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[小説] 理系学生 (4/4)


自己解離

 用を足し、手を洗おうと洗面台に向かうと、大きな鏡が目に入りました。そこに立っているのは他でもない、私の姿のはずでした。ただ、なんでしょう、違和感を感じるのです。どこか、正気を失い、やる気のないそんな感じが見て取れるのです。人の気持ちはこんな風に表に筒抜けなのかと思うとなんだか不快になりました。
 

教室に戻り、しばらくすると、在学中の行動目標を三つ上げろとの御達しがありましたので、三つ考えました。

①世界情勢に目を向ける
②英語力をつける
③専門知識だけでなく幅広い知識を身につける。

この三つであります。如何にもな内容に自分でも驚嘆し呆れました。これしか思い浮かばないのです。
次に、班に発表せよとの御達しです。ただ機械的に三項目を述べれば良いはずでした。事実、他の班員の発表を聞きながら、「三個、早口で話してやらぁ」そう思っていたのです。

いざ自分の番が回ってまいりました。淡々と三つ述べたのです。ただ、なぜでしょうか、私は付け加えました。
嫌味たっぷりに「現状、日本国内の企業の役員、トップ層は結局文系である。したがって文系の知識もしっかりと一般教養として学ぶべきである。」そう発言していたのです。
私自身驚きましたし、今でも信じられません。なぜそんな無駄なことを言ったのでしょう。恐ろしいものです。
 

さて、授業の終盤となりました。今日の感想を適当にタラタラと綴り(班で1番多く書いた自信があります)、アンケートの記入をしました。アンケートもしっかりと仮面を被り、あたかも模範生のようなことを記述しておきました。


終焉


高らかと解散が宣言され、拍手喝采が巻き起こりました。担当教員からこのコミニティーをぜひ続けなさい。との説明がありましたが、他の班とは違いライン交換などはせず、解散しました。私の変に曲がった負けず嫌いな性格からでしょうか、ついに菓子を一個も手に取らずに終わりました。1つ達成感を感じている自分を恐ろしく思いました。 

 教室を出ると、物理学科の学友と会い、僕は笑顔を取り戻しました。事の顛末を話すと、「お前がちでやばくね?」と半ば叱責のようなことを言われました。
やっと沈黙から解放され、これでお話を終えたい。そう思います。読者の皆様、お付き合いありがとう。また会いましょう。



              ー完ー

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