52ヘルツのクジラたち
ほかのクジラ達には届くことのない、『52ヘルツ』の周波数で鳴く孤独なクジラ。
私は、そんな52ヘルツの声は、誰もが持っているものだと思うのです。
生きるということは、時折、理不尽な出来事にさらされたり、誰かに傷つけられていたり、反対に、誰かを傷つけていたりする。
そんな時に、52ヘルツで上げる声。
誰にも届かないけれど、静かに叫ぶ52ヘルツの声。
そんな時に、気づいてくれる人がそばにいてくれること、そばにいなくても、それでも私にはあの人がいる、と思える人がいること。
作中の印象的な言葉の中に、『生きながら死んでるいる』というものがありました。
誰かの人生を生きることは、それすなわち死んでいることと同様なのだと思いました。
そして、生きることは、1人ではできない。
アンさんの自殺を、貴湖は『自分が殺した』と感じ、1人でひっそりと生きていくことを決めますが、アンさんはそうではなく、最後まで貴湖の幸せを願っていました。
アンさんが死ぬことで、貴湖の第2の人生も幕を閉じた。
伝わらなかった想いに、胸が締め付けられました。
私たちは、誰のものでもない人生、自分だけの人生を歩んでいく。
第3の人生で出会うこととなった少年『52』。彼も、虐待されるままだったのが、貴湖と出会い、これから自身の運命を変えていきます。
『魂の番』に出会い、歩んでいくことが、幸せのひとつであるのだろうなと感じました。
そして、誰もがどこかで52ヘルツのクジラなのかもしれない。
誰かの、どこかで叫んでいる声を感じ、小さな手助けを出来ればなと思います。
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