とんぼの色眼鏡
朝日新聞に連載されている“患者を生きる”、1月の最終週は関ジャニ∞の安田章大さんのお話でした。
ご存知の通り、安田くんはテレビでもいつも“色眼鏡”をかけています。最初にそれを見たとき、「最近のジャニーズはテレビでサングラスをかけるのかぁ」なんて思ったものです。無精ヒゲとかサングラスとか、あと坊主頭とかは昔のジャニーズにはなかった。安田くんのサングラス、というより色眼鏡姿はとてもオシャレで、ファッションアイテムだと思い込んでいました。
それからしばらくして、確か安田くんが転んだかしてケガをした時に、その色眼鏡の真相が明らかになりました。安田くんは、2017年2月、いつものとは違う片頭痛が気になり頭痛専門のクリニックを受診、大脳の前頭葉に大きな腫瘍が見つかって極秘に手術を受けていたのです。元々脳の“視界野”が過敏な状態になって片頭痛が生じていたのが、手術でさらに過敏性が増したため、特殊な色付き眼鏡をかけるようになったのでした。安田くんは自分の脳の画像を見て「アートやな」と思ったそうで、そのポジティブさがカッコ良いなぁと思いました。いくら良性だったとはいえ、脳の手術をするというのは怖い、でもその不安よりも、頭痛の原因が明らかになったことへの安心感のほうが大きかったのかも知れません。
読んでまず思ったのは、クリニックを受診して1週間後に手術が決まったことをマネージャーさん以外は知らなかったという事実に驚きました。入院のベッドの上でジャニーさんとメリーさんに「元気に戻ってくるので心配しないで」と手紙を書き、また関ジャニの他のメンバーには、術後初めて伝えたとか。ベッドの上で、術後の腫れた顔の写真を撮ってメンバーに送ったら、「変な顔やな」といつもの感じで返信がきて嬉しかったと。グループ内のその雰囲気や距離感をとても好ましく感じました。社長(ジャニーさん)と一社員(安田くん)は普通の会社と同様、日頃から顔を合わせる機会はそんなにないんだなというのと、同僚(関ジャニのメンバー)とは同じ部署(関ジャニ)で仕事する同僚以上の関係ではないのだなと。全て良い意味で裏切られたような、なんだか妙に納得したのです。
その昔は、アイドルはトイレにも行かない、なんて言われた時代もあって一般人には遠い存在だったのが、今はアイドルだって病気になるしキラキラのスポットライトにあたることを避けなきゃいけなくなったし、メンタルケアやコーチングの仕事に挑戦するために資格を取ったり、病気の経験を多くの人と共有したくて写真集を出したり。そして病気や、他のことででも、
生きづらさを感じている人々の力になりたい。それこそがアイドルの役割だと思うから。
と。アイドルも時代とともに変わったんですね。もちろんすごく良い意味で。
安田くんの話を読んで、”とんぼのめがね”という童謡を思い出しました。とんぼのめがねは、お空を見て水色になったり、お天道様を見てピカピカになったり、夕焼けを見て赤色になったり。アイドルとしての色、患者としての色、理解者あるいは経験者としての色。とんぼは、前にしか進めない生き物です。安田くんはこの先も光への過敏性とは付き合っていかなくてはいけないわけで、それはアイドルとしての活動に制限をもたらすことにもなると思いますが、“患者として生きる”安田くんに心からのエールを送りたいと思いました。何より、安田くんの色眼鏡はオシャレでカッコ良い。
とんぼのように、前へ前へ。