超常異能の改変作家 第7話
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まず、最も言わなくてはならないことは、この物語がどんなものなのか、ということだ。
よくある異世界転生ものにしては普通に日本人が複数人出てくるし、なにせ僕は日本人の少年――羅円大公《ラエン・タイコー》に乗り移る形で「転生」を果たしている。
彼の魂は、どこへ行ってしまったのだろうか?
そんな疑問を抱きながら、僕は羅円大公《ラエン・タイコー》として生きていかなければならなくなった。
羅円大公《ラエン・タイコー》の家族である三人の少女たちは、どうやら「転移」してきたらしい(麻音《アサネ》姉ちゃんが前の話で、そう言っていた)。
ということは、だ……どうやら日本人は僕たち家族だけではないらしい。
なにか日本人を集めなければいけない目的でもあるのだろうか?
その答えは「次」で示されるだろう……。
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この物語の舞台はトランピア連合王国――通称「トランピア」。
「ハーティア」「スペーディア」「クローバーリア」「ダイヤモンディア」と呼ばれる四つの国が集まって、つくられた国である。
それぞれの方角はハーティアが西、スペーディアが東、クローバーリアが南、ダイヤモンディアが北である。
この連合王国には、ある問題があった。
いつの間にか毎日のように現れる獣――邪悪獣《ジャークビースト》。
その獣の討伐には「転移者」と「転生者」の能力が必要だった。
それらは主に「日本人」で構成されている。
日本人には、かつて――トランピアだけではなく――あらゆる国を何度も救ってきた伝承があるのだ。
その伝承を元に、あらゆる世界に存在する日本人を「転移」もしくは「転生」をさせて王国を救ってくれるように集めていたのである。
それらを集めて管理するために「日本人」の様式に習って「学校」をつくったのであった。
それは西のハーティアに存在する「ハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》」――通称「異能学院《いのうがくいん》」である。
ハーティアは心の力――要は異能を武器に戦う人間が集う場所で、「転移」や「転生」をすることで異能に開花する日本人を集めることが目的になっている。
もっと言うと「日本人の名前の意味」が影響したり、その人が持つ「属性」が異能に影響を及ぼしたりする場合がある。
ただし、すべては心の力を武器に戦うわけだから、「学校」へ通うことで身体能力を向上させたり、精神を鍛えたりできるわけである。
「転移」「転生」してきた日本人が、いきなり能力にめざめるのは基本的にありえないので、その管理をするためにハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》は存在するのだ。
もし、なにか別の才能が開花してしまった場合は、本人の希望によりハーティアから別の国の学校へ異動希望を出すことができる。
東のスペーディアの学校は騎士として剣の腕を鍛えたり、南のクローバーリアの学校は魔法使いとして魔術の腕を鍛えたり、北のダイヤモンディアの学校は硬貨に関連する知識と硬貨に関連した才能を鍛える……これらのルートへ行くのは、まれではあるが、一応その道はある。
それだけ「転移・転生してきた日本人の才能」をトランピアは欲しているのだ。
多くの日本人は精神に対する葛藤が大きくなりやすい環境にいるため、異世界の住人からしたら「これだけ心が強いのだから、異能に開花できる才能を持ち合わせている」と思っているから、それだけ期待が大きくなりやすいのである。
以上が僕ら日本人がトランピア付近に「転移」と「転生」をしてきた理由である。
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今日は僕たち四人と、ほかの転移者・転生者の入学式だ。
「ハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》」――通称「異能学院《いのうがくいん》」に入学したものは、必ずしも一年生から始めなければいけないというルールはない。
そこを日本式にしなかったのは、あくまで少年・少女の配慮であろう。
たまたま僕と初芽《ハツメ》は今年で十六歳の年に入学できたけど、麻音《アサネ》姉ちゃんと生萌《イクモ》は僕たちの年から、それぞれ二歳ほど離れている。
だけど、麻音《アサネ》姉ちゃんは高校三年生クラスで生萌《イクモ》は中学二年生クラスに入学することができた。
今まで日本で勉強してきた知識に合わせた入学だったと言えるだろう。
入学式にはハーティアの女王であるハーティ・ハート・ハーティアが異能学院《いのうがくいん》の入学生に対して城のバルコニーで演説らしきものを述べている(要は上記の僕の説明と同じことを言っている)。
そして――。
「――これからキミたち入学生にはテストをおこなってもらう。要は、この世界を救えるか否かを判断させてもらう。なぜならキミたちにも目的があるだろう? トランピアがひとつであるハーティアが所持している、どんな願いでも叶えることができる『聖杯』を手に入れるという願いが、ね――」
――聖杯、だと?
「キミたちは、あらゆる次元から集められた、いわゆる異次元の住人だったものだ。その異次元――異世界の住人であるキミたちは、この世界を蝕む邪悪王国《ジャークキングダム》の邪悪獣《ジャークビースト》と戦えるようにならなければならぬ。だから、テストをしてもらおう。この世界をちゃんと救える英雄になれるのか、をね。つまり、この世界を救えば、願望が手に入る、ということだよ……キミたちは理解しているかい?」
……どういうことだ?
僕たち四人にも目的があるのか?
この世界を救って、聖杯を手に入れなければならない理由が――。
――僕たちは、なにを試されているのだろうか?