少女漫画的小説
そもそも私は少女漫画には詳しくない。なのでこれは全くの私の私感であり、少女漫画ファンの方からすれば”浅い”と思われて当然であるがどうか許して欲しい。
ここで言う少女漫画的とは、その世界に自分が入りたい、もしくはそういう状況に憧れのようなものを抱いているという意味だ。こんな人いたらいいな、とか、こんな日常楽しそうだな、とか。そんな感じである。
植物図鑑/有川浩
言わずと知れた有川先生の恋愛小説決定版。ある日自宅前で行き倒れていた男子(日下部くん)を部屋で介抱したことがきっかけで同居生活が始まる2人。植物に詳しい彼は道端で摘んだ草葉で料理を作り、仕事で心身共に疲れきっていたヒロイン・さやかを癒してくれる存在へと。草料理のおかげでお肌もツルツルになるし、体調も改善。自分が養ってあげているという優位性と、いつ彼がいなくなってしまうかも知れないという不安でどんどん沼に。
草食系男子かと思いきや、ツンデレで押しの強さも合わせ持つ日下部くんに胸キュン必至。風来坊かと思いきや実は良いとこのおぼっちゃまなところもツボである。
わたしの美しい庭/凪良ゆう
この作品はTBSドラマ『凪のお暇』のキャストで想像してもらいたい。なぜならイメージにぴったりなのである。同じマンションに住む人たちの短篇集。
別れた奥さんと再婚相手の間に生まれた子供を引き取って育てている、縁切り神社の神主兼マンションの大家でもある統里。(高橋一生)
母親と継父を亡くし統里に引き取られたおしゃまな子、百音。(白鳥玉季)
隣の部屋の住人。統里の同級生でゲイの路宇。(中村倫也)
高校生の時彼氏を事故で亡くし未だ忘れられない近所に住む会社員、桃子。(黒木華)
その彼の弟、鬱になって一流企業を辞め今は無職の基。(ドラマには出てないがイメージは伊藤健太郎)
年齢的なところは少し設定とは違うが、俳優さんを想像すれば小説の世界観をイメージしやすいかなと思いまして。親子愛、友情、初恋、鬱病、同性愛、それぞれが抱える苦悩や運命に逆らわない生き方を選択していくことでその先に光が見える。
また、統里が神主を務める縁切神社で縁を切りたい対象は人とは限らない。”逃げ癖”とか、”余計なお世話”とか、”へんな思いやり”などを切るのもアリ。
私だったら何を切りたいかな。
か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる
かくしごと、秘密。5人の高校生の青春物語。普通とはちょっと違うのは、この5人は5人とも特別な力を持っている。その力とは人の気持ちが記号となって見えること。例えばトランプの4つのマーク、♠︎♢♣︎♡が喜怒哀楽を表していたり、シーソーみたいにバーが人間関係の上下を表していたり。5人とも見える記号は違う。
人の気持ちを推し図るのは大人になっても難しい。高校時代なら恋愛やクラス内での人間関係。5人は記号が見えるからそれに従ってうまくやれるか、といえば案外そうでもなくて、見えるからこそ逆に深読みしてしまって行動にうつれないことも。誰かのためにあきらめたり背中を押したり。
私もかつてはこの中の誰かだったのかも知れないなぁ‥。何とも眩しい青春時代である。
さて、いかがだったでしょう。私は若い時にはそれほど本を読んでこなかったので、本を読んで胸キュンするなんて事があるというのをおばさんになってから知った。特に有川浩さんの恋愛小説は胸キュンを通り越して身悶えしてしまうくらいだ。読み終えた時の私はきっと周りから見ると気持ちが悪いくらいニヤけているだろう‥。
あれ‥これって‥胸キュンじゃなくて‥もしかして動悸‥?