面白い本・好きな本|食を巡る辺境の読書旅[アマゾンと南極とSDGs]篇
ローカル・ガストロノミーとは。
都市を離れ、生産現場に近いローカルへ。その土地の環境で手に入る材料で、その土地の風土に寄り添ってつくられるひと皿を、その土地の文化につつまれて「いただきます」と手を合わせて、おいしく味わう。
ローカルならぬ、辺境ガストロノミー?
アマゾンで取れる希少種カカオをフェアトレードで届ける
食材が手に入らない南極基地で料理をつくる
ミシュランの星よりアマゾン奥地に引き込まれた泥臭いシェフや、南極基地で料理をつくる料理人は、辺境の地に根ざした食を提供する。都会的で洗練されたイメージのあるローカル・ガストロノミーに対して、“辺境”ガストロノミーとでも言えばいい?
アマゾンも南極も気軽に行ける場所ではないけれど、本を読んでその世界に入り込むことはできる。
食を巡る辺境の読書旅。
ティッピング・エレメント
アマゾンと南極といえば、環境問題について考えないわけにはいかない。
温暖化に伴う気候変動で、地球環境に大きなインパクトをもたらす要素をティッピング・エレメントという。迫り来る脅威として大きく3点挙げられる。その中には当然、南極もアマゾンも該当する。
雪や氷に覆われた地域の氷の融解[南極、グリーンランドなど]
大気や海洋の循環システムの変化[モンスーン、エルニーニョ]
生態系の変化[アマゾン、珊瑚礁、北方林]
南極大陸の氷の融解
厚さ平均1.6kmにもなる分厚い氷床で覆われており、南極とグリーンランドの氷床が全て融けてしまったら、実に70mもの海面上昇が起こると言われている。それは、現在の沿岸地域のほとんどが海の下に沈しずんでしまうということ。
アマゾンの熱帯雨林の減少
地球上の熱帯雨林の実に半分を占しめる。生態系の宝庫だが、森林破壊や森林火災により減少を続けている。熱帯雨林への降雨は、その大部分が熱帯雨林自体から蒸発した水を由来としているため、森林の減少が降水量の減少を招き、さらに森林が減る……という悪循環を引き起こしている。
そんな環境問題にも思いは馳せつつ、アマゾンと南極の料理人について知ることのできる面白い本2選。
食を巡るローカルな読書旅へ、いざ出発。
アマゾンの料理人|太田哲雄
アマゾンカカオを通じてアマゾンも日本も豊かにする
5年先まで予約の取れない軽井沢のレストランと聞くと、普通によく聞く有名シェフの話と思うかもしれないけど、その行動力は凄まじい。
高校生の時にアルバイトで貯めたお金で一流レスランを食べ歩き、その後イタリア、スペイン、ペルーと渡り歩き、セレブのプライベートシェフや世界一予約が取れない有名店「エル・ブジ」で働き、最後にアマゾン奥地に辿り着く。
世界中の食材のうち70%もの原種を有する南米・アマゾン
カカオ50%にして、ミルクや砂糖など別の材料を入れれば原材料代は安くなる。倍の量のチョコがつくれるので利益率が上がる。そんなチョコレート業界にも疑問を持ち、ついにはチョコレート業界から叩かれると誰もが反対する中、希少種であるアマゾンカカオのフェアトレードを始める。
パティシエやショコラティエはカカオをチョコの材料と考えているが、著者は料理人。カカオを煮ても焼いても蒸してもいい。インド料理や精進料理のアプローチで料理してもいい。
カカオを発酵食材と捉えて、シェフとして自ら料理を実践しながら、国内外のレストランや料亭にアマゾンカカオも卸すことになる。
カカオを通じて日本もアマゾンも豊かに。
南極ではたらく|渡貫淳子
平凡な主婦が一念発起して南極観測隊の調理隊員になる
体力が求められる南極観測では、性別も、年齢も、障壁の一つになる。一般公募で調理隊員として随行した女性の前例はない。そんな中、普通の主婦が果敢に応募して競争を勝ち抜き、南極基地の料理人になる話。
食糧の補給は1年に1度だけ。なので、1年分の食材を一度に決めて積み込む必要がある。2000品目、30トンを超える食糧!
観測隊がコンビニで好きなものを買いに行くことができない。朝昼晩、おやつ、夜食、すべてをつくる。和洋中すべてをつくれて、誕生会などイベントなど特別感のある料理をつくるスキルも求められる。
ゴミを南極に捨てることはできないので、できるだけ使い切る。氷は山ほどあるけど水はない。溶かして使えばいいじゃないか、と思うかもしれないけど、溶かすにもエネルギーがいる。エネルギーも最小限しかないので、無駄に水を使うこともできない。
究極のエコロジカル&サスティナブル料理
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