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子ども特有の「突拍子ない発言」、その時脳みそはきっとフル回転|#94

「あーっ、服引きずってるよ! 汚れちゃうよ!」

さっきからテレビを見ている娘の言葉が、いちいち面白い。いや、こうして言葉だけを抽出してテキストに書き起こすと面白くもなんともないんだけれど。

でも、娘が見ているのが歌舞伎だという情報を付け加えると…?

Eテレはさっきから、坂東玉三郎さんの『初春特別舞踊公演』の様子を放送している。吉原・花魁の恋物語らしい。

先日の能鑑賞以来、すっかり日本の古典芸能に興味を持った娘は、手元でジグソーパズルを弄びながら、視線を時折テレビに向けしゃべり続けている。4歳が!歌舞伎を見て!チャンネルを変えてくれとも言わず!!

娘は主人公である花魁の一挙手一投足にコメントをつける。

打掛を脱ぎ捨てれば、

「あ、服脱いだ! 投げた! ダメだよねえ、服投げちゃ!」
「ちゃんと洗濯カゴに入れないと、怒られるよ!」
傘を持って舞えば、

「あ、傘は振り回したら危ないんだよ!傘は雨の日だけ使っていいんだよ!」

あ、自分が言われていること?

紙吹雪を雪だねと私が言うと、

「あれ雪じゃないよ。お米だよ、お米が降ってるの」・・・ん? お米??
花魁のかんざしは、

「あれはねえ、フライパンが先っぽについた棒なの。この人(花魁)のママが作ってくれたの」・・・フ、フライパン?
花魁の家族構成についても話は及ぶ。
「この人はねえ、お父さんがいないの。お母さんは遠くに行っちゃったの。だから一人で鬼が島に行かないといけないの」・・・それまた、深い解釈もできそうな。

とにかく一挙手一投足、ほとんどすべてにコメントしたんじゃないかと思うくらい、娘はしゃべり続けた。
隣で相槌を打ちながら聞いていた私、笑いをこらえるのに必死、だってかんざしをフライパンだなんて! 確かに先端が小さなフライパンに見えなくはないけれど!?

幼児教育を学んだことはないし、子育ても娘一人分の経験しかない。
でもこう思う。
幼児は未知の情報を、まず自分が知っている事柄で解釈できるように分解し、受け止める」んだろうなと。

世界に対する解像度が増したとき、新たな情報を得たとき、あるいは思考スキルが高まったとき、子どもはそれまでの解釈ではつじつまが合わなくなるときがくる。
つじつまが合わないことに気づき、違和感を抱いたとき、きっと新しい解釈を行い、脳内の情報整理を上書きしていくんだろう。

成長とは、物事の解釈と整合性を大人に近づけていくプロセスかもしれない。

それにしても未知のものを「わからない」と素通りせず、いま自分が持っている情報を駆使して何とか解釈し、意味づけしようとする幼児の好奇心と探求心は実に力強い。

娘がいなかったら、とっくにチャンネルを変えていた。だって歌舞伎、分からないし。見たいと思うほど、歌舞伎に詳しくないし。

でも娘のコメントを聞いていたら、一幕終わっていた。新しい歌舞伎の楽しみ方も知れた。

作法にのっとって、正しい解釈をしなきゃいけないなんてここと、ないんだ。ましてテレビの前、どう楽しもうと自由なんだ。自分が持つ情報を駆使するだけで、こんなにも(ツッコミどころ満載で)楽しい時間になるんだ、と。

いやあ、面白い体験だったなあ。4歳と見る歌舞伎が、こんなに面白いとは思わなかった。

大人が勝手に「これはまだ早い」と年齢による制限をせずに(もちろん倫理的な配慮は必要)、何事でも触れさせてみること。特に伝統的・文化的・本質的なものには、下手に先入観を持たない幼児のうちに触れさせること。その姿勢が、思わぬところで子どもの好奇心や可能性の種植えになるかもしれないなあ。

そんなことを感じた、新年2日目のEテレだった。今度は狂言を見てみようか。雅楽もいいかな。

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▼ 4歳が能楽を初鑑賞したときの話。

▼ ついでに私の解釈も。

▼ まあ、日本の民俗学的なものへの興味は親子で強いんです。

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みゆな🍎クリエイティブ好きのライター
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