主になってきたの。褒めたたえている裏で悪口を言ってる人もいたりして、ちょっと考えちゃうわ。エゴサーチなんてするもんじゃないわね。

　表彰式には私が行ったのよ。書いたのはコピ子だからコピ子が表彰されてしかるべきなんだけど、表に出るのは私の仕事だから、ね。表彰状を頂いて、取材を受けていたんだけどちょっと空しくなっちゃった。だって、私が書いたけど私自身が書いた訳じゃないんだもの。

　表彰式の後、私ね、よく考えたの。こんな事続けるのは良くないよね。
　私、やっぱり子供の頃からの夢だった小説家として生きていく事にするわ。コピ子にはもう頼らない事にしたの。

　こんな事、あなたに言っても仕方ないけど、聞いてくれてありがとね。
　落ち着いたら、一緒にご飯に行こうね。

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　親友のスミレから2回程電話をもらった。スミレは宣言通り女優を引退して、小説家として生きていく事にしたらしい。

　私からしたら、もったいない事をするなぁと思う。まだ子供の頃からアイドルとしてやってきて、今は大物女優になれたのだから、小説を片手間にしたらいいのに。だけど、ずっと自分をさらけ出せずに生きてきたのだろうから、こうやって書く事で自分を解放していきたいのだなと思う事にした。

　私は女優だろうが小説家だろうが、星野スミレが幸せならそれでいいと思っている。今度、二人で美味しいお店に食事に行く事にしよう。

　って、ちょっと待って。もしかして、パーマン3号って･･･。まあ、いい。いくら親友とはいえ、余計な詮索はしないに限るというものだ。

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小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「書く時間」です。

日頃、仕事やいろいろな事に追われていると、書く時間って無いよなぁと思います。他にやりたい事もたくさんあるのですが、なかなか手が回りません。そんな事から、前々からコピーロボットが欲しいなぁと思っていたところから思いつきました。

でも、このネタが分かるのはおそらく、同年代の方だけだろうなぁと思わなくもありません💦

👆　パーマンの主題歌

👆　星野スミレ、ドラえもんにも登場していた模様

今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪

#シロクマ文芸部