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#148カイロを使うよ。

今年も残り数日で終わろうとしています。このところ、寒い日が増えてきて、朝晩の冷え込みが身体にこたえます。例年とちがうのは、わたしの左肩の部分です。夏に手術を受けてから、少しずつリハビリをがんばってきて、それなりの成果は上がってきているのですが、あと少し、以前と同じようには動かせません。ここに来て、寒さのために筋肉も縮まりやすいという逆風に晒されています。

「冬場はねえ、傷跡が痛みますからねえ」
理学療法士さんが、さも当たり前のように口にするフレーズに、恐れおののくわたし。リハビリを開始した当初は、丸太ん棒のようになった左腕を下に垂らしてぶるんぶるんと振り子運動するだけで精一杯でした。「がんばって、少しずつ良くなりますから」。優しい声かけに励まされ、その言葉を信じ、自分を労りながら訓練を続けました。

ところが時間の経過に従って、だんだんと雲行きが怪しくなってきます。
「まだ○○ができないんですよ」(わたし)
「でもまあ、元どおりってわけにはいかないかもしれませんね」

やんわりと、これ以上は良くならないかもを匂わすようなフレーズを耳にすることが増えてきたです。このまま現状を受け入れ、仕方ないと諦めていくのか。それともまだまだと自分一人でも前に進むのか。

教えられた運動をこなしているだけでは、壁を超えられないと焦ったわたしは、ある日よいものを見つけました。ホッカイロです。あの小学校・中学校時代にこっそりポケットの中でお世話になった、あいつです。

(あれを使って肩を温めてみるか)

やってみないより、やってみた方がいいに決まっています。そんなわけで何十年かぶりにカイロをゲットし、家に帰ると早速ビニールを剥がして、シャカシャカ振ってみました。わ、早い、早い。あっという間に温かくなるじゃないですか。

低温やけどしないように小さな巾着袋に入れて、肌着の上から左肩に当ててみます。あったか〜い。やっているうちに左肩よりも首の後ろを温めた方が、両方の肩甲骨のこわばりがとれ、腕を上げやすくなることも発見しました。何でも試行錯誤が大切です。

これまで、冬場はお腹を壊しやすく腹巻を巻いてみたり、布団に入ったあと足先が冷たいからと電気アンカーを利用したりしていましたが、今回、身体の後ろ側を温めることが、どんなに気持ちよく、元気が湧いてくるかを実感しました。

自分の身体で人体実験を始めたわたしは、電気アンカーで、背中全体を温めたら、もっと効果が上がるのではないかと考えました。そのまま巻くのは危険なので、タオルでくるんだアンカーを背中にくっつけ、術後にしばらくお世話になっていた腹部バンド(骨折した腕が動かないように固定するための薄いバンド)で固定してみました。うーん、これはすごいぞ。

「ちょっとだけね」

そんな言い訳をしながら、寒さに耐えきれず、こたつにもぐってしまうと、もうその晩のわたしは使い物になりません。大きなこたつむりとしてリビングで数時間を過ごし、そのまま布団に直行することになります。でも背中にアンカーを巻き、首元にカイロをつけていれば、良い姿勢を保ったまま読書したり、書き物をしたり、昼間と大差なく活動できるのです。

(ああ、カイロよ。ありがとう。お前のおかげでわたしはまたリハビリを継続する勇気をもらったよ)

骨折後の手術などの場合、一旦創部周囲の筋肉にもメスを入れています。その部分の筋肉が徐々に固くなっていくのが、一般的に4ヶ月を過ぎた頃だとされています。わたしの左肩も、そろそろ固くなっていく頃。ここであきらめてはいけません。伸ばすと痛い部分もしっかりと伸ばして、筋肉に「お前はちゃんと伸びることができるんだ」と教え諭していかなくては。

わたしの軟弱な意志を、カイロの温もりが力づけてくれます。そんなわけで、朝も昼も夜も、スキマ時間を見つけては、ゴムチューブを左右に伸ばしたり、水を入れたペットボトルを上げ下げしたり、壁に向かって腕立て伏せをしたり、もっと時間があればヨガマットの上に寝転び、全身のストレッチまで、果敢に取り組んでいるのです。

もう一つ、始めてから既に三週間くらい経つのですが「かかと落とし」も侮れません。数年前に話題になっていた時には「何だ、あれは?」とスルーしていたのですが、実は骨形成にとても良い体操なのだそうです。生きた骨の内部は日々生成と破壊を繰り返していて、骨の脆い人は破壊する力が強い傾向にあります。ダン、ダンとかかとを落として身体に振動を与えると、破骨細胞の働きが弱まるため、結果的に骨密度がアップします。食後1時間以内に行えば、血糖値の上昇も抑えられます。わたしは食後に台所脇のベランダに出て、腰に手をやり「ダン、ダン」とやっています。知らない人が見たら、ただの怪しいおばさんです。

怪しいおばさん、今日も一人、かかと落としに挑む。

そんな風にして、我が家の今年は終わりに近づいていきます。




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宮本松
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