宮地昌幸

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宮地昌幸

アニメ監督、小説 「さよならアリアドネ」復刊ドットコムより発売中! https://www.youtube.com/watch?v=j9ga0O6ef5I

最近の記事

アニメ演出講座がひと段落…

2023年の二月から始めたアニメ演出講座(演出処理について)が、12/9に全八回を持って終了しました。ホッとしました。 毎回テキストを作りアンケートに回答する。もちろんそれと並行で演出処理と絵コンテの通常仕事も抱えているので結構大変でした…。 年々、業界内の〝演出家〟という役職への危機感が募ってはいたのですが、それが溜まりに溜まって溢れ出し、自分の進退も含め、一回空っぽになってしまいたいという自身への揺さぶり、またインボイス制度というフリーランス一掃制度への抵抗としてスタート

    • 2022年に観た映画で印象深かったもの

      今年は総鑑賞映画本数179本。映画初めは2022/1/2の『ラストナイト・イン・ソーホー』から、映画納めは12/28の『かがみの孤城』でした。映画館が好きなので基本は映画館ですが、Netflixやアマプラなども増えてきました。では早速。 今年の一番は、『バビ・ヤール』です。ドキュメンタリー映画。 ダントツで面白かった。いや、震撼した。考えさせられました。私にとってセルゲイ・ロズニツァ監督を発見した年で、立て続けに何作か鑑賞した事も衝撃に拍車を掛けてます。『ドンバス』(こち

      • その時、どんな表情にさせるべきか─。演出家はそれを考える仕事だと思う。

        ここ何年か、八月がザワザワする。 広島、長崎、沖縄、終戦記念日……。 年々、戦争が遠くなっていくのか近くなっているのか分からなくなる。 気候変動の猛暑の中、高校球児のひたむきさに特攻兵の自己犠牲を重ねてしまい、甲子園を無邪気に楽しむ事ができない。終戦記念日、靖国神社に集うグロテスクなコスプレ。沖縄に甘え押し付け続けている私の暮らし……。 そんな中、金曜ロードショーで「天空の城ラピュタ」が放映しており、久しぶりにチラ見した。普段、仕事以外のアニメ鑑賞は避けがちだったので、どこ

        • 2021年に公開した映画で印象深かったもの

          今年鑑賞した映画で個人的に印象深かったものを書き留めました。 学生時代は年間400本など観ていたのですが徐々に減っていき、今は100本もいかなくなってしまいました。悔。 ランキングはつけず、まず上位21本。その他良かったもの数本、番外編的に追加で何本かを。 まず、上位21本。 『スワロウ』 2021年の1本目でした。これが大当たり。心理サスペンスのように始めておきながら後半への物語展開、メッセージ性が出てきてグイグイ引き込まれます。映画2本分の面白さ。ポスターなどから判

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        アニメ演出講座がひと段落…

          極私的ドキュメンタリー作品選

          BRUTUS(ブルータス) 2021/12月号はドキュメンタリーの特集。久しぶりに雑誌を買いました。 意外に思われるのですが、私はドキュメンタリー映画が大好き。もちろん、映画(映像作品)は全般的に好きなのですが特にドキュメンタリーは大好き。 作劇では生まれない偶然のドラマ、本物のリアクション、意図的でないカメラワーク、全てに魅力を感じます。 自分がアニメの演出をしている事に無理矢理こじつけて言えば、アニメは全てが意識的であるのに対し、ドキュメンタリーは全く逆だから面白いなと思

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          極私的ドキュメンタリー作品選

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          a day in my life

          【あるアニメ演出家の一日】  ふりだし。朝十時にスタジオに行き、絵コンテを描いたり原画チェックしたりラッシュを観たり、その隙間に打ち合わせをして口論して仲裁して、飯を食うチャンスを逃したまま深夜に帰宅し布団に埋没、以上!  ひと息で言い終えてしまった。これがアニメ監督としての『わたしの一日』です。少ない睡眠時間=忙しい=売れっ子=偉い、そんな神輿で酔えている瞬間もある。自作を動かしている時だけね。今回は充電中のダラシない『わたしの一日』を書かせて貰おうと思います。余暇にこそ

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          『エンピツ戦記』(舘野仁美著、平林享子構成)の書評

          【職場を生き抜く女性戦士】 エンタメ業界の中でもアニメーション業界ほど実体が見えない世界もない。低賃金のブラック業界などと噂される一方で、映画興行ランキングの上位にはアニメが入り、業界を夢見る若者も後を絶たない。本書は、スタジオジブリに嫁ぎ、「動画チェック」という役職を27年間務めたアニメーター、舘野仁美さんによる語り下ろしだ。  「となりのトトロ」から「思い出のマーニー」まで各作品のこぼれ話や、鈴木敏夫プロデューサーの逸話、後進アニメーターたちへの教育法、宮崎駿、高畑勲両監

          『エンピツ戦記』(舘野仁美著、平林享子構成)の書評

          『映画を撮りながら考えたこと』(是枝裕和著)の書評

          【自問自答こそが創作の源泉】  最近、『対話』という言葉をよく耳にする。一方で『不寛容』『離脱』なんて言葉も目にする。「見事、対話に成功!」なんて日は来るのだろうか。そんなことをこの本を読んで考えた。  本書は映画監督、是枝裕和さんの著作である。新作映画のメイキング本でも映画評論の本でもない。愚直なまでに撮りながら考えたことが記されている。創作上の自問自答とでも言おうか。それがめっぽう面白い。  業界のムードになじめず、理想と現実に引き裂かれた青春期のエピソード。歴史が語り尽

          『映画を撮りながら考えたこと』(是枝裕和著)の書評

          【そろそろ、アニメ演出家は消滅するのかもしれない】

          まず、アニメには「演出家」がという職分があります。 「監督」ではなく「演出家」。 シリーズアニメで、各話数での監督のような存在です。 「監督」は全話数を大きく管理し、「演出家」は(監督の下で)1話数単位で作品を管理する。 例えば、「1話と5話と10話の担当演出です」なんて言ったりする。 監督と演出が大きく違うのは、作品の根幹に関わる部分での決定権は演出家にはないという事。 例えば、シナリオの決定権、キャラクターデザインや設定デザインの決定権、声優さんキャスティング・劇伴発注な

          【そろそろ、アニメ演出家は消滅するのかもしれない】