「スクラムって窮屈だな」と思ったら読んでほしい本
こんにちはこんばんは。スクラムマスターの いのもえ です。
最近、プレイフル・シンキングという本を読みました。
この本自体はアジャイルに一切関係ない本ですが、スクラムや LeSS の実践をするときに知っておいたほうが良いことがうまく汎化されてまとめられていると感じました。
今回はこの本に出てくる内容と、スクラムに出てくる内容がどう近いのか私見を書いてみます。
「学びの本質」プロセスとの類似点
この本の中では「働くことが大人にとっての学びの場」「人生を楽しく豊かにしてくれる一番の経験は学びである」ということを前提に、学びについて掘り下げるところから始まります。学びの本質は以下のプロセスを繰り返すこととしています。
実践する
振り返る
意味づけする
さらに、「学びの本質」と呼ばれているプロセスは「自己調整学習」と呼ばれる学習方法と似ています。
自己調整学習は、以下のように定義されています。
自己調整学習でも以下のプロセスを何度も繰り返します。学びの本質として紹介されているのはこの「予見」の活動が省略されていて、 とくに「遂行」「省察」にフォーカスされているのがわかります。
自分の能力を評価して目標を決める(予見)
自分の活動をモニタリングする(遂行)
自分の活動のどこが問題なのか反省し、次に繋げる(省察)
学びの本質や自己調整学習のプロセスそのものが、スクラムのプロセスと類似しています。
さらに、自己調整学習の以下の部分については、 LeSS で表現される自己管理チームとも類似点を感じます。 LeSS では開発者達の学びにも重きを置いていますが、「学ぶことが楽しみに繋がる」と考えると、この学びを重視していることが持続可能なチームを作るための仕組みにも思えました。
自己管理する方法について言及している
この書籍の中では、「物事を捉え直して自分ごとにすることで仕事をプレイフルにしていこう」というメッセージが多いのですが、それを実現するためのヒントも多く載っています。例えば、以下のようなものが載っています。
フィックスマインドセットとグロウスマインドセット
メタ認知を通して自分の可能性を広げていく
4 つの P(Projects, Passion, Peers, Play)
目標設定の考え方
この本で紹介されるヒントたちは、いずれもチームを観察していて思いつく解決案に近いものだと感じました。課題に直面するよりも前にこれらの考え方を知っていれば、自分たちで困難を乗り越えられることが多くなりそうです。
具体的なワークショップのアイディアが載っている
アジャイルソフトウェア開発宣言で個人との対話を推奨している背景から、スクラムや LeSS のプロセスにおいてはワークショップを取り入れることが多くなると認識しています。一方で、ワークショップを一度も企画したことがない方が「ワークショップ形式で進めなさい」と言われても困ってしまうと思います。
この本の中では、ワークショップの具体的なアイディアとその狙いが載っています。これらに目を通してからプロセス改善に目を向けることで、「そもそもなぜワークショップ形式のほうが良いのか」という観点での発見や、プロセスの改善ポイントが光って見えそうだと感じました。
〆
これからスクラムを始める方や、いまスクラムや LeSS といったアジャイルな開発プロセスを実践していて「制約が多く、自由に開発を進められない」と感じている方に初めのところだけでも是非読んでみてほしい!と思える本でした。
また、スクラムマスターをしていて以前からなんとなく「認知心理学」「教育工学」あたりの知識が役に立つなと思っていたのですが、そのあたりもうまく言語化されて腑に落ちた感覚があります。
良い本に出会えてよかったです。またなにか読んだらまとめてみようと思います!