宮本松

身近に起こる出来事を、時には真面目に、時には面白く、エッセイにまとめています。読んでもらえるとうれしいです。娘のミドリー、再婚夫のテル坊、息子のドラちゃんなどの家族が登場します。2024年9月22日からは童話も含め、出来れば週3回の配信予定で、無理なく楽しく続けていきます。

宮本松

身近に起こる出来事を、時には真面目に、時には面白く、エッセイにまとめています。読んでもらえるとうれしいです。娘のミドリー、再婚夫のテル坊、息子のドラちゃんなどの家族が登場します。2024年9月22日からは童話も含め、出来れば週3回の配信予定で、無理なく楽しく続けていきます。

マガジン

  • ながいお話。

    動物たちも登場する、ちょっと不思議な世界のお話です。長めのストーリーは分けて掲載しています。

  • かぞくの日常。

    再婚相手のテル坊、娘のミドリー、わたし、時々やってくる息子のドラちゃんとの小さな出来事。

  • 両親とのあれこれ。

    年をとってきた両親との思い出や介護にまつわる出来事。

  • みじかいお話。

    こどもの頃の体験や空想をもとに、5000字くらいのお話を作りました。短めのストーリーのものを掲載しています。

  • 親子のあれこれ。

    息子ドラちゃんと娘ミドリーとわたし、三人の思い出話。

最近の記事

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#13 こたつむりの時間。

今年の夏のすさまじい暑さが嘘だったかのように(嘘ではありませんでしたが)、秋は例年通りに深まり、朝晩の寒さが身にしみる季節となりました。一ヶ月ほど前に電気カーペットを敷き、こたつも出した我が家では、この先いつ本格的な冬シーズンに突入しても怖いものなどありません。 「何があっても(別に何もないのだけれど)、こたつがあれば大丈夫」 そんな気持ちになるのは私だけではないと思います。こたつをこよなく愛する日本人の方々が、列島各地で同じ思いを共有しているはずです。 こたつむりとは、

    • 牧くんのコンビニ生活#11。(ふしぎなタバコじいさん③)

      ぼくがうっかり自転車をとめて、タバコじいさんの隣りに座ってしまったものだから、じいさんは調子にのって、自分の思い出話を語り始めた。それがもう、長くて、長くて…。お年寄りが一旦話し始めると、話が止まらないなんてこと、その頃のぼくは知らなかったから。 途中までは興味をもって聞いていたはずなんだけど、「一体この話、いつまで聞いてたらいいんだろう?」って、会話を終わらせることばかりが気になり始めてからは、相槌を返すのがやっとだった。 タバコじいさんの名前は、徳長さんというらしい。

      • 牧くんのコンビニ生活#10。(ふしぎなタバコじいさん②)

        夏が近づいてきた。日が長くなってきたせいで、18時をすぎてもかなり明るい。その日は朝からみっちりオンラインで大学の授業を受けていた。曜日によってはそんな日もある。座りっぱなしは却って疲れが溜まる。立ちっぱなしとはまた違う疲れ方だ。このままだと夕食までにお腹も空きそうにない。 「ちょっと川沿いをランニングでもしてくるか」 前の週の日曜日に、笹井にさそわれて川釣りにいった場所が、ぼくはえらく気に入った。 「ここは穴場だぞ。人もあんまり来ないし、特に夕方はスズキやアジがよく釣

        • 牧くんのコンビニ生活#9(ふしぎなタバコじいさん①)

          ぼくたちがタバコじいさんと呼ぶ小柄な男性は、だいたい3日に一度のペースでいちごマートへやってくる。ユースケくんの後輩のバイトの子が、小さなメモみたいな用紙をレジの奥に貼って、しばらくの間、タバコじいさんが来た日に丸をつけて確認をとったみたいなのだ。最近の若者は、こういうことは結構楽しんで真面目に取り組むらしい。まるで野鳥の会か何かみたいだ。 お店に入って来ると、タバコじいさんは迷うことなくレジに近寄ってくる。そしてタバコの並んだ棚を指さしながら、 「23番、1カートン」

        • 固定された記事

        #13 こたつむりの時間。

        • 牧くんのコンビニ生活#11。(ふしぎなタバコじいさん③)

        • 牧くんのコンビニ生活#10。(ふしぎなタバコじいさん②)

