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超常異能の改変作家 第12話

  *

「ちょっと麻音《アサネ》さん、それってセ○ハラですよっ!? あまりシモーいネタはやめてくださいっ!!」

「え、いやなの?」

「……それは、ええと……(結婚してから、じゃないと心の準備が)……とにかく、麻音《アサネ》さんは、この話題に触れないでくださいっっ!!」

「そう……ね。……楽しみだったのに」

「えっ!?」

「いや、なんでもないよ~! ただ、これからの二人がどうなるかは、わたしにもコントロールできないし、なるようになるか、な?」

「…………」

 初芽《ハツメ》が黙る中、生萌《イクモ》が――。

「ねえ、すき焼き、まだ~? 生萌《イクモ》すき焼き大好き!!」

「とりあえず、すき焼きをしましょうかね? タイくん、冷蔵庫から卵を取り出して」

「……わかった」

 なんていうか、僕が告白したわけだけど、結局……彼女が好きなのは、僕の「外側」なんだろうな。

 彼女は僕と違う彼を見てきたんだ。

 だから……僕は、とにかく彼の恋愛だけは、うまくいってあげさせたい……な。

 グツグツ煮込んだ、すき焼きの具材たちが踊る。

 僕は肉を頬張る。

 異次元のおいしさだ……まあ、異次元――異世界の肉だから、かもしれないけど。

 好きすぎて、やきもち焼《妬》いてしまわないように僕は彼の体で、すき焼きを味わった。

 彼に嫉妬してしまう僕の心を肉が溶かしてくれた、ような気がした――。

  *

 ――翌日の朝、僕は、この体がちゃんと自分になじんでいると意識した。

 たった一日しか経過していないのに、もう数日が経過しているような感覚だ――いろんなことがありすぎた。

 どうして僕は、この体に乗り移るように転生してしまったのだろうか……。

 ほとんどの入学生は転移者らしい。

 転生者は、そんなに少ないのだろうか?

 だいたい僕は羅円大公《ラエン・タイコー》と同じ時代の人間ではない。

 本物の羅円大公《ラエン・タイコー》と麻音《アサネ》と生萌《イクモ》、そして若菜初芽《ワカナ・ハツメ》は西暦三〇XX年の時代の人間らしい――なんかコロシアムに入場するときのアナウンスで、そう言われていたし。

 それに対して僕は二〇XX年の人間なわけだが、約千年後の時代の人間と出会えるって、どういうことだ?

 トランピアは、あらゆる世界の時代に関係なく転移・転生をさせているのか?

 要はハーティ・ハート・ハーティアの召喚術で、か?

 目的は邪悪王国《ジャークキングダム》の放つ邪悪獣《ジャークビースト》の戦闘に対応するためだと、あの女王さまは言っていたわけだけど、どうして、そんなに転移・転生者の力を信じる?

 そんなに強いのか? 僕たちって……。

 まあ、あれこれ考えても仕方ないけど。

 珍しく、ひとりで、めざめたわけだけど、もう……何時だっけ? そもそも時間の概念も地球と同じなのかな?

 謎ばかりを考えていても、あ、また同じセリフを――。

「――なにしてるの?」

 羅円大公《ラエン・タイコー》の部屋の扉の前に初芽《ハツメ》がいた。

「――そろそろ異能学院《いのうがくいん》での生活が二日目になるのに、また遅刻ぎみになるのかな?」

「遅刻しなければいいんだよ、とりあえずは」

「それじゃあ、世界を救ったあとも、そんな言い訳をしていくってわけ? そんな言い訳が通用するのは学生だけよ」

「初芽《ハツメ》も遅刻ぎみだったじゃん」

「あれは……いろいろあって、わたしのキャパじゃ対応できなかっただけよ。みんな大公《タイコー》の話に付きっきりだったでしょ? なんで、あのときに、あんな話をしたわけ?」

「……遅刻するぞ。朝ごはんを食べる時間しかないよ。下へ降りよう」

「話をそらさないで。わたしたち、離ればなれになる可能性だってあるのよ?」

「なにを聞きたいんだ?」

「……えっと、あれよ、あれ……」

 彼女がモジモジしだした。

「結婚は無理だよ……今の年齢じゃあねえ。だけど、付き合うってのは年齢、関係ないわけじゃん」

「……初芽《ハツメ》」

「わたしと結婚する気なら、今……付き合いなさい」

 めちゃめちゃ赤面してる。かわいい。

 確かに言い出しっぺは僕のほうだ。

 本当は彼の気持ちを代弁しただけなのに、なんて言えないけど……だけど、言ったのは僕だ。

 僕の責任だ。

 だから、どんなことが起きても、彼女のそばにいることにしよう。

 いずれ本当のことを知ってしまうのを覚悟して。

 だけど、ABCのAすら経験しちゃダメだ。

 これは、もとの体の持ち主である彼が経験すべきことなんだ。

 僕は彼の体を盗んでやっているようなものだ。

 それがゆえに僕は完全なるプラトニックで、がんばっていこう。

「わかった。改めて、言おう」

 僕は決意を胸に。

「若菜初芽《ワカナ・ハツメ》さん、僕と付き合ってください――」

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