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面白い本・好きな本|アメリカ文学 薫り高く、風に吹かれて[湿地の少女、老人と海、森の生活]
点の読書から線の読書、そして星座の読書へ
まずは1冊読む。書評や読書案内、もしくは誰かに勧められた本を1冊読む。これさえあれば足りる、自分にぴったりの1冊に、いきなり出会うことはそうそうない。1冊だけの読書は「点の読書」
あらゆる本は、1冊では存在できない。他の多くの本から影響を受けたり、参照されたりしながら、直接的、間接的につながっている。
1冊だけでは、ピンとこないことだってある。でも、2冊目を読んでみると共通点が見つかって、ふと線で繋がることがある。これは「線の読書」
大切なのは、読み続けること
自分には合わない本があったとしても、すぐに役にたたない本があったとして、読書を続ける。するとある時ふと、いくつもの本が線と線でつながって、独自を意味を持ちはじめる。
奇跡的に美しい瞬間。夜空に光る無数の星から、星座が浮かび上がってくるように。
秋の夜長に、星座の読書を
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アメリカ文学 薫り高く、風に吹かれて
今日は秋分の日
これから日に日に夜が長くなっていく。秋の夜空に光る星を眺めながら、アメリカの大自然に思いを馳せる。自然文学の芳醇な香りに包まれる。
21世紀|ノースカロライナの湿地の少女
20世紀|ヘミングウェイが描く老人と海
19世紀|ウォールデン湖畔での森の生活
時代を徐々に遡り、アメリカ文学にどっぷり浸る。点の読書から線の読書、そして星座の読書になるように。
ノーベル文学賞を受賞した、ボブ・ディランの名曲『風に吹かれて』でも聞きながら、香り高きアメリカ文学でもどうでしょう、という話。
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21世紀|湿地|ザリガニの鳴くところ
生き物と大自然の瑞々しい描写にどっぷりはまる
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ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、少女はたったひとりで生きなければならなかった。……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。
動物行動学で有名な日高敏隆さんのエッセイや、写真家であり探検家である星野道夫さんの著書を彷彿とさせる、大自然とそこに生きる生き物への温かな眼差しに包まれる本。
ノースカロライナの“湿地”と“沼地”で繰り広げられる物語。大自然と生き物と人間が織りなす雄大な描写が、なんとも心地いい。小説なんだけど、ノンフィクションのような本。ミステリーなんだけど、とてもその一言で片付けることはできない、壮大で雄大な生き物のドラマ。動物行動学者である69歳の著者の、圧巻のデビュー作。
構成も、描写も、タイトルも、表紙も美しい
普遍的な自然文学
映画では湿地の情景や構成の違いが楽しめる
20世紀|海|老人と海
ノーベル文学賞をもたらした永遠の傑作
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84日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。
大海原と巨大カジキと小さな人間の物語。大自然の脅威と厳しさに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を描く。
初めて読んだ時、まだここで物語の半分なんだ、、と感じたほど、濃密なストーリー。ここからどうなるの?と気になって、最後まで息を止めて読んでた?と思わせるほど、引き込まれる世界観。
ヘミングウェイの文学的到達点
永遠の傑作
19世紀|森|ウォールデン 森の生活
古典的名著、シンプルライフ
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ソローは1845年夏から2年間マサチューセッツ州コンコード郊外のウォルデン湖のほとりで掘建て小屋を作り、自給自足の独り暮らしを実践した。
思慮深く生き、人生の本質的な事実のみに直面し、人生が教えてくれるものを自分が学び取れるかどうか確かめてみたかった。
森の中の湖のほとりに自分で簡素な小屋を建て、育てた作物を食べ、自分の手を使った労働だけで生活を成り立たせた。本書はその生活の記録である。
人は1週間に1日働けば生きていける
どんな時代であれ、社会であれ、シンプルに、簡素に、そして賢明に生きることは素晴らしい。この単純な真実を、ソローは森の中で発見する。
今の言葉でいうと、シンプルライフやミニマリスト。四畳半(方丈)で、質素に、そして風流に暮らすアメリカの『方丈記』。アメリカ文学の礎を築いた古典的名著。
質素で、風流に暮らす美しさ
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ソローの『森の生活』がコンセプトのカフェ
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