天真爛漫な彼女とちょっと根暗な僕 4
第四話
杏という名の僕の幼馴染は学年一の人気者だ。だけど毎日のように揶揄われている僕にとっては人気者というよりは天敵に近い存在になる。
とはいえずっと一緒に歩んできた幼馴染だから邪険にもできない。
もう少し大人しくしてくれると僕としてはとっても有り難いんだけどなぁ。
ある日の教室
隣の席の松村さんが『教科書を忘れてしまったから見せてほしい』という。高校生にもなって何やってんだと思うけれど、そんなことは口にすることもなく、特に断る理由もないので机を並べ真ん中に教科書を置く。
席が近くなったからか、松村さんからだと思うんだけどいい香りがする。少し近付いただけなのに香りなどには疎い僕でも分かるくらいなのだから、普段から気を遣ってるんだろうなと思う。女の子って大変だね。
松村さんは杏の友達だけど、普段僕とあまり話すことはない。それなのに普段より椅子の距離が近い松村さんは積極的に話しかけてくる。教科書を忘れたのは言い訳で僕と話すことが目的じゃないのかと思うほどだ。
「松村さん、授業中だよ」
「誰も聞いてないからいいじゃない」
いやいや、授業中だってば。
「それでね竹本君」
「はい」
「梨香と香織に聞いたんだけど、おっぱいの専門家なんだって?」
「なんですかそれ?」
「梨香が竹本君におっぱいを見られたようなもんだって熱弁してたわよ」
「誤解ですよ。それに後ろから抱きつかれたのは僕の方で、言っちゃ悪いけど被害者は僕の方だと思うんですよね」
「それでも梨香の胸を正確にいい当てたそうじゃない」
「偶然ですよ。杏との違いを口にしただけで」
「杏チャンが基準なんだ」
「長年慣れ親しんでますから」
「見たり触ったり?」
「いえ、背中で感じるだけです」
「意味分かんないね」
「そうでしょうね」
「竹本君、改めて聞くけど杏チャンは彼女なの?」
「あいつと付き合ってるように見えるんですか? 松村さんも知ってると思うんだけど、あいつは幼馴染です」
「彼女はいないの?」
「いたらいいんですけどね」
「じゃあ私と付き合わない?」
そう言って松村さんは身を寄せ僕の太ももに手を置いた。
「松村さん近いです。それに手を引っ込めてください」
「いいじゃない、それより返事は?」
「そこ、授業に専念してくれると助かるんだがな、二人で何話してるんだ?」
「先生すみません、不純異性交友をしようって話してました」
「それは穏やかじゃないな、後で職員室来るか?」
「先生誤解です。松村さんが教科書を忘れたそうなので見せていただけです」
「そりゃそうだろうな。白昼堂々、それも授業中に不純異性交友をしようなどと話すとは俄に信じられんしな」
「雑談が過ぎたことはお詫びします」
「竹本がそう言うのなら今回は見逃そう。松村、授業が終わるまで大人しくしてろ」
「先生」
「何だ瀬戸」
「このままだと芙美はまた喋ると思いますよ」
「どうしてだ?」
「普段あまり話したことのない男女が席を引っ付けてるんですよ。この時を利用しない手はないでしょ?」
「なるほど、ではどうする?」
「芙美は私の席へ、私が芙美の席へ移動します。芙美は私の教科書で勉学に勤しみ、私とカッチン、いえ竹本君は幼馴染なので今更長々と話すこともないですし勉強に集中できるかと」
「杏チャンが竹本君の隣に行きたいだけじゃないの?」
「例えそうだとしても芙美が隣にいるよりはマシでしょ」
「先生は瀬戸の案に乗ろう、さっさと席を変わって静かにしてくれると助かる。さあ授業続けるぞ」
隣に移動してきた杏は何故かニコニコしている。逆に移動させられた松村さんは少しふくれっ面だ。少し感触が残ってるけど太ももにあった松村さんの手の平は暖かかったなぁ。
それにしても杏の友達にはロクなのがいない。
後ろから抱きついてくる吉川さん、前から抱きつこうとする安宅さん、僕のことをおっぱいの専門家と言い触らす吉川さん、松村さんは僕と付き合いたいなんて……。
「エ”~ッ!!」
「どうした竹本~。やっぱりお前あとで職員室な」
杏だけじゃなく、その友達にも揶揄われてる~。
つづく
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