新人ライターが原稿を推敲する際のポイント!文章の癖を見直そう[Part.2]
原稿を最終チェックをする。しかし、自分で推敲するのはなんて難しいのだろう。文章のねじれも、文脈崩れも、意味が伝わらない文章も、なぜか自分では気づけないことが多い。
思い込みだったり、想像力の過不足であったり、自己完結した文章とか。第三者が読んで、何かおかしいぞ?とフィードバックをもらい、初めて自分の文章の癖に気づける。だから、編集者の存在はとても重要だと感じてます。
2015年から沖縄で細々とライター講座を開催してきました。
最初は知人を対象に、少しずつ外部から参加者を募り、希望者が増えて開催に踏み切ったり、内容をグレードアップして臨んでいます。毎回共通しているのは「実際の仕事に沿って、実践を積む」ことです。
Webメディアで記事を公開したり、自主企画でアポ取り・取材をしたり、初めてカメラに触り自分で撮影してもらうなど【実践を積むこと】にこだわってきました。そして原稿が上がってきたら、編集をガッツリ入れる。
それを参加者が修正して再提出し、再び編集を加えてもう一度修正してもらう。ライターにとっては普遍的な流れですが、ライター講座で編集→修正を繰り返すうちに、ふと気づきました。
それは一定数の参加者に、似たような傾向が見られたのです。
Webに接する頻度が高い人は無意識にWeb記事の構成を理解していて、本を読む人なら文章化や構成力にその経験が滲み出て、文章を書く機会が多い人だと情報をまとめる力が整っていたりします。
そこには強みが眠っていて、また弱点も顕になる。2ヶ月間のライター講座で得意不得意が浮き彫りになり、それは文章にも表れるんですね。
例えば、Web記事を見慣れてない方は、「英数字の一部が全角」「ある記号の全角・半角が不統一」「改行の位置がおかしい」「写真の比率がバラバラ」など、視覚的な課題が出てきます。
原稿の執筆に慣れてない方は、「!の多用」「固有名詞の不統一」「漢字の誤変換」「言葉の重複/語尾の重複」「ひらがなに開くもの→漢字のまま」「必要な位置に読点(、)がない」あたりでしょうか。根本的な文章構成が課題となります。
これは"習慣化されてるか"に尽きると思っていて、誰でも慣れれば覚えていくし、数をこなせば記憶に蓄積されます。記憶に自信がない方は、よく間違える内容を「自分用マニュアル」にまとめて、推敲時に毎回チェックすれば改善できると話してます。
独自のマニュアルは、いつか編集者として活動するときにも役立ちますからね。ライター講座に参加する方、ライターとして活動を始めた方に向けて、原稿を推敲するポイントをまとめてみました。
*一部、個人的な見解も含まれるため、その点はご了承ください。
1. 英数字は、半角 or 全角!?
新聞や一部の雑誌は、文字列が「縦書き」です。そのため、1文字分の横幅を使う「全角表記」が一般的。元原稿をそのままWebに流用するため、新聞社では横書きのWeb記事でも「全角表記」とし、ルールを統一してると思われます。
Webメディアの場合は、英数字を「半角表記」とする媒体が多いです。理由はいくつか諸説あるものの、視認性に富むからと考えられます。
余白が多いと視認性が悪く感じませんか。さらに細かくは「数字:1桁は全角、2桁以上は半角」というメディアもありました。
記号は、全角 or 半角か。媒体によって独自の「表記ルール」を定めていたり、ルールを決めず編集者の裁量に委ねている媒体もあります。
表記ルールが存在しなければ、自分で基準を設けておきましょう。
2. 何を基準に考えればいいのか
Webメディア業界で有名なのが、共同通信社の「記者ハンドブック」です。東京の新聞社やWebメディア関係者も参考にしてる人が多いと聞いて、2016年に購入しました。
最新版は、緑色の第14版(2022年3月発売)
●主には、漢字・ひらがなの書き分け
●日時・数字の書き方
●地名・人名・年齢の書き方
●政治関連・予備知識
●カタカナ・外来語
●誤りやすい語句
