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バイデン大統領のパレスチナ問題の「2国家解決」の訴えと、それに従う日本の主張は空虚に響く

 米国のバイデン大統領は次期大統領選挙に出馬しない意向を明らかにした。ドナルド・トランプとのディベートには明らかに「老い」を感ずるものがあり、次の4年の任期は厳しいという圧力が民主党内から強まったことが大きい。バイデン政権はパレスチナ問題の2国家解決を訴えてきたが、イスラエルは過日も書いたように国会(クネセト)が17日にパレスチナ国家を認めない議決を行っている。

 米国は、バイデン政権を含めてパレスチナ国家はイスラエルの同意があって初めて樹立できると長年主張してきた。しかし、イスラエルがそのような国家はあり得ないと先入観で決めつけているのであれば、この米国の原則はまったく空虚なものだ。

 日本の上川外相は「当事者間の交渉を通じた『二国家解決』を支持する」と繰り返しているが、イスラエルがまったくパレスチナ国家を認める気がない中で、米国に追従するような日本の姿勢はパレスチナをはじめ、アラブ・イスラム諸国の国民やグローバルサウスの人々の理解や支持を得られるものではない。

 2国家解決がなければ、イスラエルによるアパルトヘイトや民族浄化、占領地における入植地の拡大が続き、イスラエルの極右が主張するように、パレスチナ人が追放されることもあり得る。国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルによる占領や入植地拡大が不当という勧告的意見を出したのだから、日本もパレスチナ国家承認に何の障害もないはずで、外交的主体性を見せる時だ。

日本政府も早くパレスチナ国家承認を行うべき https://www.nishinippon.co.jp/item/o/1156992/

 バイデン政権など米国の歴代政権が「2国家解決」を訴える中でもイスラエルは入植地の拡大を続け、米国はそれを黙認してきた。「2国家解決」は米国がイスラエルによる不当な入植地拡大を事実上認める中でその隠れ蓑になってきた。

 再選を断念した大統領と言えば、ケネディ大統領の後を継いだジョンソン大統領以来だろうか。このジョンソン氏とバイデン氏の共通項と言えば、アメリカの大学で反戦運動をもたらしたことだ。ジョンソン政権は1964年からベトナムに本格的に介入するようになったが、米兵の犠牲者の増加とともに、戦争に賛成する世論も少なくなり、1967年半ばの世論調査では50%以下の人々が戦争を肯定するに過ぎなくなった。

 他方、北ベトナムでは、米国や南ベトナムに対して決定的な打撃を与えることが計画されるようになった。1968年のベトナムの旧正月(テト)に合わせて一斉攻撃が行われた。北ベトナム軍と民族解放戦線は、南ベトナム全土44州の36の州都で一斉に攻撃を行い、また25余りの米軍の空軍基地などの軍事拠点を襲った。フエの半分は北ベトナムや民族解放戦線の軍隊によって占拠され、その占拠は3週間以上続いた。米軍や南ベトナム軍は反撃に出て、民族解放戦線や北ベトナム軍が占拠を続けた都市はフエを除いてはなかったが、このテト攻勢が米国内に与えた心理的衝撃は大きかった。ジョンソン政権に対するメディアや政治家たちの批判はいっきょに増大していった。

 国内の反戦ムードを受けて、ジョンソン大統領は、3月31日に北爆の停止を発表し、戦争の段階的縮小の考えを明らかにした。アメリカは戦争終結のための会議に代表を送る用意があること、また次期大統領選挙に出馬しない意向もジョンソン大統領は表明した。その3日後に北ベトナム政府もアメリカと和平会議を行う準備があるという声明を出し、5月13日にパリで和平会議が始まった。

ベトナム反戦運動 「米軍は帰還せよ」 https://cpusa.org/article/ghosts-self-sacrifice-and-protest-against-war/

 このジョンソンと同様に、バイデン大統領が不人気になったのはイスラエルのガザ攻撃に協力したことによってだった。米国は23年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃すると、バイデン政権は11月末までに15、000発の爆弾と57、000発の砲弾をイスラエルに供与し、さらにBLU-109「バンカー・バスター」や巨大な5.000ポンドのGBU―28「バンカー・バスター」などありとあらゆる種類や規模の爆弾を提供し、それがガザ市民の多数の犠牲をもたらし、イスラエルのガザ攻撃をいっそう悲惨なものにした。

 米国の学生たちのガザとの連帯を図る運動は、バイデン政権のイスラエルへの武器供与の姿勢が、米国のイスラエル偏重の外交や、米国政治を支配してきた軍産複合体体質に疑問の声を上げるもので、米国がガザの人道危機に加担していることに強い反発の声を上げるものだった。

ミシガン大学の卒業式でパレスチナとの連帯を訴える学生たち 24年5月4日 https://www.timesofisrael.com/pro-palestinian-protesters-bring-gaza-war-to-us-college-graduations/

バイデン大統領は残りの任期で、ガザ停戦をできるだけ早期に実現させ、ガザ復興とパレスチナ和平の道筋をつけなければならない。また、国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見にイスラエルが従うような圧力をかけるべきことは言うまでもない。民主党の有力な大統領候補になるカマラ・ハリスはイスラエルのガザ攻撃で民間人の犠牲が出ることやイスラエルの極右入植者の暴力に批判的であり続けているが、米国政府が唱え続けた2国家解決を真摯に推進すべきであることは言うまでもない。

まだ民主党の候補に決まったわけではありませんが、トランプよりははるかにまし。 私は、我が国においてあらゆる人間が公共の安全、公教育、公衆衛生へのアクセスを拒否するいかなる政策にも反対します。 I am opposed to any policy that would deny in our country any human being from access to public safety, public education, or public health, period. https://www.yourtango.com/2020336280/kamala-harris-quotes-prove-shes-promising-vice-presidential-candidate

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