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[小説] 理系学生

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#小説

[小説] 理系学生 (4/4)

[小説] 理系学生 (4/4)

自己解離

 用を足し、手を洗おうと洗面台に向かうと、大きな鏡が目に入りました。そこに立っているのは他でもない、私の姿のはずでした。ただ、なんでしょう、違和感を感じるのです。どこか、正気を失い、やる気のないそんな感じが見て取れるのです。人の気持ちはこんな風に表に筒抜けなのかと思うとなんだか不快になりました。
 

教室に戻り、しばらくすると、在学中の行動目標を三つ上げろとの御達しがありましたので、

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[小説] 理系学生 (3/4)

[小説] 理系学生 (3/4)

無味感心

 さて、時が経ち、元の班に席が移動しました。これから、どんな無駄な時間が流れるのか、むしろワクワクしている。そんな自分がいました。
大学の長所短所を述べろとの御達しがありました。もちろん、議題が決まっても何も始まらないのは決まりごとなので何も驚きません。

 しかし、教員が我々の班を問題視し始めたのは明らかでした。毎テーマごとに我々の班にテーマ説明に来るようになったのです。
 

私は

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[小説] 理系学生 (2/4)

[小説] 理系学生 (2/4)

諦め

 どこまで神は、私を嘲るのでしょうか。
お話しできそうもありません。
なぜならこの班の誰一人として、黒髪だからです。
偏見だ、と私を責め立てる読者も多いでしょうが、これは雰囲気として感じ取れるのです。「同類だ」と。

 あぁ、ひと席はぽっかりと会いたままです。
もう女子は来ないのでしょうか。
あぁ、あの期待していた僕はなんとも哀れなのでしょうか。
嘲笑せざる得ないじゃないか。
皮肉にも、過

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[小説] 理系学生         (1/4)

[小説] 理系学生 (1/4)

序章

 本日は、私の通っております某大学において、所属する理工学部とお隣にキャンパスがありますD学部 —お隣と言いましても、普段、関わりを持つことが難しいのですが— がディスカッションを行うという、催しが行われるのです。

 「さて、今日のお菓子パーティの班に女の子はいるのでしょうか」
陽気な気分で自転車をこいで駅に向かっておりました。
「男だけだったら、陰鬱な雰囲気を醸し出してやろお」
 そん

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