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ドメスティックワールド 第三話 転生者狩り

「乾杯!」
和平会議も無事終了し、九カ国講和条約を結んだ真央一行は、バルバドス帝国のクラブで祝賀会を開いていた。バルバドスは過去に何度も禁忌の異世界召喚を行っていただけあって地球の文化、特に日本の文化に毒されているようだった。「破壊神さまは未成年だからアルコールは駄目だと聖典にも書かれているので本日はこんなカクテルを準備しました」出されたのはノンアルコールカクテルの「シンデレラ」だった。不満に思いながらもそれを飲んだ真央は「ん?柑橘は柑橘だがやはり全てを同じに準備はできなかったか。パイナップルの代わりに何が入っているのだ?」
「さあ何でしょう?」バーテンダーがいたずらめいた話し方をする。
「うぬ!この真央を試しおるか!」「これは石地みかんだろ」
「お見事です。さすが破壊神様」
ただの接待なのに気付きながらも悪い気はしない真央であった。
「真央さま。そろそろ席を変えませんか?帝都にはラーメンを出す店があるそうですよ」軽口をきいてきたのは遅れて真央一行に合流した飼い猫の使徒クロである。こいつもメン・イン・ブラックみたいな黒ずくめの格好をしている。
クロによれば、なんでも日本からの転生者の出しているラーメン居酒屋のような店があるのだそうだ。
「面白そうだな。行ってみよう」帝都のダウンタウンに繰り出す一行。街の一角に小綺麗なラーメン割烹田中家の店舗があり行列が出来ている。「真央さまこれは」「そうだなこれは間違いない」「申し訳ありません真央様。そうと知ってればご案内しなかったものを」店に近づくにつれて匂ってくる豚骨の匂いに顔をしかめる一行。
「ほおってはおけないな」そう言うと真央はそのまま店に入りカウンターに座ると「豚骨ラーメン一つ」と注文した。
そしてそれを最終的に確認すると店にいた別の客たちに対して「食べてはならぬ!」「食べたものは吐き出せ!」と大声をあげた。
「なんだこのガキは!」「営業妨害だ!」店員たちが口々に真央を批判する。店員の一人が報告したのだろう。奥の厨房から店主が出てきた。日本からの転生者の有名ラーメン屋の親父田中のはずだが、その転生した姿は金髪碧眼の美青年であった。
「私の芸術的ラーメンにケチをつけるのは誰だ!」
「控えろ!こちらにおわす方を何方と心得るか!恐れ多くも破壊神様なるぞ!」
「黙れ!この際だから言ってやる。オレはこの世界に転生する前は、おまえら姉弟と同じ世界でラーメン屋を経営していたんだ」「たとえ破壊神様であろうが中身は14歳のガキじゃねえか!そんな奴がオレの心血を注いだラーメンにケチをつけるとかありえん!子供舌はお家にとっとと帰りな!」
「真央様に無礼な!」店主の言にいきり立つ真央の従者たち。彼らを押さえながら真央が言った。
「ならば言ってやる。この世界には豚はいない。豚骨は入手不可能。なのにこれは豚骨醤油ラーメン。この意味店主はわかるな?」
店主の顔色が変わった。共犯者である店員たちにも緊張が走る。聡い客たちは真央の言った意味がわかったのだろう。咳き込んだり吐いたり逃げ出したりするものが続出した。
料理人はオークを食材として料理を作っていたのだった。
「何が悪い?オークを食材にする話はよくある話じゃないか!あんたの姉のゲーム会社の製品にもそういう話もあったはずだ!オレはこの世界でトンコツに勝る至高の素材を手に入れ究極のラーメンを作ったのだ!」転生者の店主田中は開き直り手にした包丁を真央に向けて威嚇した。
「他の世界はいざ知らず、この世界においては平時の殺人は犯罪である。この世界において13の種族のヒューマノイドを殺すことは殺人であり、ましてそれを食するなど禁忌もいいところだ。この世界からの所払いを申し渡す。速やかに消滅せよ」
真央は店主に対して宣告した。
「もはやこれまで!お命頂戴いたす!」店主が複数の刃物を手に持って襲いかかるもあっけなくケンに「慮外もの!」として取り押さえられる。
「私と姉貴の清浄なる世界に下品な転生者は不要だ」
真央がそう言って指を鳴らすと料理人は下から消滅していった。最期に残った頭部が「助けてくれ」と言うと同時に完全に消滅した。
「安心しろ。元の世界に戻っただけだ」
「お許しください」「私たちは知らなかったのです」「どうかお慈悲を」
店員たちが土下座しながら懇願する。
「その方たちの裁きはバスバドス帝国に任せる」真央の裁きは下った。
「このものたちを引っ立てい!」騒ぎを聞いて駆けつけてきた役人たちに店員たちを引き渡して真央一行は店を後にした。
それを呆然と見ている他の客たち。その中には賢者サキもいた。普段の王宮での賢者用の粗食に耐えかね、お忍びで話題のラーメンを食しに来ていたのだ。真央の一括を聞いて一口も食することなく済んだのは不幸中の幸いであった。
「そうそう。美央さまから真央さまに伝言があります」クロがそういうと手紙を取り出し真央に渡した。
「これは。どうやら姉貴は私にこの世界のデバッグをやらせるつもりらしいぞ」
そこには「諸国漫遊世直し旅に出ること。まずは賢者サキをバルバドス帝国の枢機卿として神聖王国教皇の裁可をもらってくること」と書かれていた。
「姉貴も無茶言う。戦争を防いだばかりなのに」そう言いながらもバルバドス皇帝ヨハンに旅立ちを告げて帝国を後にする真央一行であった。目指すは創造神美央の名を頂く永世中立の神聖王国ミオである。

