見出し画像

3つの好きな映画|中東の女性監督がつくるイスラム映画[サウジアラビア・アルジェリア・モロッコ]篇

中東初で開催されたドバイ万博が先月閉幕

世界の1/4がムスリムで、2070年にはキリスト教を超えて、世界で最も信者数の多い宗教となると予想されるイスラム教

イスラムというと、そこで暮らす女性の抑圧が話題になることが多いけど、昨今は自国の女性がつくった映画も増えてきて、少しづつ状況が変わってきているような。

中東のイスラム世界で暮らす女性の自由と抑圧を
その国の女性監督が描くという意義


邦画やアメリカ映画もいいけれど、近い将来、世界最大宗教となる中東のイスラム映画を観るのもいいのでは? という話。

ちなみに、ドバイ万博の日本館の設計も日本の女性建築家。

ドバイ国際博覧会日本館 永山祐子設計


「中東」と「アラブ」と「イスラム」はそれぞれ違う

今年2022年はサッカーW杯が開催される。
会場は中東初開催のカタール

そして、2036年五輪招致には、イスタンブール(トルコ)、テルアビブ(イスラエル)、ジャカルタ(インドネシア)が名乗りをあげている、と。

「中東」と「アラブ」と「イスラム」の違いは?

突然聞かれると、絶対目が泳いでしまいそうな質問、、、なので、先ほどの4つの国で、試しに整理してみると、以下の通り。

カタールは、中東で、国教はイスラム教で、公用語がアラビア
トルコは、中東で、イスラム教徒が大半だけど、アラブではない
イスラエルは、中東だけど、イスラムは少数で、アラブでもない
インドネシアは、中東でも、アラブでもないけど、大半はイスラム教徒

まず、「中東」は地域のことなので、地図を見るのが一番早い。

イスラム」はイスラム教を信仰する人で、「アラブ」はアラビア語を話す人。なので、アラビア語を話すキリスト教の人もいれば、アジアに住むイスラム教徒の人もいる。「イスラム」も「アラブ」も「中東」だけでなく、世界中にいる。

「中東」は地域で、「イスラム」は宗教で、「アラブ」は言語。

この3つが理解できれば、もう大丈夫。

ムスリムのスカーフ

もうひとつ難しいのがムスリム女性のスカーフ。。

ヒジャブ、チャドル、ニカブ、ブルカ

いろんな呼び名があるし、ちょっとずつカタチも違う。同じムスリムのスカーフでも、サウジアラビアでは全身を覆っている印象があるし、トルコではそもそも何もつけていない人も見かけるような。

で、ネットでわかりやすい表を見つける。

国による主流の考えが一覧になっていて、とてもわかりやすい。また、同じ国でも、田舎のほうがより保守的で肌を隠すことが好まれるみたい。

と、いうところまで理解が進んだ状態で、おすすめの映画を3つ。

サウジアラビアで、ニカブをいやがる少女
ファッションに目覚める、アルジェリアの学生
モロッコで生きる未婚の妊婦

中東の女性監督がつくるイスラム映画

少女は自転車にのって/サウジアラビア

映画館のない国、サウジアラビアで初めて作られた長編映画。
しかも、サウジアラビア初の女性監督の作品。

自動車の運転を女性にも認める国王令がようやく出されたのが2018年!という女性への抑圧が強いサウジアラビアでの映画というだけでも価値があるかと。

でも、女性の不条理を訴えるステレオタイプな映画ではない

主人公の少女は、スカーフをつけるのをいやがり、デニムとスニーカーを履きこなし、西洋音楽を聴く。男の子と遊ぶことも、自転車に乗ることもこの国では非常識なことだけど、お構いなしで楽しそう。

別にスカーフをとっても、自転車に乗っても、男の子と遊んでも投獄されるほど重大なできごとでは全然ない。校則をやぶって大人に注意されるくらいのことなんだ、という気づきがあっただけでも見る価値のあった映画。


ハピチャ 未来へのランウェイ/アルジェリア

アルジェリア出身の女性監督の実体験をもとにした青春映画。

イスラム原理主義による女性弾圧の真実を、ファッションデザイナーを夢見る少女の視点で瑞々しく描く。

本国では政府の圧力で上映中止、アカデミー賞国際長編部門は本国上映がエントリー条件だが、事情を加味して特例でアルジェリア代表にこぎつける。カンヌでは「ある視点」部門で大きな話題となり、セザール賞では新人監督賞を受賞する。

無知な人々が信仰を振りかざして暴走している

映画の中のセリフなんだけど、とても印象的言葉。男性だけでなく、女性の抑圧を居心地よいと感じて、一部の女性までもが自警団として取り締まる様子も描かれている。

映画のタイトルになっている「ハピチャ」は、アルジェリアのスラングで、以下の意味をもつ。

愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性


モロッコ、彼女たちの朝/モロッコ

女性監督初のアカデミー賞モロッコ代表作品。
監督が、過去に家族で世話をした未婚の妊婦との思い出をもとに作り上げた長編デビュー作。

カサブランカの旧市街で、女手ひとつで営むパン屋の女性と、職を求めて訪れた未婚の妊婦の物語。
モロッコの伝統的なパンに、幾何学模様が美しいインテリアにアラビアの音楽。異国情緒漂う舞台に、絵画のように美しいシーンの数々。

自分らしく生きると決めた彼女たちが迎える朝の景色とは...

イスラム社会では婚外交渉や中絶は違法で、罰せられる。普通は妊婦が街を出歩くこともないため、妊婦が職を求めて出歩いているということは、それだけで未婚であることを匂わせ、皆顔をしかめる。

ジェンダーギャップ指数144位モロッコで生きる女性の物語を、遠く離れた中東イスラムのことだと思ってはいけない。

だって、日本のジェンダーギャップは120位。


いいなと思ったら応援しよう!