アメリカの大学のLGBTQ当事者に対する取り組みを知って欲しい
こんにちは現在20歳のMIYUです。
私は、2020年の夏までアメリカのニューヨーク州にある美術大学に通っていました。ニューヨークでは毎年世界最大規模のNew York Pride Marchが開催されており、ニューヨークではLGBTQ当事者に対してのリンチ事件もありますが、人権獲得運動を象徴するレインボー柄の旗やグッズが街中に溢れているなど、一般的にLGBTQに対する認識が向上しています。
LGBTQとは性的マイノリティの中の代表的とされる人々の頭文字を取った言葉です。セクシュアリティは、おおまかに分けて、①身体的性②性自認(心の性)③性表現(服装・身振りなど)④性的指向(好きになる性)の4つの観点があります。
最近日本でもLGBTQという言葉が知られてきました。日本の教育機関でもLGBTQについての問題に取り組むなど、少しずつですがLGBTに対しての理解が深っているように感じます。しかしOECD諸国のうち、LGBTに関する法整備状況を比較すると、日本は35ヵ国中34位とワースト2位に選ばれるなど先進国の中でもまだまだ課題は多いです。
私が通っていた大学ではLGBTQ当事者に対する取り組みがしっかりしており、是非日本の方にも知ってもらいたいなと思い記事にしました。この記事では日本でも是非取り入れて欲しいアメリカ美大でのLGBTQに対する取り組みを紹介しています、そして日本でのLGBTQに関する教育の前向きな進展に貢献できることを期待します。
ニューヨークの美大でのLGBTコミュニティの実態
私が通う大学はLGBTQフレンドリーな大学で講師も生徒もLGBTQ当事者だと打ち明けている人がとても多かったです。中には初対面の自己紹介で「こんにちは!私は〇〇、そしてゲイなの」とあっさりカミングアウトする人もいます。(アメリカでは多くのレズビアンの方が「私はゲイなの」と自身をゲイと呼ぶ場合が多いです)
夫との惚気話を授業中にするゲイの教授、髪の毛を伸ばしヒールの高い靴を楽しむ男性、髭を伸ばしている女性、大学のカフェで同性同士でいちゃつくカップル。
誰もそれをジャッジしないので、LGBTQの人が安心して過ごせる環境だと思いました。
そして、日常的に人権獲得運動を象徴するレインボー柄のグッズを身につけている生徒や講師が多かったです。中には毎日レインボー柄のジャケットを着てLGBTQに関する缶バッチをジャケットや鞄中に身につけている生徒もいました。
多くの人は「アメリカにはLGBTQ当事者が多い」というイメージを持っていると思います。しかし私はLGBTQ当事者がアメリカに多いわけではなく、大学の先進的な対応で当事者がカミングアウトしやすくなる環境を作っているのではないかと思います。
では、私の通っていた大学で取り組まれいたLGBTQコミュニティに対する5つの活動を紹介したいと思います。
①大学に入る前にpreferred first nameとpersonal pronounを選択できる
大学に入る前にアンケートが渡されました。そこではPreferred first nameとpersonal pronounが選択できます。
【Preferred first name】はニックネームみたいなもので、授業中などに呼ばれたい名前を選択できます。William(ウィリアム)やBenjamin(ベンジャミン)など名前が長い人はWill(ウィル)やBen(ベン)と省略した名前を記入したり、アジアからの留学生は名前の発音が難しいという理由でイングリッシュネームをこの欄に記入しますが、例えば戸籍上では女性で名前も女性だけど性自認が男性の場合、この欄に男性名を記入することができます。
日本の教育機関での取り組み提案
日本では15歳未満は自分で改名の手続きはできません。そのため15歳未満の性同一性障害にとってはPreferred first name制度が導入されれば助けになるでしょう。日本の教育機関では、授業中生徒は名前呼びよりかは「名字+さん」の呼び方で呼ばれることが多いと思いますが、クラスメイトからは名字より名前で呼ばれる機会が多いと思います。クラス名簿で表示させたい名前や自分が呼ばれたい名前を選択できるようになると当事者は生活しやすくなると思います。
