初めての大江健三郎。 『M/Tと森のフシギの物語』
今回初めて大江健三郎作品を手に取るにあたり、『M/Tと森のフシギの物語』を選択しました。
理由としては、ノーベル文学賞の対象作品の一つであることです。
いつか、大江作品を読もうと思い続けてきましたが、やっと読む機会が訪れてとても嬉しいです。(機会というか、自分の加減なんですけど...やっと読もうという気になったと言った方がいいのかもしれません💦)
どんなお話?
内容は、簡潔に述べることをすると、昔話でしょうか。
主人公(多分、大江氏自身だと思われます)が幼少期に祖母様から聞かされた、村の昔話についてのお話です。
どんな村が舞台?
四国にある、古くは甕村と呼ばれていた村です。甕村の所以としては、四方を山に囲まれた谷底に位置するその村を高台から見ると、甕棺のようにみえるからとあります。険しい山々に囲まれた村は世間から隔絶されています。
ミステリーモノ風に例えるなら、"陸の孤島"でしょう。
※イメージ
陸の孤島であるが故に、その村は独自の社会システムが構築されていきました。
社会システムが構築されていく様子は、建国物語のようでワクワクするものがあります。
むかーしむかしの村人の生活がありありと浮かび上がってきます。老いも若きも関係なしに働くことや独特の司法制度など、当時の日本社会とも大きくずれているであろうシステムが形作られています。
M/Tって何?
題名にあるM/Tとは
M(Matriarch 女族長) と T(Trickster トリックスター)
のことです。
このMとTは、昔話において語られる様々な時代において、MとTは対になって現れ、村に様々な影響を与えています。
主人公である僕はそのことに気がつくのです。
徒然なる感想
昔話は、ある種歴史的な事柄から、神話のようなものまでバラエティーに飛んでいて、飽きずに読み進められます。......と書いていますが、僕は読み始めた当初、あぁこれ読みづらいなぁと思いました。
- とんとある話。あったか無かったかは知らねども、昔のことなれば無かったこともあったにして聴かねばならぬ。よいか? うん!-
本文より引用
これは、昔話を話す前に祖母様が必ず主人公に唱和させるセリフなのですが、おぉ、読みづらい.... いかにも昔話な語り口になれるまでに150ページくらい読み進めなければいけませんでした、、、
ですが、慣れてくると本当に面白い! 昔話の登場人物の快活な生活ぶりには、ウキウキせずにはいられません。
次はどのような行動を起こすのか?気になってページを繰るてが止まりません!!
神話でもあり歴史でもあるような昔話は、あるいは古事記のようだなぁとも思ったわけですが!
神話と史実が混沌と一緒になっている様は、昔から村人の間で語り継がれてきたという、その"時"の流れを感じさせることに一役買っているように思います。
本書は、人類全体のバトンとでもいうようなものの大切さについても説いています。
バトンというのは、小説の中でいう村の昔話です。一般的には人類の歴史、人々が歩んできた道そのものということなのでしょうか。
我々は、バトンを過去から未来絵と引き渡すという、重要な役目を仰せつかっているのですね。
その役目を時には重荷に感じることがあるかもしれないけれど、成し遂げるべきだと僕は思いました。
『M/Tと森のフシギの物語』は、同じく大江氏の作品『同時代ゲーム』のリライトであるらしいです。
『同時代ゲーム』も気になってしまいますね!
同じようなお話であるようですが、どのように変化して『M/Tと森のフシギの物語』になったのか興味が湧きます!
あぁ、僕は他の大江氏の描く物語が読みたいなぁと思ったわけですが!
いつ、読もうと思うのかさっぱり見当がつかないわけなのです、自分のことなのですが!!
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読んでいただき、ありがとうございます!!
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