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国際刑事裁判所(ICC)にバイデン元大統領らの戦争犯罪の捜査を要求する米国の人権団体
米国ワシントンDCに本部を置く人権団体「DAWN- Promoting Human Rights In The Middle East中東世界のための人権を促進するドーン」は、米国のバイデン元大統領、アントニー・ブリンケン元国務長官、ロイド・オースティン元国防長官、その他の米国当局者を戦争犯罪で正式な捜査を行うように国際刑事裁判所(ICC)に要求した。
ドーンの役員で、戦争犯罪を手がけてきたリード・ブロディ弁護士は「ガザの病院、学校、住宅に投下されたイスラエルの爆弾は米国の供給によるものであり、ガザでの殺人と迫害は米国の支援を受けて実行された。米国当局はイスラエルがガザで何を行っているかを厳密に把握していたにもかかわらず、ガザ戦争中、米国のイスラエル支援は一度たりとも止むことはなかった。」と述べた。
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ドーンは172ページに及ぶ提出書類の中で、米国の兵器と諜報活動が民間人を標的にすること、強制移住、大量虐殺などの戦争犯罪を犯すために用いられていたことを指摘し、イスラエルに軍事的、政治的支援を行い、戦争犯罪を幇助した米政府関係者たちをICCが捜査し起訴することを強く求めている。提出された文書には、バイデン、ブリンケン、オースティンの3人が、自分たちの支援が戦争犯罪に加担するものであることを自覚していたことを示す内容も含まれている。米国のイスラエルへの支援には少なくとも179億ドルの武器移転、イスラエルへの情報提供、軍事標的に関する情報の提供、外交によってイスラエルの戦争犯罪を擁護したこと、イスラエルの犯罪を容認したことなどが含まれており、そのような支援が重大な虐殺を引き起こしてきたことを米政府関係者は認識し、また将来における虐殺の可能性も心得ていたとドーンは主張している。
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ドーンによれば、バイデン元大統領は、議会の審査を回避し、国民の監視の目をさえぎり、犯罪の実行に大きく加担し、イスラエルへの米国の武器と資金の移転を可能にした。彼は米国の諜報機関に「イスラエルのカウンターパート(モサドなど)と協力して作業する」ように命じ、イスラエルが戦争犯罪行為を行っていることを知りながらも、イスラエルに対する個人的かつ揺るぎない支持を示す公の声明を繰り返し発表し、これらの犯罪を「正当防衛」として擁護さえしたとドーンの調査書は述べている。
ガザ市民の大量殺戮を伴うイスラエルの攻撃を黙認したバイデン政権の姿勢は、米国外交の重大な汚点として語り継がれることなるだろう。国務省中東局の元次官補ジェフリー・フェルトマンは、イスラム世界の多くの人々が今や米国を「大規模な民間人の破壊と死に対して、良く言っても無力、悪く言えば共犯者」と見ているのではないかと懸念していると述べた。『ホロコーストとジェノサイド』の著書があるイスラエル系米国人のオメル・バルトフはイスラエルの残虐行為への黙認が中東情勢に影響を与える米国の能力を損なうと同時に「第二次世界大戦後に確立された国際法の体系全体を破壊している」と語った。ハーバード大学ケネディスクールの国際問題研究の教授で、この地域における米国の政策の第一人者であるステファン・ウォルトは「バイデン政権はガザ戦争に関与しようとしたものの、単に何かしようとしているふりをしただけだった」と述べた。
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ガザでの殺戮をバイデン政権が黙認したことで、米国は国際秩序、倫理の擁護者としての地位を完全に喪失し、米国の国際社会での主張は説得力を喪失し、中東での影響力はいっそう低下した。ガザ殺戮の「共犯者」である米国は国際法の体系を破壊し、ガザをリゾートの「楽園」にすると訴えるトランプ政権で米国の国際的指導力はいっそう低下することだろう。バイデン元大統領はイスラエル・パレスチナの二国家共存を口にしながらも、公正な和平の実現とはほど遠い姿勢に終始した。
イスラエルは、多数の市民の犠牲を伴う軍事力を行使し、またガザ市民への食料提供を大きく制限した。これらは、ICCが重大な犯罪と見なす「ジェノサイド」という形容がふさわしいもので、大学、学校、モスク、教会、病院を破壊することはパレスチナ人たちから社会的・文化的生活をはく奪することになった。バイデン元大統領らへの捜査要求が今後の米国の対イスラエル協力を抑制する効果を生むことを期待したいところだが、親イスラエルの福音派の信条に支配されるトランプ政権では米国の国際的影響力はイスラエル・パレスチナ問題をめぐっていっそう低下することだろう。
表紙の画像は捜査が要求された3人