シエナ国際写真賞2021・受賞作品の発表
シエナ国際写真コンテストについては、昨年度も受賞作品をnoteで紹介しました。私のマガジン「国際写真コンテストの優秀作品」に収録されています。今年はさらにパワフルな作品が集まった気がいたします。
どのくらい力強いかって? こういう画像を前にするといつも、言葉は無力だと感じます。
「嘆き悲しむ移民の少女」ドキュメンタリー&フォトジャーナリズム部門の特別賞:
2020年2月3日にギリシャのレスボス島で難民と機動隊が衝突しました。ここにあったモリア難民キャンプはヨーロッパ最大の難民キャンプで約2万人の亡命希望者を仮収容していたが、最も劣悪な環境でもありました。そこで5年近くも強制隔離されてきた人びとの怒りが噴出したのです。
同キャンプはその後9月に全焼し、1万2千人以上が路上へと焼け出されました。しかし、島内では海沿いの吹きさらしの場所に新たな難民キャンプが設けられ、彼らはそこに移動させられました。
この悲惨な状況を憂慮する国境なき医師団(MSF)は、ギリシャの島で非人道的なキャンプ内に人々を閉じ込めるのではなく、EU全域で安全な移転先を確保するよう求めています。
「見張っている目」野生動物部門の特別賞: ホッキョクギツネは季節によって体の色を変えて周囲に溶け込みます。ノルウェーでは絶滅に近く、気候変動の影響で雪が降るのが遅くなるとうまくカモフラージュできなくなるため、さらに生存しずらくなります。
「緑色に光る森」自然美の1等賞: 森の奥深く山道あたりの光景は、無数の「きらめく」ホタルに照らされておとぎ話のような雰囲気です。生物が放つそうした発光は交尾という儀式の一部であり、最後に卵が産まれます。
残念ながら環境汚染がホタルの繁殖を妨げ、このようなショーを見るのはますます難しくなっています。
「人生の苦難」本年度の写真賞:
父親はシリアのバザールを歩いているときに爆弾が投下されて右足を失いました。
息子のムスタファ君は<テトラアメリア>という薬によって引き起こされた先天性障害のために上下肢なしで生まれました。
シリアでの戦争中に放出された神経ガスに苦しんだ母親は、その薬を服用しなければならなかったのです。
将来ムスタファ君には特別な電子義肢が必要となりますが、残念ながらトルコではまだ入手することができません。
爆弾、神経ガス・・人間はなぜそんなに残酷なことができるのか?
意味のない戦争で苦しみを味わったあとも、この親子が喜びを見つけて笑っている姿には強さと美しさと救いを感じます。
続く。