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岡山弁を習得せよ



私は生まれも育ちも岡山県、生粋の岡山っ子だ。子どもの頃には自宅の周辺が世界の全てで、田舎だとか都会だとか関係なかったのに、中学生になって私立の学校に進学したら私の住んでいる町がいかに田舎かを自覚するようになった。私の住む町と県庁所在地とは電車で約1時間の距離、県庁所在地から通う同級生は皆大人っぽくて垢抜けて見えた。とはいえ、まだそれは県内での格差。


東京や大阪のような大都市に憧れるようになったのは高校生ぐらいだろうか。何が一番不便かというと、好きなアーティストのライブが近くに来ない。「東京に住んでたら行きたいライブに行き放題なのになぁ」というのは田舎モンならではの思考回路なのかも知れない。


同じ県内でも方言が違う。中学生の時に県庁所在地に住む子たちが使う「◯◯せられぇ」(◯◯しなさい、◯◯してね)がやたらと耳に残った。それまでの私はそういう場合「◯◯しねぇ」と言っていた。“しねぇ”は“死ね”と勘違いされる。“早くしなさい”というのは「よしねぇ」=早く死ね、に聞こえる。それまで何の気なしに使っていたが、そのヤバさを自覚した。私は“せられぇ”を習得した。


岡山は地味な県だ。東を兵庫(神戸)や大阪、西を広島というスター県に挟まれ、長く“通り過ぎる県”だった。岡山出身の有名人も全国区となると映画評論家の水野晴郎氏ぐらいしかいなかったように思う。


その後、B'zの稲葉さんや俳優のオダギリジョーさんあたりが輩出されて少し岡山県人の鼻が高くなった。岡山と岡山弁が全国区になったのはお笑い芸人の千鳥のおかげ。正直、今岡山で千鳥みたいなコアな岡山弁を使う人は減っている。岡山県人として言わせてもらえば、あれはわざと“きたない”岡山弁をチョイスして使ってると思うのだ。ただ岡山弁を全国区にしてくれたその功績は県民として称えたい。


藤井風さんの登場で岡山県人の鼻はますます高くなり、岡山弁は世界へ羽ばたいた。風くんが一躍有名になった曲『何なんw』のサビの歌詞は岡山弁。岡山弁がオシャレに聞こえて岡山県人は歓喜した。ただ風くんに関しても一つ言いたいのは、自分の一人称が“ワシ”という若者は正直いうとあまりいない。風くんが「ワシ」って言うからカッコいいだけで、普通に「ワシ」って言ってたら、どんな田舎から出て来たん?って思われる、かも?


先日夕方NHKのローカル番組を見ていたらアナウンサーさんが韓国のボーイズグループにインタビューをしていた。メンバーの一人が岡山出身のこのグループ、今や韓国だけでなく日本やアメリカでも超売れている。この度地元の岡山、ではなく、お隣の広島でライブがあり、そこへローカル番組のアナウンサーさんがインタビューに伺ったというものだった。お隣の県だけど一応“凱旋”的な。
そのインタビューの中で、岡山出身の彼が他のメンバー(韓国人)に岡山弁を教えたというエピソードが出てきた。その岡山弁に私は思わずのけ反ってしまった。

そげぇなとこいかまあでよかろうが


‥この岡山弁が、今をときめくイケメンボーイズグループのメンバーの口から放たれた。意味わかる?

「そんなところに行かなくてもいい」

これ実は元ネタがあって、元は千鳥のノブさんの

そげぇなとこいかんでよかろう

だったのが、よりパワーアップしたバージョンでイケメンがイケメンに指南していたことになる。調べてみたら、このエピソードはファンの間では有名らしく、既にライブでも披露されているそうだ。

今や岡山弁の習得に国境はない。

ちなみに前述のボーイズグループは

ENHYPEN(エンハイフン)、
岡山出身のメンバーはNI-KI(ニキ)くん。
今日はそれだけ覚えて帰られぇ。


新しく始まったクドカン脚本のドラマ『新宿野戦病院』、クドカンってだけでもワクワクするのに初回を観たら出てくる人、出てくる人、全員好きな人ばっかりで「うひょーっ」って思いながら観てたら、突然小池栄子さんの口から岡山弁が飛び出してまたまた「ひょえーっ」ってなった。
何?もしかして今、岡山弁流行ってる?だってこれ、別に岡山弁の設定じゃやくてもいいやつだし。英語の中に時折混ざる岡山弁を楽しめるのは岡山県人じゃなくても可能なのかしら?ちなみにドラマ内で出てきた岡山弁「もんげー」(ものすごいの意)は使ってる人をあまり見たことない。同じ意味ならむしろ「ぼっけぇ」とか「でーれー」のほうがよく耳にする。

とか言いつつ、岡山県人としてはちょっと嬉しかったんだ。


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