人類は生き延びるために変質する〜『愚かな薔薇』読書感想文(若干ネタバレあり)
年に2回ほど放送されている『やりすぎ都市伝説』を毎回楽しみにしている。「信じるか信じないかはあなた次第です」と言ってくれているので話半分で観ている。特に関暁夫さんの話は歴史(実在)と未来の合わせ技で前衛的すぎて先を行きすぎていて理解が追いつかないし全く実感がわかないが、もしかしたら何十年か先にはあるかも知れない、ぐらいには思っているし、それに対する危惧や不安や緊張はある。
本作に出てくる人々は私よりは少しだけ、信じがたい現実を体験している人たちなのではあるが、やはりまだまだ「信じるか信じないかは‥」を委ねられているという点では私とそう変わらない。
愚かな薔薇/恩田 陸
私は小さい頃から吸血鬼が嫌いだ。怖くて怖くて吸血鬼のお話や写真が載った雑誌(夏になると“小学〇年生”などでも特集されていた)を触るのも嫌だった。大人になるとそこまでではなくなったが、噛みつく系はやっぱり苦手で、だからゾンビは嫌いだ。
この小説をジャンル分けするとしたらどうだろう?ホラー、SF、ミステリー、学園もの、青春、科学、伝説とか永遠の愛とか歴史と宇宙と未来と‥
それは、『ポーの一族』と『宇宙戦艦ヤマト』と『ドラえもん』と『トータルリコール』と『ウルトラマン』と、土着的な風習と、国家を挙げての研究と、選ばれし者と選ばれなかった者の苦悩と、人類の進化と星間移動と‥実に沢山の要素が混ざり合っているのだ。かと言って複雑すぎず案外スラスラと読める。
それは、
吸血鬼は胸に銀の杭を打ち込まれたら死ぬ
だとか、
人類の変質(進化)についての研究はツクバが行なっている
だとか、
血の提供者は40歳以下の健康な者から選ばれるが、提供することでその人自身も元気になると知った病気持ちの年寄り政治家が、金にモノを言わせて提供者になろうとする
だとか。私たちが知っていること、理解できること、納得し得ることがちょいちょい挟み込まれているおかげで、なるほど、ふむふむ、となる。
最終的には人類がいかに星間移動をするのかという話にまで発展するのだが、
と、とても壮大でスペクタル。まだまだそれは、一部の研究者や既に宇宙へと飛んでいる“虚ろ舟乗り”たち以外にはすぐには信じられるような話ではない。
そう、まさに『やりすぎ都市伝説』をポカンとしながら観ている私だ。そんなことあるか?そのうちあるのか?ようわからん。「信じるか信じないか」、信じる人は早めに星へと飛び立つし、信じない人は様子見だ。結局どうするかは私に委ねられている。やっぱり、信じる者は救われる、のかもね。
トップ画像と本文中の画像は、萩尾望都先生の書き下ろしカバーです。
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