【Personal Pronoun】は人称代名詞のことです。最近海外の方のSNSのプロフィールによくshe/her、he/himと書いてあるのを見かけませんか?性別とは関係なく、自分に合った・自分が好む代名詞を選ぶことができます。
日本は言語的に、「彼女は〜」「彼は〜」などの代名詞を使用するよりか名前で特定の人について話すことが多いと思いますが、英語では「She is ...」「He was...」など代名詞を頻繁に使います。自分は男性でも女性にも当てはまらないという人は「They/them/theirs」を使用したりもします。
日本の教育機関での取り組み提案
日本では性別を区分する代名詞として「彼女」「彼」が一般的ですが、いつか性別とは関係ない代名詞を作るべきなのではと思います。
②男女別ではないトイレがあるがある
私がアメリカの美大で驚いたことは”男女別ではないトイレ”があることでした、日本で知られている”だれでもトイレ”は利用者1人のみが手洗い場とトイレがある個室を使えるような仕組みですが、”男女別ではないトイレ”は手洗い場のみが共有で、トイレは一個一個分厚い扉に覆い隠されて、2つ鍵がある仕組みでした。
私の通う大学では4パターンのトイレがありました
①男女別に別れているトイレ
②男女共用トイレ(1人しか入れない)
③男女別ではないトイレ、トイレの個室は頑丈な扉で仕切られており2つ鍵がついている、手洗い場が3つトイレ個室が4つあった)
④優先トイレ(車椅子の方や障がいのある方が利用するトイレ)
様々なパターンのトイレが用意されているのは良いなと思いました。大学内で性自認が身体的性であってない人や、Non-binaryの方は②や③のトイレを使用していました。身体的性と性自認と一致している人も③のトイレを使用していました。
私が通っていた中学や高校は男女別トイレが主流だったので、大学のカフェに唯一設置されているトイレ(男女別ではないトイレ)を初めて使用した時は少し違和感があり戸惑いましたが、利用者の何食わぬ顔でトイレに行って手を洗って立ち去っていく姿を見て慣れていきました。男女グループがトイレの手洗い場で談笑している様子もみかけます。
日本の教育機関での取り組み提案
大体の日本の教育機関では、男女別のトイレ、優先トイレの2パターンしかない場合が多いです。トイレのパターンを増やすことによって、性自認と身体的性が合わない人や、自身を男でも女でもないと自認しているNon-binaryの方、トランスジェンダーの方が快く利用しやすくなるのではないかと思います。
日本では女の子同士でトイレに一緒に行く文化がありますが、いつか女性が男性に「一緒にトイレに行こう」と誘い、男女別ではないトイレの手洗い場で談笑したり、一緒に化粧直しをしている姿を見かけるかもしれません。
男女別ではないトイレは防犯上の課題はあると思いますが、公共ではなく大学内のカフェのみなど狭めた範囲だけに設定してみるなどを試みて欲しいです。
③大学入学前に性的マイノリティや性差別の知識を学ぶオンラインコースを受ける必要がある
私がアメリカの美術大学に9月入学する前、夏休み中大学側からSexual Assault Prevention for Undergraduates(大学生向けの性的暴行防止)というオンラインオースの案内メールが送られてきた。
SAPUはアメリカの500を超える大学で使用されているオンラインコースです。このコースは2回受ける必要があり、1回目のコースを受けてから45日経たないと次のコースを受けれないので、大半の生徒はオリエンテーション日には1回目を終えているのみでの状態が多いです。
オンラインコースの内容は大学のキャンパスでの性差別、性的暴行、恋人関係の暴力、セクハラ、避妊方法、LGBTQへの偏見、ストーカー行為などの数々のシナリオを読む/映像で視聴し、問題にどう対処するかを選択肢から選んでいきます。このコースを受けることによって自分の間違った性知識や認識が明らかになり、それがどう人を傷つけ、人との関係の影響が出るのか、そして性差別や性的暴行に繋がるのかが学べ、健全な人間関係はどうやって築けるのか等の役立つ知識を知ることができます。
