3つの好きな映画|映画で旅をする[北朝鮮の家族]篇
映画で旅をして、世界を感じる
普通、海外旅行に行くとすると、チケットを手配して、空港に移動して、搭乗手続きをして、飛行機が飛び立つまでしばし待つ。どれだけ無計画で簡素な旅でも、やっぱり手間も時間もお金も、それなりにかかってしまう。
その上、戦場カメラマンでも、ジャーナリストでも、冒険家でもなければ、身の危険を冒してまで、その国の最深部に迫ることはまずない。
そんな時は、映画を観る。
思い立った瞬間に、たった120分程度の時間と、数百円の費用で、あっという間に世界中を旅できる。映画万歳。
海外旅行では気づかないこと
地元の人しかたどり着けない辺境の地で、
普通の人々がどのように暮らし、学んでいるか。
観光客が立ち入れないのでわからない。
中東イスラムの地で暮らす女性が、
どのような宗教的抑圧を受けているか。
短期間の観光では感じ取ることが難しい。
世界の危険な都市ランキング上位の街で、
麻薬、ギャング、不法移民がどう絡んでいるか。
観光客が足を踏み入れることは絶対にない。
イスラエルとパレスチナで暮らす人々が、
どんなテレビをみて、恋愛をしているか。
パレスチナ問題を扱うニュースでは報じない。
そんな時は映画を観る。
映画で旅をして、世界を感じる。
と、いうことで、日本から近くて遠い国、「北朝鮮」を体感する映画を3つ。メディアで報じられる、大雑把な情報は皆さんご存知の通り。
でも、実際どうなのか?
北朝鮮の家族とは?
トゥルーノース/2020
北朝鮮の強制収容所で生きる家族の話。
世界で最も過酷と言われる場所を舞台に、収容体験をもつ脱北者や元看守からインタビューを行い、10年の歳月をかけてつくりあげた渾身の映画。
実写では衝撃的すぎるので、あえて寓話的にアニメで表現した、と。
収容された人が、日本の民謡「あかとんぼ」を歌う。その瞬間に、このアニメが遠い場所の縁遠い話ではなく、すぐそこにあるリアルな話だ、と我に返る。
北朝鮮は、国際社会に受け入れられるために、この収容施設そのものを「なかったこと」にしようする可能性がある。つまり、収容施設と、そこにいる12万人を消してしまう可能性がある、ということ。
監督が映画をつくった最大の目的は、「なかったこと」にできないよう世界中にこの存在を知らしめること。エンドロールで流れるGoogle Earthの収容施設の写真の数々で、このアニメがフィクションではないことを気づかせてくれる。
かぞくのくに/2012
在日朝鮮人である監督の実体験をもとにした家族の物語。
北朝鮮の「帰国事業」で北朝鮮と日本に別れて暮らす兄と妹。病気治療を理由に日本への3ヶ月だけの一時帰国が認められ、25年ぶりの再会。
治療の結果は芳しくなく、とても3ヶ月では治療できない。本国に滞在の延長を申請するが、無情にも棄却。つまり、治療せずに戻ってこい、と。
常に監視役がいるなかでの家族団欒。命令に逆らうことが許されない北朝鮮と、自由に生きることができる日本。さて、兄はどうするか?
北朝鮮の正式名称は「朝鮮民主主義人民共和国」
名前だけは「民主主義」だったんだ、と今頃気づく。。
レッド・ファミリー/2013
韓国で暮らす仲睦まじい家族が、実は北朝鮮の工作員という話。なので実際は家族でもなく、他人の集まり。
隣に住む韓国人家族との交流を通して、家族とは何か、国家の理念とはないかを否応なく考えることになり、心が揺らぐ。
韓国映画界の鬼才、キム・ギドク監督が製作・脚本を務めたサスペンス映画。