ドメスティックワールド 第四話 神聖教徒
神聖王国の領内に入った真央一行は最初の町の食堂でこれからの打ち合わせをしていると一行がバルバドスの帝都からの客と察した食堂のエルフの女店主と店員たちが声をかけてきた。
「お客さんたちはバルバドスの帝都ハウプトシュタットから来られたんですか?」
「バルバドスの方にこう言うのはなんですけど最近バルバドスに降臨された破壊神さまってのはゴロツキの親玉だそうで」
「破壊神さまってのはそりゃもう酷いことをなさるそうですね」
カチンときたケンが女店主に声をかける。
「あんたその噂を誰から聞きました?」
「誰というわけではありませんが、みんな言ってることです。創造神様の弟をいいことに横車の押し放題。ちょっとでも楯突こうものなら腕自慢の子分たちが殴るわ蹴るわそりゃもう酷いことをするそうですわ」
身振り手振り加えながら答える女店主。
「これは、前のバルバドス皇帝ハラルドが言いふらしたのでしょうか?」
「いやエルフの代表の妹も怪しい」
口々に言う真央の使徒たち。
「いっそ創造神様にお願いして教皇より声明を出させて誤解を解いてもらっては?」
「この程度のことで姉貴の手を煩わせるわけにはいかない。物笑いのタネになるわ」
真央がぴしゃりと言って話を引き取りつぶやく。
「さてどうしたものか?」
その頃、神聖王国第一枢機卿の屋敷を訪ねる黒衣の司祭がいた。
「第一枢機卿様にはご機嫌うるわしく」
「いやよく参られたバド司祭殿」
「いつもつまらないものですが」
そう言うとバド司祭は第一枢機卿にパンケーキの入った菓子箱を差し出す。
「おおこれはいつも済まないの。山吹色のパンケーキは傷まず腐らず重宝なものじゃからな」
満足そうにニヤついた第一枢機卿が、頭を下げるバド司祭に声をかける。
「ときに司祭殿、此度は残念であったの。連合国がバルバドスを落とした後は貴殿があの国の枢機卿に任命される手はずであったにの」
バド司祭が気色ばんで話す。
「あれは、破壊神様が悪いのです。既に命脈の尽きた国をあのような形で存続させるとは。まして破壊神様の横車でバルバドスの枢機卿になるのがあの破門された自称賢者のサキとかありえません!」
「まあまあ司祭殿、そのあたりのことは余が含んでおくゆえしばらくはおとなしくなされよ。これ以上、下手な噂話を流して神の不興を買うことになっても不味い。折を見て別の国の枢機卿の地位も手当するゆえな」
「心得ております」
だが一部始終は、姿を消して二人を監視していた真央の使徒に見られていた。使徒マミから報告を受けた真央は言った。
「少々懲らしめてやらねばなりませんな。動くべき人に動いてもらいましょう」
翌日、バド司祭の屋敷に第一枢機卿の使者を名乗る人物が親書を届けてきた。そこには第一枢機卿の教会へ来るようにとの文言が書かれていた。すわ一大事と教会にかけつけるバド司祭。
「ただいまかけつけました。第一枢機卿様。火急の要件とは何でござりましょう」
「おお司祭殿よく参られた」
そこにいたのは第一枢機卿ではなく真央だった。顔を見て驚くバド司祭。
「あああああ」
「このたびは結構な噂を振りまいてくれたね。感謝にたえない。だが賄賂はいけないね。僕らを信仰する宗教家の悪行三昧はゆるされないよ」
追い詰められたバド司祭は開き直った。
「黙れ!私を誰だと思ってるんだ!恐れ多くも創造神様の神聖教会で司祭の位を賜り、この中央地区の責任者を務める身だぞ!私は創造神美央様の信徒じゃ!破壊神なんぞの信徒ではないわ!そればかりではない!第一枢機卿様の名を騙り私を呼びだすとはなんたること。神が嘘をついてもよいのか!この事全て教皇様かけあって創造神様にご報告してもらうから心しておられよ!」
言うが早いか司祭が電撃を真央に放つも、真央の前に一人の女性が転移してきて結界を張り電撃を弾き飛ばす。
「さて、それはどうかなバド司祭」
現れた女性がバド司祭に声をかける。その姿を見たバド司祭は絶望的な顔になり声を漏らす。
「教皇様」
司祭が崩れ落ちる。
「タオ教皇。ご足労かけてすまないね。さすがに姉貴の加護を受けているものを一方的に断罪するのは気が引けるのでね」
真央がタオ教皇に話しかける。
「もったいないお言葉。神の呼び出しであればこのタオどんなところでもただちに駆けつけます」
そう言うとタオ教皇はバド司祭のほうを見て言った。
「バド司祭。何か申し開きはあるか?」
「何をおっしゃいます。私は創造神様が不干渉を貫いてこられたこの世界にいきなり干渉を始め命脈尽きたはずの世界平和の敵バルバドスを生きながらえさせた破壊神様の悪行をお諫めしていただけで・・」
バド司祭が必死のいいわけを続ける。
「もう駄目じゃ。諦めよ」
そんな言い訳を続けるバド司祭に教皇の後ろから現れ声をかける男が一人。第一枢機卿のズウだ。
「我らの不正、全て破壊神さまに見抜かれてしまっている。我らは、もはやこれまで。観念せい。所詮神を欺くなぞ無理だったのじゃ」
がっくりと崩れ落ちるバド司祭。
「タオ教皇。バド司祭らの身は姉貴の信徒ゆえ貴殿に任せる。よろしいな」
深々と頭を下げるタオ教皇。
「ところでバド司祭。オレの悪口を誰から聞いた?」
真央がバド司祭を問い詰めた。
「そっそれは」
返答に詰まるバド司祭。
「やはりハラルドか。死の砂漠を生き延びたか」
バドの思考を読んだ真央がつぶやいた。
BS-TBSの水戸黄門第10部見ていてついついこんな話を作ってしまいました。
やっぱり大好き水戸黄門。