日本の教育機関での取り組み提案
自身が性に対して誤った認識をしていた事に気づき正しい知識をつけることは大学で人と接していく上で大事なことだと思います。このコースでは性的暴力、恋人からのDV、セクハラの対処法なども学べるので実践的です。日本の義務教育や高校ではここまで踏み込んだ内容を誰も教えてくれません。SAPUに似たようなオンラインコースを大学に投入することで、学生が正しい知識や健全な人間関係の気づき方を学べより、性的マイノリティ側も安心して学校生活を送れると思います。
④オリエンテーション当日にセクシュアル・コンセント(性的同意)の説明を受ける
コンセント(Consent)は英語で同意という意味です。性的同意は、性的な行為に対して、その行為を積極的にしたいと望むお互いの意思を確認することです。性暴力を阻止するために必要な行動です。性的暴力と聞くとレイプや強制猥褻のみを思い浮かべる人もいますが、デートDV、避妊具をつけない性行為、性的嫌がらせなど身体接触の有無を問わずに望まない性的行為は性暴力に入ります。
そして性的な暴力は、年齢、性別にかかわらず起こります。 夫婦・ 恋人の間でも起こりますし、同性同士でも性暴力や起こります。
LGBTコミュニティでも性的暴力は深刻な問題として捉えられています
”日本ではLGBTなど性的少数者の約38%が、レイプやセクハラなどの性被害経験を持つことが、宝塚大の日高庸晴教授(社会疫学)の調査で分かった”引用:(https://www.tokyo-np.co.jp/article/76934)
支援団体の代表の岡田実穂さんによると、レズビアンやバイセクシュアルの女性などが、「矯正レイプ」と呼ばれる性暴力を受けることがあるそうです(引用:NHK News Up 2017年7月13日 )
アメリカの大学では性的同意に対し真剣に議論されます。なのでオリエンテーションの日に『Consent – it’s simple as tea』という動画が会場で流された。函館性暴力防止対策協議会が作成した日本語吹き替え版を見つけたので載せておきます。この動画では性的同意についてお茶を飲むことに例えて、わかりやすく説明している動画です。
日本の教育機関での取り組み提案
日本において性暴力が起こる背景として性に対する意識の低さ、性的同意の軽視が原因だと思います。大学のオリエンテーションでこういった誰もが入りやすいビデオを流し、性的同意の大切さを説明することで学生たちがNOと言える勇気を持てるのではないかと思います。
⑤大学公式のLGBTQクラブ(サークル)がある
私の通っていた大学には14個大学が認定したクラブがありました。その中の1つにあったのがLGBTQクラブでした。活動としては、性的マイノリティや安全な性交渉に関する教育リソースを提供したり、LGBTQ当事者の体験をクラブ内で共有したりしており、定期的なグループミーティング、イベント、有益なプレゼンテーションを行なっています。
こうしたクラブのように当事者が意見を交換し会えたり、相談もできて、学び合える環境があることや、またカミングアウトしたくない人のプライバシーが守られていることが大事だと思います。
------------
以上が、私が通っていた大学でのLGBTQ当事者への取り組みでした。「海外ではこういう取り組みをしているんだ」とまずは知ってもらいたいので記事にしました。こういった取り組みに興味がある方は、日本語で検索するとでできにくい情報ですが、英語で「lgbt friendly college」など検索してみるとたくさん情報が出てきます。
上記の取り組みを日本の教育機関で取り入れるには解決すべき課題があると思いますし、年月もかかると思います。しかし、この記事が少しでも日本の教育機関でのLGBTQ教育に対する前向きな進展に貢献できることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。