憂鬱な話を聞いている時は白玉あんみつのことを考えている
ここ一ヶ月ほど、
ある男性のことで、少々悩んでいました。
その男性というのは職場の先輩。
直接の上司ではないけれど、最近仕事でお付き合いするようになった方です。
悩んでいるのは、彼のお喋りについて。
毎日午後三時頃になると、彼はふらふらとわたしのデスクにやってきます。
それとなくパーティションに肘をつき、いつも同じようなことを嬉しそうに話すのです。
「部長がこの人のこと仕事できないって」
「部長ってこの人と仲良いんだよ、先週ゴルフに行ってたんだって」
「週末何してたの?どこか行ったの?」
最初はしずかに聞いていたのですが
だんだんと、頭の中を「自慢」とか「権力」とか、いやな言葉が埋め尽くすようになってきました。
でも、立場上直接伝える勇気もなく。
日を追うごとに、まるでわたしはどんどん小さく、彼はどんどん大きくなっていくように感じられました。
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直接言えないのなら、せめて自分の心を守ろう。
そう思ったわたしは、
彼の話を聞くときに、「頭の中につやつやの白玉あんみつを思い浮かべる」と言う作戦を
試すことにしました。
ちょうど、上野みはしさんの白玉クリームあんみつが気になっていたのです。
あんみつを精緻に頭の中に描き出すと、
頭は「みはし」のお店の中へ…。
こんな感じでトリップしていきます。
*
八月の暑い日。
薄いリネンのワンピースと日除けの帽子を身につけて訪れたのは、京成上野駅からほど近いレトロな喫茶店「みはし」。
ショーケースには、色とりどりのかき氷やあんみつから、ところてんやお雑煮までが並んでいる。
でも、頼むものはもう決めている。
なんといっても、白玉クリームあんみつ。
ホームページにはこんな文句が書いてあるのだから、頼まないわけにはいかない。
もちもち白玉で気分も弾む...と気持ちも楽しく。 いつも明るく笑顔でいると幸せがやって来るそうです。
出てきたのは、ベーシックで伝統あるクリームあんみつ。つやつやの白玉とソフトクリーム、あんことみかん、それから寒天が上品に盛り付けられている。
さっぱりしたソフトクリームが
あんこに溶けたらどんな味がするんだろう。
みかんの酸っぱさと、あまいあんこが
合うんだろうな。
なんといっても、白玉。つるつるもちもちで、
嫌なこともさっぱり忘れられるんだろうなあ。
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それぐらいまでイメージを膨らませると、
彼が「じゃ、また明日ね」というところで「はっ」と現実世界に帰ってこれます。
そんなふうにして心をシャットアウトすることで、彼から逃げているのです。
もちろん彼に対しては失礼なことだと思います。
こんなことをしなくても、冗談みたいに
「もう!話長すぎて紅の間奏かと思っちゃいましたよ〜」とか言えたら、どんなに双方のためになるだろうか。
でも、まだそんな勇気は持てないのです。
それでも、嫌なことがあった時に、
ずーんと当てられるだけ、被害者になるだけ、というのは、そろそろ卒業したい。
なにか面白いことでも言って乗り切れるような自分になりたいな、と思うのです。
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そんなことを考えて、最近はこんな取り組みをひっそりと試しています。
彼がくる度に、夏の白玉あんみつに対する想いは着々と強くなっていく🍧
今年は上野にあんみつ、
食べに行けるといいなあ。
みや