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        • ながいお話。
          43本
        • かぞくの日常。
          48本
        • 両親とのあれこれ。
          14本
        • みじかいお話。
          21本
        • 親子のあれこれ。
          5本

        記事

          #144またキムタクか〜。

          毎晩、とまではいきませんが、わたしは案外夢を見ているほう、いや覚えている方です。ハッピーな夢をみて気持ちのよい朝をスタートできる日は少なく、どちらかといえば、現実の世界の心配事の続きが展開しているような、どんよりとした夢をみて、重たい気分で朝をむかえることが多いのです。 この頃は遠くに住んでいる両親のことが気がかりで、夢の中では父や母と話をしたり、喧嘩をしたり、いろいろやっています。 そんな中、またしてもあの人が現れました。「またキムタクか〜」目覚めたわたしは、そう思わず

          #144またキムタクか〜。

          牧くんのコンビニ生活#8。(おにぎりの裏事情②)

          一週間ほど前のことだった。パートのおばさんたちが、コソコソ話しているのをうっかり聞いてしまった時、ぼくはドキッとした。明るくて仕事も手を抜かなくて、悩み事なんて何もなさそうな大島さんの家庭事情は、ぼくの抱いているイメージとはかなり違うのかもしれない。そんなところまで想像してしまったからだ。 「レンジで温めますか?」 ぼくの想像なんて知りもしない大島さんが、レジに弁当をもってきた若い男性に、にこやかに声をかけている。レンジでチンって簡単なようで、実はそうでもない。商品によっ

          牧くんのコンビニ生活#8。(おにぎりの裏事情②)

          牧くんのコンビニ生活#7。(おにぎりの裏事情①)

          ぼくは一年の中で、梅雨の時期がいちばん苦手だ。雨にぬれるのが嫌なのだ。雨なんて、痛くもないし痒くもない。ぬれたら服を着替えればいいだけじゃないか。普通はそう思うだろう。確かに、それはそうなんだけど、すぐに着替えられない状況で、服がベトベトと身体にまとわりつく不快感が耐えられないのだ。何が苦手で何が苦痛なのかは、人によってさまざまだ。それくらいは自分勝手でいさせてくれ、それこそが個人の自由であるべきだ、と主張したいくらいだ。 というわけで、雨が降っている日はレインコートを着て

          牧くんのコンビニ生活#7。(おにぎりの裏事情①)

          #143フカフカの絨毯。

          11月も半ばになり、寒さがようやく肌身に沁みるようになってきました。二週間前の週末のこと、テル坊がいいました。 「そろそろ絨毯でも敷いて、コタツを出すとするか」(テル坊) 「うん、それがいいね」(わたし) そこで二人してはたと気づいたことがありました。我が家には冬用の絨毯がない!春まではあったのですが、今はない。捨ててしまったからです。何年も使い古くなった絨毯は、滑り止めの機能も低下して、ヨレヨレのペロペロになってしまっていたからです。新しい絨毯を買いに行かねばなりません

          #143フカフカの絨毯。

          牧くんのコンビニ生活#6。(表情を読むか問題②)

          「牧さん、D大なんでしょ?」 ユースケくんから不意に質問されて、ぼくはフラッとした。なんで知ってるの?だれに聞いたの?とは聞き返さなかった。「うん、そう」と答えただけだ。 「いちごマートで働いてるのは主婦が多いから、どんな情報もあっという間に広まりますよ」 ユースケくん、そういうの気にならない?ぼくはかなり嫌なんだけど。自分の情報が自分の知らないところで誰かに筒ぬけみたいなのって。ぼくはだまって、隣りにならんでいるユースケくんに、心の中で語りかけてみる。でもユースケくん

          牧くんのコンビニ生活#6。(表情を読むか問題②)

          牧くんのコンビニ生活#5。(表情を読むか問題①)

          それまで何も考えることなく足を踏み入れていた場所が、自分の働き口になった途端にまったく別物になる。そんな経験はきっと誰にでもある。ファミレスだったり、マクドナルドだったり、100均だったり、近所のスーパーだったり。それまでは「ただのファミレス」だったのが、自然と「自分のとこのファミレス」と考えるようになる。ぼくにとっては今、それがコンビニというわけだ。 (コンビニって、今の日本にどのくらいあるんだろう。一体いつ頃から増えてきたんだろう) 調べてみると、まずコンビニは全国に

