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思い出のベーグル

「まさかこんなところで再会するとは。」

ふるさと納税サイトを見ながら私は驚いていた。山形県で出会ったベーグルと6年振りに再会したからだ。

入社して最初の配属先が山形県だった。
初めて暮らす土地。
全く知り合いのいない場所で
1日しかない休みの過ごし方は
パン屋巡りだった。
並んでいるパンをみるだけでワクワクする。
色々なパン屋を巡る中で出会ったのが
山ベーグルというお店。

今までベーグルをちゃんと食べたことがなかったが、そのもちもちの食感にすぐに虜になった。さらに色んな種類があって全く飽きがこない。

お店の近くに図書館があり、昼食用のベーグルを買ってたくさんの本を読んだり勉強をしたりして夕方まで過ごした。

結局1年後には異動になってしまったが
休みの日には朝ごはんを求めパン屋に行くことは習慣になり、結婚後も夫婦で楽しんでいた。

しかし、子どもが産まれてゆったり朝パンを買いに行くことはできなくなり、パン屋に行くことはなくなっていった。
復職後も子供と食事内容を合わせるとお米を食べることが多くなり(お米も好きだけど)食べたとしてもスーパーで買った食パン。
慌ただしく過ごすうちに、ますますパン屋とは疎遠になった。


復職して1年が経とうとしていた年末。
ふと今年はふるさと納税できるな、と思い出し
サイトを見ていた。

山形県で過ごした経験から
ふるさと納税するときは山形県に納税している。いつものようにお米を申し込もうと検索すると関連でなんと山ベーグルの詰め合わせが出てきたのだ。

まさか返礼品にあるなんて。
食べたくなり、急いで注文した。

冷凍で届いたベーグル。
久しぶりにポットで入れた紅茶と一緒に
ゆっくりと食べた。
変わらないむっちりとした私の大好きな食感。

じっくりと咀嚼しながら
パン屋に行って美味しそうなパンを見るのが
好きだったこと
紅茶と一緒に食べるのが好きだったこと
図書館の静かで時間がゆっくり流れているような空間が好きだったこと
そんな空間の中で本を読むのが好きだったことたくさんの自分の好きを思い出していた。

それからは朝できるだけ早く起きて
紅茶をいれて残りのベーグルを食べる。
ベーグルがなくなっても紅茶を入れることが私の日課になった。

それだけで1日を優しい気持ちで始められる。

夫が帰ってきて時間が取れる時は
図書館に行って本を選ぶようになった。

まだ朝からパン屋に行くことはできないけど
違うお店のベーグルを通販で注文しようと思う。

思い出のベーグルから
私の元気を取り戻す方法を
教えてもらえたような気がする。

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