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宮田大樹
2022年10月17日 08:26
私は、全国読書感想文コンクールの審査員を長年勤めている者なのですが。少し、お話を聞いていただいてもよろしいでしょうか? その、なんといいますか、今年応募のあった感想文のなかで、ひとつ、判断に困るものがあるのです。これは、感想文なのか、と。 その感想文はこんな書き出しで始まります。*むかーし、むかし。あるところにおとうさんとおかあさんとぼくがいました。おとうさんは会社へ仕事に、
2022年7月17日 21:29
―恋はするものじゃなくて、落ちるものだ―という書き出しで始まる恋愛小説を読んだことがある。とすれば、私は今、恋に落ちているのだろうか。 彼は、私が働くコーヒーショップの常連客だった。平日の昼間にラフな服装でやってきて、季節に関係なく、ホットのコーヒーを注文する。そして、テーブルにパソコンを広げ、1~2時間ほど画面に向かい、一仕事終えると、席を立ち、コーヒーをお代わりしに、カウンターへやってくる
これは、ある灯台守の男とその娘の話である。 ある岬には古い灯台があった。 その昔、灯台といえば、海を渡るものたち、漁を生業とするものたちの“みちしるべ”として、なくてはならない存在であった。 だがそれも過去のこと。衛星通信による位置測定の技術が発達し、また、それ自体の老朽化も進み、役目を終えるものがひとつ増え、ふたつ増え、もはや風前の灯、この灯台を残すのみとなっていた。 男の一家
2021年3月11日 12:01
“3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去っていく”とはイギリスのことわざらしいが、それは日本でも通用するようだ。肌を刺すような寒さは感じられなくなり、日照りに暑苦しさすら感じるものの、一度風が吹けば、それはライオンの叫び声のような音とともに激しく吹き荒び、途端に冬を思い出させられる。 こんなことわざ、一介の中学生が知っているはずもなく、とある将棋漫画の受け売りである。 将棋を熱