          牧くんのコンビニ生活#5。(表情を読むか問題①)

          #142一歩前へ。

          8月半ばに退院してから、ほぼ週一のペースで左腕のリハビリに通っています。交通事故で骨折した上腕骨、というよりも肩関節部分の動きをよくするためです。 今で2ヶ月半ほどが過ぎますが、前回の医師の診察の時に「勝負は3ヶ月ですよ。リハビリ頑張りましょう!」と言われました。なぜ3ヶ月なの?とその場で聞くタイミングをなくしていましたが、担当の理学療法士さんと毎回40分のリハビリ中にいろんな話をするので、その辺りも質問してみました。 怪我をして、ある部分を手術すると、身体は自ら回復しよ

          #142一歩前へ。

          牧くんのコンビニ生活#4。(発見、いちごマート②)

          「いらっしゃいませー」 コンビニのバイトなんて、大して難しくもないだろうとタカをくくっていたけど、ぼくは初日からまんまとテンパってしまった。一緒にレジに入って指導してくれたのは、大島さんだった。最初に見かけた愛想のいいオバちゃんだ。店長よりも古株で、平日の昼間はほとんどシフトに入っている。どちらかというと大島さんの方が、店長らしい貫禄がある。背は低いけど、大柄で(太っていて)、歩くたびに身体がゆさゆさ揺れる。体力もガッツもひと一倍あり、バイトを始めた子は大抵、彼女の働いてい

          牧くんのコンビニ生活#4。(発見、いちごマート②)

          牧くんのコンビニ生活#3。(発見、いちごマート①)

          いちごマートを見つけたのは偶然だった。アパートに戻って二週間がすぎた頃のことだ。 朝は最低でも10時には布団から起きるようにした。眠気を吹きとばすには、太陽の光を浴びるに限ると、母さんに耳にタコが出来るくらいいわれたからだ。片目をつぶったまま、カーテンをひっぱる。「ヒイイ、眩しい」といいたくなるくらい、部屋に光が差し込む。BGMを流しながら歯磨きをする。そうしてるうちに少しずつ、頭の中も昼間のモードに変換されていく。 夕方には、一時間ほどジョギングをすることにした。元々身

          牧くんのコンビニ生活#3。(発見、いちごマート①)

          #141居心地の悪さ。

          この記事を投稿している頃は、実家の手伝いを終えて、自宅に戻り、普段の生活を再開しているだろうと思いつつ、今はまだ実家の二階の机の上でパソコンを広げている。 この二年ほど、九州から遠くはなれた場所で暮らしているせいで、帰省した時には一週間ほど滞在するスタイルが続いている。一週間は途轍もなく長いと感じることがあるものの、過ぎてしまえばあっという間だ。そして毎回いろんな思いが残っていく。 帰省した当日は、場所を移動した興奮が自分の中に残っている。両親には、再会の喜び以上に、日頃

          #141居心地の悪さ。

          牧くんのコンビニ生活#2。(三村さんのお告げ②)

          「わたしがもし、牧くんの彼女だったら…」 突然、三村さんが言い出した言葉におどろいて、ぼくは危うくご飯を喉に詰まらせそうになった。 「牧くん、よく聞いて。もしわたしが牧くんの彼女だったらね、一度実家に帰省して、休憩したほうがいいんじゃないって提案すると思う」 三村さんの言葉は、まるで命令しているような響きを伴っていた。すでにラーメンを食べ終え、のんびり寛いでいる笹井の顔をちらっと横目でみると、ぼくと同じようなことを考えているような表情をしていた。 「残念ながら、わたしは

          牧くんのコンビニ生活#2。(三村さんのお告げ②)

          牧くんのコンビニ生活#1。(三村さんのお告げ①)

          数年前の、ほんの一年にも満たなかった大学時代のある時期のことを、社会人になってから何度も思い出す。なぜだろう。そんなに楽しかったわけでも、充実していたわけでもなかったのに。むしろ疲れ果て、ただ日々のくり返しの波にもまれながら、自分を見失わないだけで精一杯だったというのに。 でも、だからかな。もしあの数ヶ月の体験がなかったら、自分がどんな社会人になり、今の仕事をどんな風にこなしていたのか、ぼくには予想もつかない。今のぼくが、ぼくなりに自分の足で立ち、与えられた仕事にコツコツと

          牧くんのコンビニ生活#1。(三村さんのお告げ①)