面白い本・好きな本|日本文化はしなやかに[能と俳句と弓術と]
おのずから と みずから
おのずと、ひとりでに、なりゆきで。「おのずから」はそんな意味。対して「みずから」は、自分で、自発的に。おのずからは漢字で「自ずから」、みずからは「自ら」。どちらも同じ「自」なのに、意味は正反対。
自然という言葉は
自(おの)ずから 然(しか)らしむ
山、川、海。人の手が加わっていない、あるがままの状態。意思はなく、あるがままに、なるように。みずから為す ではなく おのずから成る。
動植物のひとつひとつに意思があったとしても、水、緑、空気、生命、すべてをひとつの自然と捉えると、自ずから然らしむ。
おのずから、みずから、あきらめ
九鬼周造は日本の思想を自然と意気と諦念の3つと言っている。自然という「おのずから」と、意気という「みずから」、そしてその間で揺れ動く諦念という「あきらめ」。
日本は古来より自然災害が多い国。そこに棲む人々は、感謝と畏怖の念をもって自然と向き合い、八百万の神を見出してきた。
自然をコントロールすることは諦めて、自然に寄り添う。時の流れにしなやかに、長い歴史を紡いでいく。
諦めが肝心、しなやかに、流れに任せて
日本文化はしなやかに
日本は世界最古の国といわれている。2700年にわたり皇統で王権をつなぎ、単一の王朝国家は世界唯一の存在。もちろん天島が126代連続で確実につながっているか定かではない。でも、ある程度正確に把握できている天星から数えても1400年、100代以上続いている。
王室の歴史ランキングを見ると一目瞭然。もうダントツで長い。TOP5はすべてユーラシア大陸の端っこ。中央にあるのは砂漠と遊牧民。その周辺には巨大な国が取り囲む。対して、日本と西欧はユーラシア大陸の端っこに位置する。中央の脅威が及ぶことなく、隣接する地域から文明を導入し、独自の発展を遂げている。
その上、日本は外来のものをどんどん受け入れる。自然と意気と諦念。3つの思想のゆらぎのなかで、しなやかに取り込んで、日本の文化にしてしまう。そうして2700年の長い長い歴史を紡いで、いつの間にやら最古の国と成っている。
みずから為す、あきらめる、おのずから成る
ということで、日本の文化にふれる3冊。扱っている題材はそれぞれ違うけど、そこからにじみ出てくる日本的な感じに浸ってみるのはどうでしょう、という話。
しなやかに、能と俳句と弓術と
風姿花伝|世阿弥
「花」
秘すれば花、秘せねば花なるべからず。珍しさ、意外性が感動を生む。未知なるものが人の心を魅了する。秘伝。
「幽玄」
ただ美しく柔和なる体、これ幽玄の本体なり。優美な美しさ。優雅で深い味わい。
俳句への道|高浜虚子
「客観写生」
ありのままの現象を詠うもの。心情ではなく現象。客観の先に主観が浸透して出て来る。理論は実行のあと。
「花鳥諷詠」
俳句は季題(季語)の文学。俳句は自然との関係性を切り離せない。自然はゆとりを与える。季題と素材と感情。
日本の弓術|オイゲン・ヘイゲル
「無」
無意識、無心、無我不射の射、非合理、直感、非論理、体得。
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