ドメスティックワールド 第六話 義兄
旧帝ハラルドを退けた真央は、そのまま砂漠を進み、魔塔に潜入した。その前に魔塔の管理人アンシュタインが立ち塞がる。
自信満々に炎の魔力を使って真央を攻撃するアンシュタインだが、真央には全く通用せず、逆に真央によって辱めをうけることとなる。
「抵抗する気力ももう無いだろう。正直に魔塔の塔主の居場所を言うんだ」
「それはっなりませぬ。言えませぬ」
「よいではないか。よいではないか」
真央の責めの前に追い詰められていくアンシュタイン。ついには人の形を保てなくなり大タコの正体を晒してしまう。
「そこまでっ!」
そんなアンシュタインの窮地を救ったのは小さな少女だった。
「奈央ちゃんか?」
「お久しぶりですお兄様。最後に会ったのは私が3歳のときですから5年前ですか」
「奈央ちゃんがここにいるということは魔塔主はやはり義兄さんなのか」
「それは自分の目で確認されたらいいでしょう。案内します。さあこちらへ」
魔塔の最上階に案内される真央。
そこには一人の男が待っていた。サングラスを外しながら男が真央に声をかける。
「久しぶりだね真央くん。また会えて光栄の至りだ」
「義兄さん!やはり本当に義兄さんなのか!」
「そうだ。私だ。キョーゴだ」
「義兄さん!何故姐さんを置いて消えたんだ!」
「それは違うぞ真央くん。私が消えたのでは無く、美央が私たち親子をこの世界に送り込んだのだ」
「そんな馬鹿な!夫と娘を姐さんがそんな真似するわけないじゃないか!」
「本当よ。父さんと私をこの世界に追放したのはお母さん。お母さんがこの世界に私たちを閉じ込めたの」
奈央が真央に答える。
「嘘だ!姉さんがそんなことするわけない!
なおも信じようとしない真央をキョーゴが一括する。
「嘘ではない!私たち親子をこの世界に追放したのは美央だ!君自身美央にこの世界に送り込まれたんだろう」
キョーゴが容赦なく追い詰めていく。
「それはこの世界をデバッグするために」
真央がなんとか反論するも
「デバッグねえ?あいつの言いそうな嘘だな」
即座にキョーゴが否定する。
「姉さんを侮辱することは許さない」
怒気を孕んだ目でキョーゴを睨みながら真央が吠える。
「たとえ義理の兄であり姉さんの夫であろうと決して許さない!」
「何も知らない人が勝手なこと言わないで!」
そう声をあげたのは奈央だ。
「父さんは真央兄ちゃんの父さんでもあるのよ。そして私たちきょうだいの母親の名は美央!」
「えっ」
「今こそ真実を話そう。私がお前の父だ!」
「嘘だっ!」
「嘘ではない。お前にも本当はわかっていたはずだ。お前は私と美央と子だ。そしてこの奈央の兄でもある。お前が今まで信じてきた家族の記憶は全て美央がその創造神の力で捏造した記憶だ。手をかせ真央。我ら親子が力を合わせれば、この世界を美央に変わって支配することも元の世界に戻るのことも可能となるのだよ」
「いっ嫌だ。僕は嫌だ」
「諦めろ。これがお前の運命だよ」
そのとき落雷が真央に直撃した。魔塔から転落していく真央は咄嗟に羽根を広げて飛び去るのであった。
後に残されたキョーゴと奈央は真央の飛び去った方向を見つめるのであった。
一方、遠く離れた森林の中にある古城の中では美央が一人魔塔の方向を見つめていた。
「ゼウスがクロノスに会った」
「計画通り」
美央がつぶやいた。
つづく。