漫画原作「ヒクイドリが帰ってくる」前編

①森林
森林。1匹のヒクイドリがいる。
N 「ヒクイドリ。熱帯雨林に生息する大型の鳥類」
ヒクイドリの顔のアップ。
N 「一目見ると、物静かな、大人しそうな鳥である」
もう1匹のヒクイドリが登場。
N 「だが、一度怒らせれば、手が付けられない」
体当たりで激突して、ヒクイドリ同士の戦闘。激突する2匹のヒクイドリ。
N 「ナイフの様な鉤爪は、人や動物をも殺傷できる威力を持つ」
ヒクイドリの鉤爪のアップ。もう一匹のヒクイドリに対して、キックを炸裂させる。
N 「ギネスブックにも、『世界で一番危険な鳥』として、名の知られている恐るべき鳥である」
地面に倒れるもう一匹のヒクイドリ。相手を見下ろすヒクイドリ。
N 「あの人も、ヒクイドリの様な人だった」
ヒクイドリの顔のアップ。

②NOTE駅・駅舎
『NOTE駅』と書かれた古びた駅舎。

③NOTE駅・改札
改札。改札から出て来る青年佐々琥太郎(さっさこたろう)。背が高く、カージェットモヒカンの髪型、デニムオンデニムを着用して、ボストンバッグを持っている寡黙で、物静かな印象の琥太郎。
琥太郎「此処に来るのも、久しぶりだな」
駅の前の住宅や商店を見る。
颯介「ん? 」
歩きながら、琥太郎を見る酒井颯介(さかいそうすけ)。マッシュカットの髪型でブレザーの制服を着ている大人しそうな印象の颯介。
結菜「颯介兄ちゃん、何やってるの? 私、行くよ」
先に歩いている妹の酒井結菜(さかいゆいな)ミディアムの髪型、ブレザーの制服を着て、如何にも明るそうな結菜。

④公園
公園。ジャングルジムやブランコがある。
琥太郎が居る。ボストンバッグをベンチに置いている。
琥太郎「此処に来るのも懐かしいな」
周囲を見渡す。
デニムの上着を脱ぐ。
両手を構える琥太郎。
鋭い眼光になる琥太郎。
高速で、シャドーボクシングを開始。
琥太郎が、真っ直ぐ、一点を見つめて、素早く、左右のパンチを繰り出す。
高速で、シャドーボクシングのパンチを放ち続ける琥太郎。
子供「すげぇ・・・」
その光景を見ていた子供達の一人が言う。
琥太郎「!? 」
子供に気付く琥太郎。
琥太郎「お前等! あまり、俺の真似をするんじゃないぞ」
子供達に向かって、笑う琥太郎。

➄歩行路
歩行路。公園を後にした琥太郎が歩行。
数名の柄の悪い不良達と擦違いで歩く。
琥太郎「どの町にも、不良はいるな」
不良達の後ろ姿を見る。

⑥市立NOTE小学校・校門と校舎
校門。『市立NOTE小学校』と書かれたプレート(『市立』の前の文字は、隠して見せず)。後ろには、校舎がある。
校門の前に、琥太郎が立っている。
琥太郎「学校、変わってないな・・・」

