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健康的な食生活を送れる人の脳の秘密。意志力に頼らないダイエットの方法

日本を含む世界中で、世界中で肥満が深刻な問題となっています。世界保健機関(WHO)の予測によると、2025年までに世界の成人人口の18%以上が肥満になるとされています。この数字が示すのは、多くの人々が健康的な食生活を維持することに苦戦しているという現実です。

肥満は単なる見た目の問題ではありません。心臓病、糖尿病、ある種のがんなど、さまざまな健康リスクを高めます。

なぜこれほど多くの人が健康的な食生活を送ることに困難を感じるのでしょうか? 最近発表された面白い研究とともに、脳の観点からこの謎を紐解いてみましょう。

脳科学が解き明かす食事の自己コントロール

これまで、健康的な食生活を送る能力は主に「意志力」や「自制心」の問題だと考えられてきました。しかし、この考え方には限界があります。なぜなら、意志力だけで長期的な行動変容を維持することは極めて困難だからです。

最新の脳科学研究は、この問題に新たな光を当てています。特に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)という技術の発展が、食事の選択時に脳内で何が起こっているのかを詳細に観察することを可能にしました。fMRIは、脳の活動を血流の変化を通じて観察する方法です。

さらに、今回紹介する研究では脳のネットワークを「勾配 (Gradients)」をもとに分析するという方法が用いられました。

※ここからの解説はサラッと読み進めていただければ大丈夫です!

どういうことかというと、脳のさまざまな処理を勾配=山の斜面のように緩やかに変化していく様子から分析するわけです。

例えば、単純な情報処理から複雑な情報処理まで、視覚情報処理から運動情報処理まで、といった具合に脳の機能を段階的な変化(勾配)として捉えるといった感じですね。この方法を使うことで、特定の脳領域だけでなく、脳全体のネットワークとしての働きを理解することができます。

また、個人間の脳の機能的な違いや、異なる状況下での脳の働き方の変化の分析も、勾配として表現することができます。勾配的な分析は、従来の脳領域ごとの活動を見る方法に比べ、脳全体の協調的な働きをより包括的に理解できます。

効率的な脳の使い方が鍵?

実際に2024年に行われたこの研究では、興味深い発見がありました。健康的な食生活を上手く維持できる「自己コントロールの成功者」には、特徴的な脳の使い方があることが分かったのです。

研究は123人の参加者を対象に、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて、食品選択時の脳活動を観察しました。

参加者は2つの条件下で食品を選択しました:

  1. 普通に食品を選択

  2. 健康に焦点を当てて食品を選択

まず、普通に食事を選択した時と健康を意識して食事を選択した時で、脳の活動パターンの変化が比較的少ないことが分かりました。言い換えれば、被験者らは健康を意識する・しないにかかわらず、似たような脳の使い方をしていたのです。

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