普通に読んでも面白い本ですね。国語辞典とは異なり、すべての言葉が網羅されたものではなく、間違いやすい言葉を中心にまとめられた用語集です。
Webメディア界隈では有名な本なので、ベテランライター・編集者の方は、ほとんどお持ちではないでしょうかね。
3. 漢字→ひらがなに開く
これは漢字か。それともひらがな? 迷ったときは、記者ハンドブックを開く。未だに活躍している優れものです。
編集時によく見かける迷いポイントを「記者ハンドブック」に則ってまとめました。以下、チェックすると自分の文章の癖を発見できますよ。
●こと or 事
こと:⭕〜すること ❌〜する事
事:主に熟語(仕事、時事、事情…)
●という or と言う
と言う:(人が)〜と言った。
という:上記以外は、ほぼひらがなに開く
⭕(〜した)という ❌(〜した)と言う
⭕〜といわれている ❌〜と言われている
⭕あっという間 ❌あっと言う間
⭕とはいえ ❌とは言え
●とき or 時/あと or 後
⭕〜したとき 🔺〜した時(どちらも可)
⭕その後 ⭕そのあと
⭕あとから ❌後から
●できる(動詞・副詞) or 出来る(名詞形)
⭕(〜することが)できる
❌(〜することが)出来る
⭕出来上がり ⭕出来たて
●たち or 達
⭕(〜な)人たち ❌(〜な)人達
⭕友人たち ❌友人達 ⭕友達→のみ例外(ややこしいですね…)
●ひとつ/1つ/一つ
基本は「一つ」と記載あり。但し、意見が別れるところ。
⭕一つ ⭕一つ一つ
⭕もうひとつ
●ひとり/一人/1人/独り
独りと一人は内容によって使い分け。
迷う場合は「一人」を使う⇒ 使い分けが難しい…
⭕1人(人数を表す場合)
⭕一人旅 ⭕一人息子(名詞・慣用句など)
⭕独り言 ⭕独り立ち ⭕独り占め
●〜のうち or 内(名詞)
⭕(〜する)うちに ❌(〜する)内に〜
⭕〜のうち ❌〜の内
⭕内輪 ⭕内に秘める
●頃(主に名詞) or ころ(特定の日時・季節)
頃:⭕食べ頃 ⭕高校生の頃
ころ:⭕8時ごろ ⭕8月ごろ ⭕夏ごろ
●来る or くる
⭕行ってくる ❌行って来る
[心地いい 心地よい 心地良い]
このあたり迷った経験、ありませんか?
記者ハンドブックの見解によると「心地よい」になるようです。
4. 同じ読み、似てるけど意味が異なる漢字
以下の漢字たち。意味の違いを説明できますか。私は正直に言うと、ニホンゴムズカシイネ…!です。うっかり入力ミス…… ありがちですよね。
記者ハンドブックを読み進めたら、出てくる出てくる。よく使うけれど間違いやすい漢字を一部ピックアップしました。
<動詞・形容詞>
●あたためる:温める 暖める
●あやまる:謝る 誤る
●あらい:荒い 粗い
●あらわす:表す 現す
●いかす:活かす ⇒ 生かす
●うつす:映す 写す
●おさめる:収める 納める 治める
●おりる:降りる 下りる
●かたい:硬い 固い 堅い
●きく:聞く 聴く 訊く
●さいご:最後 最期
●さす:差す 指す 刺す 挿す 射す
●しめる:閉める 締める 〆る
●そう:沿う 添う
●よい:良い 善い よい
<次は名詞です>
●きょうそう:競争 競走 競漕
●けっさい:決済 決裁
●けんしん:検診 健診
●こうえん:公演 講演
●こうぎょう:興行 興業
●こうてい:工程 行程 航程
●こうどく:購読 講読
●こうない:構内 校内
●じたい:自体 事態
●じてん:辞典 事典 字典
●じゅうしょう:重症 重傷
●しゅうそく:収束 終息
●じゅしょう:受賞 授賞 受章 授章
●しょくりょう:食料 食糧
●しりょう:資料 史料
●しれい:司令 指令
●しわけ:仕分け 仕訳
●しんどう:振動 震動
●せいさく:制作 製作
●せいさん:精算 清算
●せいてん:晴天 青天
●せんこう:先行 先攻
●せんにん:専任 選任 先任
●そっこう:
即行(すぐ行う)速攻(素早い攻め)
即効(すぐ効く)速効(薬学 / 歯学 / 農学)
これらの言葉を使い分けできますか。ニホンゴムズカシイネー
ととと……。キリがないので、この続きは「記者ハンドブック」で確認してくださいね。Amazonで販売されてますよー(緑の第14版…!)