⑦市立NOTE小学校・校庭(回想)
脳裏に、琥太郎の子供時代の琥太郎が過る。校庭で、同級生達と遊ぶ子供時代の琥太郎。

⑧市立NOTE小学校・校門と校舎
校門。
声 「琥太郎! 」
琥太郎「? 」
声の方向に振り向く。蜂屋肇(はちやはじめ)が目の前に登場。白髪交じりで、ベストを着た熟年の肇。
琥太郎「お巡りさん」
駆け寄る、琥太郎。
肇 「俺は、もう定年退職して、民間人の蜂屋肇だ! 今は、昔の仲間達とワイワイと仲良くやってる」
笑顔の肇。
肇 「お前こそ、今何をやっているんだ? 」
琥太郎「東京で、バウンサーの仕事しています」
畏まって言う。
肇 「お前がか、意外だなあ」
腕組みして言う。
琥太郎「この町も、変わってないですね」
校舎を見て言う。
肇 「否、変わったよ」
表情を変えて言う。
琥太郎「!? 」
驚く。
肇 「東京で、勢力争いに負けて流れ着いた不良集団が、此処の不良と結束して、一大勢力になって、暴れ回ってる」
真剣に聞く琥太郎。
琥太郎「警察は? 」
肇 「不良共が言う事を聞かないと言うか、強すぎて手が出せないでいるんだ」
肇も校舎を見ながら言う。
琥太郎「そうだったんですか・・・」
下を見て言う。
肇 「お前も、この町に居る時は、不良共には、手を出さない方が良い。その方が幸せだ」
琥太郎「有難うございます。肇さん、分かりました」
一礼する。
肇 「よせよ! まさか、お前に礼を言われるとはな」
苦笑いをする。
琥太郎「俺にとっての、お巡りさんは貴方ですから」
笑顔を見せる。

⑨病院跡・建物
『NOTE市立病院』と書かれた建物。周囲には、薬局跡や無人家が隣接。

⑩病院跡・ロビー
ロビー。受付や待合室の長椅子、古びた植物やテレビやポスターがある。柄の悪い不良達が長椅子に座ったり、寛いでいる。

⑪病院跡・会議室
会議室。縦長の長机に座っている不良達。
長机の奥の高級な椅子に座っているリーダー。短く刈り込んだ髪型で、眼つきが鋭く、カジュアルーツを着用しているリーダー。側近の不良の坊主頭のストーン、長髪のロング、ニット帽のシザース達が、前に座っている。
リーダー「状況を説明しろ」
無表情で言う。
ストーン「ハイ、リーダー。A地区は、部下達が、完全に掌握しました」
立ち上がり、報告。
リーダー「良かろう」
立ち上がるロング。
ロング「B地区は、敵対する不良達を完全に鎮圧しました」
リーダー「地区の掌握まで、あと一歩だな」
ロングを冷酷な目で見る。
シザースも、立ち上がる。
シザース「C地区は、異常なく、目標のノルマを達成しました」
リーダー「よくやった。ストーンとロングよ、シザースを見習え」
ストーン・ロング「ハイ! 」
直立不動で返答。
リーダー「それにつけても、D地区が陥落出来ないでいるのは何故だ? 」
配下の3人を見て言う。
シザース「抵抗勢力が手ごわく・・・」
リーダー「言い訳など必要ない」
冷酷な目で言う。
リーダー「今すぐ、D地区が落ちる様に手下達に言え」 
手を組んで言う。
シザース「畏まりました! 」
慌てて言う。
リーダー「『収益』も忘れるなと言っておけ」
冷酷な表情。

