競争のない世界は、どんな世界なのだろう
いつからだったか、僕は競争が心底嫌いになった。
多分、大学を出て最初に就職したときからだったと思う。
ある通信社に新聞記者として就職し、地方の支局で始まった記者の一年目。
そこはすべてが凄まじい競争の世界だった。
一分、一秒をかけて他社よりも速く情報を伝えることが最大の成果だった。
5分後に発表されることを、5分前に伝えることが特ダネだった。
速く、とにかく速く。
早朝から深夜まで競争に明け暮れた。
深夜も当番があり、自宅に引いたファックスに当局からの情報が送られてきて、寝