【18歳以上向け?】無限の感覚 第10話

  *

 ――ここは、あらゆる世界を創造する世界――創造世界《クリエイティヴィア》。

 僕――創造世界《クリエイティヴィア》管理員《ライブラリアン》識別番号《コードナンバー》「354846」は、ひとつの世界を創造していた。

 その世界の創造が、もうすぐ完了する。

「ふう、できた」

 僕の体験した神話的な出来事が世界として形成された。

「この物語を『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』に収納すれば、世界が形成される」

 僕の計画がカタチになるんだ。こんなにうれしいことはない。

「さて、『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』に向かうとするか。バレないようにね」

  *

 ――ここは、あらゆる世界を創造する世界――創造世界《クリエイティヴィア》の『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』が存在する部屋である。

「さてさて。この『無限《むげん》の感覚《かんかく》』という架空の世界の情報《データ》を『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』に差し込むインサートと、どうなると思いますか?」

 答えは――。

「――世界が形成されるのです。本当に存在する世界として」

 ウキウキしていた。

 自分の頭の中に入っている「出来事」が本物の世界になる。

 それは「非《ひ》公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》」の僕にとって人生を変えるチャンスになるかもしれない。

 だから世界をつくった。

 見返してやるために。

 僕は管理員《ライブラリアン》として働いているけど、そんなにいいものじゃない。

 管理員《ライブラリアン》としての僕は未熟だ。

 ほかの管理員《ライブラリアン》から「管理ができていない」と言われる。

 管理員《ライブラリアン》は僕のことを認めてくれない。

 どこか不思議なやつだなとバカにする。

 そんな管理員《ライブラリアン》生活《ライフ》があってたまるものか。

 だから僕はやる。やってやる。

 僕の頭の中の構想を情報《データ》化した――それは非《ひ》公《こう》認《にん》創造《そうぞう》家《か》がやってはいけない禁忌であった。

 だけど、僕の世界は面白いと思う。

 きっと、僕の世界を見てくれた人は笑顔になるだろう。

 世界をつくったっ! 素晴らしいことじゃないかっ!

「というわけで、さっそく『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』に『無限《むげん》の感覚《かんかく》』の情報《データ》を……差し込むインサートっ!」

 ――『無限《むげん》の感覚《かんかく》』……世界《せかい》形成《けいせい》開始《かいし》……世界《せかい》形成《けいせい》完了《かんりょう》――。

「よしっ! 『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』が世界の形成をしてくれたっ! これで落ち着いて眠れる。僕は、がんばったんだっ! 疲れたっ! つらいっ! 寝るっ!」

 僕は疲れて「次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》」の存在する部屋で眠ってしまった。

  *

「どういうことかな、354846」

 僕は最高位の管理員《ライブラリアン》によって世界反逆罪として捕まった。

「なぜ、こんな――『私情にとらわれた世界』の情報《データ》を『次元《じげん》世界《せかい》管理《かんり》保管庫《ほかんこ》』に収納《インサート》したのだ」

 なぜ僕が尋問されているのか?

 答えは簡単である。

 非《ひ》公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》だからだ。

「創造行為は非《ひ》公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》がやってはいけない禁忌だ。わかっているだろう」

「はい」

「創造世界《クリエイティヴィア》管理員《ライブラリアン》は世界を管理する使命を与えられた非常に重要な役職だ。だが、キミは非《ひ》公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》であるにもかかわらず規則を破った。『公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》』になれる試験を突破することもせずにな。改めて聞こう。なぜ、こんなことをした」

「認められないからですよ」

 僕は真っ黒に渦巻いた気持ちを、最高位の管理員《ライブラリアン》に伝える。

「認められたかったんですよ。『公認《こうにん》創造《そうぞう》家《か》』は世界を創造できる。だから試験にも何度だって受けましたよ。何回も何回も落ちましたけどね」

「354846……キミは夢をあきらめて罪人になったわけだな」

「仕方ないじゃないですかっ! みんなからバカにされて生きてきたんだっ! 妄想の世界に逃げ込むには十分な理由さっ! わかるだろっ! 僕の気持ちがっ!」

「最高位の管理員《ライブラリアン》に向かって、なんて口の利き方をするっ! 死罪になりたいのかっ!」

「ああ、死にたいねっ! こんな生活まっぴらごめんだっ! 早く僕を殺してくれっ!」

「よろしい。ならば、354846……キミを死罪にしてやるっ!」

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