レキジョではないけれど
若い頃はNHKの大河ドラマのことを私の中では”お年寄りが見る番組”だと思っていた。出演者に惹かれ見ようと思ったことはあったが、やはり途中で離脱した。そんな私が初めて一年間通して大河ドラマを見たのは『新選組!』(2004年)だった。それ以降毎年とはいかないが何本か完走している。
歴史上の人物を俳優さんが演じるのは結構記憶に残るものだ。例えばクイズ番組とかで歴史の問題が出たりすると、あの人物はあの俳優さんが演じていたな→そういえばドラマの中でクイズの問題になっているシーンがあったな→あの時の戦はどっちが勝ったんだっけな‥という感じで記憶が繋がっていきクイズの答えに到達するという経験が少なからずある。そう思うと、もっと若い時、そう中学時代や高校時代に大河ドラマを見ていたらもっと歴史が得意な生徒になれたやもしれない‥。惜しいことをした。
今年の大河ドラマ『麒麟がくる』は歴史に興味がある人から見たら結構斬新らしい。朝日新聞のコラムで三谷幸喜さんが言ってた。三谷さんは大河ドラマの脚本も書いている歴史通。(私が初めて完走した『新選組!』も三谷作品)その三谷さんをして「こんな○○見たことない」の連続らしい。例えばユースケサンタマリアさん演じる、朝倉義景。今までのドラマではあまり詳しく描かれることのなかった武将だが、今回は意外と出番が多い。ユースケさん演じる義景は不穏な雰囲気を醸す、何だか信用ならない人物なのだが、義景の息子さんが毒殺された回では私も思わず感情移入してしまった。
歴史に詳しくない私でさえもこのドラマでの明智光秀という人のイメージが今まで思ってたのと違う。まさに「こんな光秀、見たことない」だ。同じ時代を描いていても、誰を中心に持ってくるかでその周りの人たちのイメージが変わる。信長が主役ならその敵役の人物は当然ヒール的な役割を当てられる。光秀は誰もが抱いている“本能寺の変での裏切り者”というのが一般的なイメージだろう。しかし『麒麟がくる』は光秀にスポットが当たっているから、光秀の方が、ヒーロー的に描かれて当然だ。
こういう、いろんな側面(人物)から同じ時代の同じ出来事が描かれることはとても興味深い。小説でもそういう類のものが好きだ。最近読んだ『戦の国/冲方丁』もそのジャンル。
実は私には好きな戦国武将がいる。いや好きというほどにはその人について特別詳しいわけではないのだ。ただ、ドラマや小説に出てくると何故か安心するというか、信頼できるというか、そういう人物。その人の名は、大谷吉継(刑部)。大河ドラマ『真田丸』では片岡愛之助さんが演じた。大谷刑部は真田幸村の義父にあたる。幸村の正室は刑部の娘、春だ。刑部は秀吉の臣下で秀吉亡き後“関ヶ原の戦い”で親友・石田三成のために共に西軍で戦って散った。病気で顔が爛れたり目が見えなくなったりしてもそれでも戦場に身を置いた白頭巾の武将。その刑部様が、『戦の国』でも描かれていて、私はまたちょっと好きになった。
刑部と、“関ヶ原”の敵・家康はお互いを認め合う仲だった。刑部は家康にならこの国を任せられるとまで思っていたのだが、三成が引くに引けない状況になり仕方なく西軍に付いて家康と戦うことになった。家康は家康で、刑部のことを高く評価していたのだろう、刑部の身近な武将たちを凋落して刑部を追い詰めたのだった。それに刑部が気付いたときには時既に遅しだったが、刑部は何故かちょっと嬉しく思うのだった。
家康が
この自分を、大谷吉継とその配下を、何としても瓦解させるべく調略を尽くしたのである。
ー内府(家康)は、ここまで、おれの存在を重く見ていたのか。(『戦の国』本文より)
そして家康の戦い方を見事だと認める。こういうところが戦国時代が人気がある理由なのだろう。敵であってもさすがだ、天晴れと認め、また負けが見えていても親友と共に戦う決意をする。
私の中でまた一段、刑部様の株が上がった。
大河ドラマでも、また世間一般にも人気があるのは戦国時代と幕末だ。学生時代に大河ドラマを見ていたとしても詳しくなったのは戦国時代と幕末だけで、他の時代はさっぱりだったかもしれないな。大河ドラマで歴史を学ぼうとすると、知識が偏ってしまいそうだ。やっぱり教科書で満遍なく勉強しなきゃいけなかったわ。