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ガザ和平調停役から撤退するカタール ―国際社会で日本外交の力量が試されている

 イスラエルとハマスの停戦のための仲介を行ってきたカタールは、イスラエルとハマスがカタールなどの調停国への努力に応じないかぎり、仲介者としての立場から撤退することを表明した。  今年5月初めにハマスはカタールとエジプトという仲介国に対して停戦案を伝えることを表明した。しかし、この停戦案をイスラエルのネタニヤフ首相はただちに拒否した。この時の停戦案の内容は、段階的に行われるものとして、第1段階ではイスラエルの刑務所に収監されているハマスの囚人50人の釈放と引き換えにハマスの人

    • トランプの当選を大喜びするネタニヤフと、ネタニヤフの暴走を止めたいトルコ独裁者は独裁者を評価する?

       トランプ当選のニュースに満面の笑みを浮かべたのはイスラエルのネタニヤフ首相だった。トランプが大統領ならネタニヤフ政権のガザやレバノンなど周辺諸国への拡張主義的戦争に干渉せず、またイランとの戦争についてもトランプ政権なら米国がパートナーとなり得るからだ。  米国大統領選挙の当日、ネタニヤフ首相はガラント国防相を解任した。ガラント国防相は、ガザの将来についてイスラエルが占領を継続することに懐疑的で、これがガザへのイスラエルの再入植を考えるネタニヤフ首相や、政権内部の極右閣僚で

      • トランプの時代に贈るクインシー・ジョーンズが敬愛したイスラムの詩人の愛と寛容

         11月3日に亡くなったジャズ・ミュージシャンで、音楽プロデューサーだったクインシー・ジョーンズ(1933~2024年)は「私はオマル・ハイヤーム、カリール・ジブラン、ルーミー、L.ロン・ハバード、あらゆる種類の哲学書を読んでいました。」と語っていた。L.ロン・ハバードを除いては、ペルシアやアラブの詩人たちだ。  米国のフォークソング歌手のウディ・ガスリー(1912~67年)はペルシアの詩人オマル・ハイヤームの「ルバイヤート」に強い影響を受けていた。有名な曲「我が祖国」の詞

        • ガザの「日本地区」と、米国がトランプ政権だからこそ日本はパレスチナ国家承認を

           ガザ南部のハーン・ユーニスに「日本地区」と呼ばれるところがあることはあまり知られていないだろう。日本の援助で建てられた学校や保健所、住宅が集中するところだ。2012年から昨年3月までハーン・ガザの子どもたちは日本の支援への感謝と東日本大震災の被災者との連帯の思いを込めて凧揚げを行っていた。  UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)渉外・広報局の新田朝子さんによれば、ガザの子どもたちは日本の文化である折り紙や俳句なども学び、また釜石市の子どもたちのアイデアによって竹の

        ガザ和平調停役から撤退するカタール ―国際社会で日本外交の力量が試されている

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          トランプ大統領誕生と中東イスラム世界の恐怖 ―世界はパラノイアによって支配されている(ジョン・レノン)

           アメリカ大統領選はトランプ候補が優勢なようだが、ハリス陣営がアラブ・イスラム系アメリカ人の票を獲得できなかったとすれば、イスラエルのガザ戦争に優柔不断な対応をしたことに尽きる。バイデン政権は国際司法裁判所を含めて国際社会の多くが、イスラエルがガザで行っていることを「ジェノサイド」と認定してもなおイスラエルに武器・弾薬などの支援を与え続けた。  ミシガン州ハムトラムク市のイエメン系のガーリブ市長は早々にトランプ支持を決めた。ハムトラムク市は人口3万人ぐらいだが、過半数の人口

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          楳図かずおさんが描いた「死者の行進」

           漫画家の楳図かずおさんが亡くなった。ホラーからSF、ギャグ漫画など幅広く手がけておられた。  手元にある楳図さんの漫画は「死者の行進」という『漫画が語る戦争 戦場の挽歌』(小学館、2013年)に収められたものだ。  『漫画が語る戦争』には水木しげる、古谷三敏、白土三平などの作品も収められているが、楳図さんは、「死者の行進」について、「『死者の行進』を描くときはものすごく迷いました。当時は、戦争を体験した方がたくさんいらっしゃいました。マンガ家の中にも水木しげるさんみたい

          楳図かずおさんが描いた「死者の行進」

          イスラエルに植民地化されるパレスチナに、日本の植民地主義の過去と重ね合わせた「李香蘭」

           演出家の浅利慶太さんは、ミュージカル「李香蘭」(1991年初演)は何度でもいつでも上演したい作品だと語っていた。戦争に翻弄された李香蘭(山口淑子さん)を通じて、戦争の実相を子供たちに伝えたい、悲劇が繰り返され昭和という時代を風化させてはならないという想いが、「李香蘭」上演の背景にあった。  山口淑子さんは中国人歌手「李香蘭」としてデビューして、美貌と歌唱力で満州国と日本のスターとなったが、日本軍に協力したことで終戦後中国への反逆罪に問われたが、日本国籍であることが証明され

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          敗退するイスラエル軍 ―武力は万能ではない

           先月、10月はイスラエル軍にとって、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃以来、最も犠牲の多い月となった。1カ月間で62人の兵士が戦闘で死亡し、イスラエル国内ではヒズボラのミサイル攻撃などで15人の市民と2人の警官が犠牲になった。イスラエル軍のリハビリテーション部門では1万2000人以上の負傷者を治療しており、その数は毎月およそ1000人ずつ増加している。これらの数は過少に公表されているのではないかという疑念が野党などから疑問が呈されている。  ヒズボラの最近の発表では10月1

