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#短編

【小説】読書感想文の審査員を務めているのですが

【小説】読書感想文の審査員を務めているのですが

 私は、全国読書感想文コンクールの審査員を長年勤めている者なのですが。少し、お話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?

 その、なんといいますか、今年応募のあった感想文のなかで、ひとつ、判断に困るものがあるのです。これは、感想文なのか、と。

 その感想文はこんな書き出しで始まります。



むかーし、むかし。あるところにおとうさんとおかあさんとぼくがいました。

おとうさんは会社へ仕事に、

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【小説】おぼれるふたり

【小説】おぼれるふたり

―恋はするものじゃなくて、落ちるものだ―という書き出しで始まる恋愛小説を読んだことがある。とすれば、私は今、恋に落ちているのだろうか。

 彼は、私が働くコーヒーショップの常連客だった。平日の昼間にラフな服装でやってきて、季節に関係なく、ホットのコーヒーを注文する。そして、テーブルにパソコンを広げ、1~2時間ほど画面に向かい、一仕事終えると、席を立ち、コーヒーをお代わりしに、カウンターへやってくる

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【小説】灯台もと暮らし

【小説】灯台もと暮らし

 これは、ある灯台守の男とその娘の話である。

 ある岬には古い灯台があった。

 その昔、灯台といえば、海を渡るものたち、漁を生業とするものたちの“みちしるべ”として、なくてはならない存在であった。

 だがそれも過去のこと。衛星通信による位置測定の技術が発達し、また、それ自体の老朽化も進み、役目を終えるものがひとつ増え、ふたつ増え、もはや風前の灯、この灯台を残すのみとなっていた。

 男の一家

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【小説】僕、体調悪くならないので

【小説】僕、体調悪くならないので

 “3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去っていく”とはイギリスのことわざらしいが、それは日本でも通用するようだ。肌を刺すような寒さは感じられなくなり、日照りに暑苦しさすら感じるものの、一度風が吹けば、それはライオンの叫び声のような音とともに激しく吹き荒び、途端に冬を思い出させられる。

 こんなことわざ、一介の中学生が知っているはずもなく、とある将棋漫画の受け売りである。

 将棋を熱

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