⑫歩行路
歩行路。車道、白線、電信柱、路側帯がある。
帰宅途中の颯介。
不良1「よお、兄ちゃん! 」
先程の柄の悪い不良達が、颯介の前に立塞がる。
颯介「アッ!? 」
不良1「兄ちゃん、財布の金くれねえか? 」
不良2「持ってんだろ! 」
颯介に近付いて言う。
颯介「お金はありません」
断る。
琥太郎「? 」
颯介と不良達のやり取りを、遠く方向で発見。
不良1「有り金くれねえか! 」 
颯介の制服の襟を掴む。
颯介「無いです! 」
キッパリと断る。
不良2「ノロマが達成しないと、俺ら大変なんだよ! 」
睨む不良2のアップ。
不良3「口で分からないなら! 」
拳を上げる。
声 「彼を離せ! 」
不良達「!? 」
声の方向に振り向く。
琥太郎が現れて、立塞がる。
琥太郎「嫌がっているだろ。彼から離れろ」
冷静な表情。
不良1「誰だ! 手前? 」
琥太郎「名乗る程の者ではない」
不良2「此処を、俺達の縄張りだと思って言ってるのか!? 」
琥太郎「何時から、そう言う事になった? 」
琥太郎達のやり取りの隙に、不良から離れ、琥太郎の側に移動する颯介。
不良3「上等だ! 皆此奴をやっちまえ」
構える不良達。
琥太郎「離れていろ」
颯介「ハイ」
その場から、離れる。
何も言わず、構える琥太郎。
不良4「オリャァ! 」
走って、殴り掛る不良4。
琥太郎、攻撃を回避。
琥太郎、不良4にジャブを打つ。ジャブが直撃して、倒れる不良4。
不良5「この野郎! 」
不良5が攻撃に来る。
琥太郎、不良5の懐に飛び込む。
不良5の足に、琥太郎がローキックを蹴る、体勢を崩した不良5の腹部にボディーを打つ。
ボディーが直撃して、倒れる不良5。
不良3「テメェー! 」
続いて、不良3が来る。
不良3、素早くパンチの連打を繰り出す。
しかし、琥太郎が左右に動いて、素早く回避。
不良3に、琥太郎がフックを打つ。
フックが直撃して、倒れる不良3。
不良2「ふざけんな! 」
琥太郎に向かって、突進してタックルを仕掛ける不良3。
タックルを素早く回避する琥太郎。
琥太郎、不良2の腹部目掛けて、ボディーアッパーを打つ。
ボディーアッパーが直撃して、倒れる不良2。
不良1「畜生! 」
棒を拾って来た不良1が、棒で振り翳して琥太郎を攻撃する。
琥太郎「フッ! 」
後ろに回避して、不良1の攻撃を回避。
琥太郎、不良1に接近。
不良1の顔を目掛けて、ストレートを打つ。
ストレートが直撃して、倒れる不良1。
颯介「有難うございます」
琥太郎に駆け寄って、礼を言う。
琥太郎「急いで、此処から離れるぞ」
と言って、急いで、この場から離脱。
颯介「自己紹介忘れてました。僕、酒井颯真と言います」
走りながら、自己紹介を言う。
琥太郎「俺は、佐々琥太郎だ。昔此処に住んでた」
走る琥太郎の横顔。
颯介「さっきの喧嘩見ましたけど、琥太郎さんは強いんですね」
琥太郎「ボクシングとレスリングを少々やっていた。それに、今は強くないと出来ない仕事をやっている」

⑬公園
公園。
琥太郎と颯介がいる。
琥太郎「悪い事は言わん。今度、通学する時は、さっきの道を通るな」
颯介を見て言う。
颯介「はい! 」
頷く。
琥太郎「この町も、平和な町ではなくなったな」
横を向いて言う。
結菜「お兄ちゃん! 」
公園に結菜が現る。
颯介「結菜、どうした? 」
その場で、息を切らす結菜。
結菜「陽葵(ひまり)が、陽葵が大変なの! 」
必死の表情で訴える。

⑭公園・ベンチ
ベンチに腰掛ける颯介と結菜。脇で琥太郎が、腕組して立っている。
颯介「何があった? 」

⑮回想・町の中
回想。清楚な三つ編みの髪型で、ブレザーの制服を着た少女の陽葵が複数の不良に絡まれている。それを偶然発見する結菜。
迷惑そうな表情の陽葵。
N 「友達の陽葵が、町の不良達から、遊ばないかと誘われたんだけど、陽葵断ったの。そしたら・・・」
不良の一人が、陽葵の腕を掴む。
N 「陽葵を、強引に捕まえて、自分達のアジトに連れ去ったの」
不良達に連れ去られる陽葵。結菜が、間に入ろうとするが、不良達が遠くに行ってしまう。

⑯公園・ベンチ
公園。
琥太郎「何? 」
早く反応。

⑰病院跡・診療室
診療室。机や椅子、掲示板、人体のポスターがある。其処に、陽葵が座っている。
N 「流石に、不良達のアジトだと、手が出せないわ」
下を向き、暗い表情の陽葵。

⑱公園・ベンチ
公園。
颯介「アジトに連れていかれたら、もう遊び相手処じゃない! 」
必死の表情。
琥太郎「よし! 」
上を向き、何か思いつく。
颯介・結菜「!? 」
驚く。
琥太郎「手伝ってくれ! 彼女を助けに行く! 」

(後編に続く)