          敗退するイスラエル軍 ―武力は万能ではない

          パレスチナ問題 ―善良なる日本人の判官びいき

           BBCの世論調査でイスラエルが世界に肯定的な影響を与えているかという問いに対して、日本ではそう思うと回答した人が2012年が3%、2013年も3%、2014%は4%と世界の国々の中では突出して低かった。2014年はイスラエルがガザに大規模な攻撃を行い、2200人余りのパレスチナ人が犠牲になった年だった。アルバムの中の画像のように、イスラム教徒が圧倒的に多いインドネシアやパキスタンよりも低い。2017年には、日本は調査対象とならなくなってしまった。  「判官(ほうがん、ある

          パレスチナ問題 ―善良なる日本人の判官びいき

          「ガザは永遠に我々のものだ」 ―国連が撤廃を要求する植民地主義をイスラエルはひたすら追求する

           イスラエルも加盟する国連は植民地主義を完全かつ早急に撤廃し、国連憲章や植民地独立付与宣言、世界人権宣言の規定を順守するように加盟国に要請しているが、イスラエルでは植民地主義を推進する傾向がますます強まっている。  「ガザは永遠に我々のものだ」というスローガンの下、イスラエルの極右など急進的政治家と右派政治家たちがガザ境界近くの10月20日から21日にかけてイスラエルのベエリ入植地で集会を開いた。  この集会には極右のイタマル・ベングビール国家治安相、また同様に極右のベザレ

          「ガザは永遠に我々のものだ」 ―国連が撤廃を要求する植民地主義をイスラエルはひたすら追求する

          イスラエル国会、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決

           イスラエル国会は10月28日、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決した。とても国連加盟国の行為とは思えないが、イスラエルの政治・社会の極右傾向をまたも示すことになった。この措置によって、ガザやヨルダン川西岸などのパレスチナ難民の人道状況がいっそう劣悪になることは明らかだ。  今年1月、昨年10月7日のハマスの奇襲攻撃にUNRWA職員が関わったとイスラエルが主張したことを受けて日本を含む12カ国がUNRWAへの拠出金を停止したことがあった。

          イスラエル国会、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動を禁止する法案を可決

          セイエド・アッバス・アラグチ外相の『イランと日本』 ―イランの孤立回避のために努力した3年間

           イランのアラグチ外相は、2008年から2011年まで駐日イラン大使を務めたが、イランでは、何かと奇矯な発言が多いアフマディネジャード大統領の在任時代だった。アラグチ大使はイランの孤立を回避するための努力を払っていたことは、我々のペルシア湾の安全保障に関する少人数の研究会にも足を運んでイランの立場を熱心に説明していたことにも表れていた。  アラグチ氏の最新著『イランと日本 駐日イラン大使の回顧録2008-2011』は、日本在任時代に見聞し、知見を得たことに基づく日本論である

          セイエド・アッバス・アラグチ外相の『イランと日本』 ―イランの孤立回避のために努力した3年間

          パレスチナは勝つ ―歴史家ベニー・モリスの予見

           2019年にイスラエルの歴史家ベニー・モリスは、イスラエルの「ハアレツ」紙とのインタビューで、「パレスチナ人は、すべてを広く長期的な視点で見ている。彼らは、現時点でここに500万から700万人のユダヤ人がいて、何億人ものアラブ人に囲まれていることを理解している。ユダヤ人国家は長続きしないので、パレスチナ人には屈服する理由がない。パレスチナ人は必ず勝つ。あと30年から50年で、何があろうと彼らは我々に打ち勝つだろう」と述べた。モリスは、パレスチナ人は決して諦めることなく人種差

          パレスチナは勝つ ―歴史家ベニー・モリスの予見

          総選挙の結果と、民族浄化が着々と進むガザ北部

           総選挙で自公は半数を割ることになった。「裏金問題」なども敗因としてあると思うが、国の形のあり方を形づくる安全保障問題の重要事項を国会での議論を経ずに、また民意問うことなく、閣議決定で決定するなど驕りがあった。岸田政権はNATOにまで接近する姿勢を見せたが、ヨーロッパの安全保障問題にまで首を突っ込み、ロシアとの関係を決定的に悪くする必要があるだろうか。そのNATOはイスラエルのイラン攻撃について、イランの側につくものはNATOの敵と見なすとまで発言している。  選挙で当選し

          総選挙の結果と、民族浄化が着々と進むガザ北部

          世界は等しく、公平な法の支配を求めている ―日本はイスラエルに対しても法の遵守を求めるべき

           レバノンに地上侵攻し、ベイルートなどを空爆するイスラエル軍は国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設を攻撃し、UNIFILの隊員に負傷者が出た。第二次世界大戦後の世界秩序に対する重大な挑戦であり、許容しがたい。グテーレス国連事務総長は「明らかな国際人道違反行為だ」とイスラエルを批判し、イタリアのメローニ首相などもイスラエルへの武器禁輸を明らかにするなど、イスラエルに対する反発を強めている。イスラエルはガザでは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が経営する学校をことご

          世界は等しく、公平な法の支配を求めている ―日本はイスラエルに対しても法の遵守を求めるべき

          イランの外交的勝利? ―イスラエルのイラン攻撃

           26日早朝にイスラエルはイランのミサイル製造関連施設を空爆した。しかし、これは、イスラエルの地域における孤立のために、限定的なものにならざるを得なかった。イスラエルの戦闘機がイランに到達するのに、湾岸協力会議(GCC)加盟国(クウェート、バーレーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、イラク、トルコの領空を通過する許可を得られなかった。イスラエルの攻撃が限定的な成果しか得られなかったとすれば、それはネタニヤフ政権の地域での孤立を背景にしている。  トルコ政府は5

          イランの外交的勝利? ―イスラエルのイラン攻撃