「辛い」と書いてツライ。カライとも読む。ニホンゴムズカシイネー
5. 最後に校正チェック!間違いをどうやって見つける?
目が慣れないうちは、意外と間違いを発見できない。目視だけでは限界があるため、デジタルツールも使用します。
●Word/Googleドキュメント
文字揺れ、言葉の重複、簡単な誤字脱字など下線を引いて教えてくれます。
●AI文章校正ツール
100%完璧ではないにしろ、正しい「てにをは」や「ら抜き言葉」、誤字脱字や誤変換、文字揺れなど、Word/Googleドキュメントより高性能です。続々と新しいツールが登場し、一度自分で触ってから選びましょう。
【続いて実技編です】
❶ 検索機能をフル活用
まず、固有名詞をチェック。と、その前段階で固有名詞はコピペするのが基本だと捉えましょう。企業名・店名・著名人・作品名… あらゆる固有名詞は資料や公式サイトなど、正規の場所からコピー&ぺーストです。
💡ポイント1 「書式までペーストしちゃダメ」
ペーストする際、ショートカットキーを使います。
Mac : Command + Shift + V
Win : Ctrl + Shift + V
テキストエディターに沿った書式でペーストできます。
❷英数字の半角・全角
簡単には、検索機能を使ってチェックできます。特に数字は、全角数字を1個ずつ検索すれば確認完了。置換機能も便利だけれど、修正不要な箇所まで置換される恐れがあり、慎重に行いましょう。
💡ポイント2 「検索のショートカットキー」
Mac : Command + F
Win : Ctrl + F
💡ポイント3 「置換のショートカットキー」
Mac : Command + Shift + H
Win : Ctrl + H
❸AI文章校正ツール
無料で使えるものは精度がやや低く、でも何もしないよりは校正ツールを通しましょう。但し、機密情報や個人情報が含まれた社外に出回らない原稿には注意が必要です。入力した文章・言葉を吸い取り、AI技術に活用する校正ツールも存在します。利用規約を確認してから使ってください。
❹細かい部分は「目視」で確認する
編集者の仕事が存在するように、100%思い通りに推敲してくれるツールは残念ながらありません。最後は人の目、必ず目視で確認します。繊細なテーマであればなおのこと、人の手によって丁寧に言葉を重ねることが大切。それはライターの個性としても輝きます。
・時間を空けてチェックする
脳や目が疲労した煮詰まった状態よりは、リフレッシュして脳を切り替えると、驚くほど間違いに気づけます。午前中に書くなら夕方チェック。夕方書いたなら翌朝チェックする。お風呂上がりにリラックスモードで推敲するのもイイですね。時間を空けるだけ…!これ効果絶大ですよ。
・プリントアウトして紙面でチェックする
紙に印字すると、間違いに気づきやすいと聞きます。マーカーやペンで色付けできメモを残せて、今後役立つ資料にも成り得る。アナログな作業だけに、手作業の重みが脳を刺激するか。これも脳や視点の切り替えですね。
・自分の「文章の癖」を把握する
「こと」「という」「あり/ある/あります」が多いねー。フィードバックで指摘された自分の「文章の癖」をメモっておき、検索機能や校正ツールでチェック。語尾においては、断定調なら「〜だ」「である」「という」が多発傾向にあり、です・ます調なら文字どおり「です」「ます」が多用される。これを一部でも回避できれば、言葉の重複による"文章のマンネリ化"を防げますよね。
・そして、目を慣れさせること
自分の経験からお伝えすると、Web制作会社に在籍中、デザイン1pxのズレをチェックしていた経験から、数字の全角・半角は一瞬で見分けられるんですね。視認的な誤字脱字、言葉の重複はすぐに気づける「目がいい」体質になっていて推敲時に役立ってます。慣れと経験の積み上げなんでしょうね。
つまり、文章を書く量を増やすしかない。文章を書く→推敲する or フィードバックをもらう。この繰り返しで「いい目」が鍛えられるのだと思います。
3年半前に書いたnoteが未だに読まれていて、ライター初心者が【間違いやすい文章の癖/文章編】をまとめてます。よかったら、こちらもどうぞ。
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