破壊神様は未成年だからノンアルコールカクテルのシンデレラで
パイナップルの代わりに糖度の高い石地みかんを使っているのだろう
さすが神様 お見事
使徒ジャックラッセルテリアのラム
いらっしゃいませ
盛り付ける女性店員
ラーメン5つ
少々お待ちください
使徒のジャックラッセルテリアのケンと
同じく使徒のハチワレネコのクロ
使徒ラムと同僚のキジトラのマミ
みなこれを食してはならぬ
うちのラーメンにケチ付けるんですか!
どこのどいつだ!オレが渾身込めたラーメンにケチつける奴は!
どうせ味の野蛮人味覚音痴のこっちの世界の奴だろう
味覚音痴で悪かったな 食さずともわかる
これにはオークが使われている!

だからどうした!オレはこんな世界に送り込まれて必死で自分のラーメンを再現したんだ!
どうせこの世界はお前ら神の作った世界ならオークを豚骨がわりにして何が悪い!
オークを豚代わりの食材にするなんて異世界じゃよくあることじゃねえか!
一口食べてみろ!至高の素材オークを使ったダシとチャーシューは
トンコツをはるかに超える究極のラーメンだぜ!
貴様のような外道を我らの世界に置いてはおけぬ!
この世界からの所払いを申しつけるものとする!
もはやこれまで!
オレはこの世界で究極のラーメンを作るんだ!
お許しください
我らは転生者さまに仕方なく従っていたのです
どうかお許しください
どうかお慈悲を
金髪碧眼の店員は 雇った転生者田中の コンプレックスの証
せっかくのラーメンなのに食べられない
王宮の賢者飯は食えたものじゃないのに
旅立たれるのですね

ということで「ドメスティックワールド」三回目終了です。今回はラーメンの描写に苦労しました。挙げ句、ラーメンを食さないストーリーに変更しました。当初はラーメンを食して気がつく予定でした。また包丁も苦労しました。どうしても剣になったりするので結局手描き修正です。みんな大好き「美味しんぼ」に「ラーメン発見伝」。

描けないわけじゃないけど箸の長さとラーメンの具材がうまくいかない
嫌だ 枢機卿なんかなりたくない
仕事をするのは嫌だ
引きこもって好きな本読んで好きな魔法の研究して
好きなもの食べて生きていきたいよ

ラーメン食えず王宮に戻った後に旅立つ真央に同行を求め土下座するサキ。
サキを枢機卿にするために神聖王国に旅立つことを聞いて錯乱してしまう話にするつもりだったけどカットしました。


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