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澄んだ空気が一段と 青空を高くする 小さな薄い雲だけが そっと傍で浮いている あなたの場所からも 見えますか いつからか 見える空が異なって いつからか 違う陽を浴びていた それでもこんな晴れた日は あなたと目が合いそうで そっと見上げて探している あなたの空も 晴れですか あなたの空も 元気ですか
すっかり緩んでしまった影が 地面に染み込んでいく 滑らかに すもも色を帯びた公園には まだ 賑やかだった昼間の 火照りが残っている 蒸れた草木にまみれて 聞こえてくるのは 泡のような 空耳かなにか 「ぽく」 「かぱら かぱら」 「しゅぺぺ」 枝に引っかかった おしゃべりのかけら 「ちっかん ちっかん」 「ぷかぷか」 「るるる。。」 土深く 新芽の かかとを打ち鳴らす音 さっそく降りはじめた夜露が 律儀に佇む遊具の 赤錆を讃え 頼りなく瞬ぐ街灯を じんわり ふやか
僕はひとりぼっち 僕がもし いなくなったとして 僕の名を知っている人は どう思うだろうか 僕はひとりぼっち 僕が今 いなくなったら 僕の名を呼んでくれる人は どれだけいるか これが僕だと思うけど 自分のせいだと誰かはいうけど そうなのかい 僕はひとりぼっち それでも僕は ひとりぼっちさ それでも変わるつもりもないさ これが「僕」だから 僕はひとりぼっち 僕がもし いなくなったとして 僕の夢を見てはくれるかい? ひとりぼっちの夜に おもうこと #詩 #自由詩 #
ドアに鍵をかけ ようやく息を吐いた 重たくなった視線は 床にこびりついて なかなか剥がれない ついこぼれ出る 不安や焦り 許されない感情の欠片 絹のように 甘いほころびもまた パチパチと電気を散らして 空中に溶けていく 淡い余熱に包まれながら その日の出来事を 壁に投影し 丁寧に 咀嚼を繰り返す
大胆に すべてを薙ぎ倒し 凛と立ちのぼる姿に 出遅れたことを 思い知らされた 眩しい色彩にあやかりたいのだが もうとっくに 手の届かないところへ行ってしまった 所詮は とり巻く景色の一端でしかない 偽物 擯斥の壁の 忙しなく あっちへこっちへ傾けては 抱擁のままごとを繰り返す 偽物 取るに足らない もはや 眼中にないのだ 上ばかり向いて 輝かしく踊り尽くし 潔く散る聡明さは たちまち
老いた人魚が 海の底に横たわっている かつて 煌びやかに 虹色の生命力を誇っていた鱗には 苔や石灰がこびりつき 波間から 時折差し込む淡い光に 鈍く応じている 海流に綻んでゆく 錯覚に浸りながら 「泡に返る」 という昔話を思い出し 夢うつつ 目を閉じた
夜が来る 明日へのシャッター 閉まるその前に 滑り込む 間に合った 明日がやっと 僕にも来る #詩 #自由詩 #詩歌 #創作 #短編 #夜 #スキしてみて #眠れない夜に
雨の昼下がり その静かな雨音が いつしか僕のこころに いくつもの水たまりを残した ひとつひとつの水面に さまざまな記憶が それぞれの風景となって 映し出されている 忘れえぬ風景と いまにも記憶の縁から こぼれ落ちそうな風景がつらなり ささやかな物語を綴っている 水面に映った 懐かしい顔が見えたとき 僕の気持ちは昂り 思わずその人の名を呼ぶ 現実よりもさらに鮮明な画像となって その人は僕に笑いかける 名伏しがたい思いが涙となって 僕の眼からこぼれ落ちる やがて吹き渡
誰もがスマホとにらめっこする朝の電車の中で、ひとり文庫本を読んでいる女子高生がいた。 両手で大事そうに本を持ち、前屈みになって文字を辿っている。 その姿が、僕には新鮮なものに見えた。 女子高生はふと顔を上げ、窓の外の景色を放心したように眺める。 いや、見ているのは景色ではなく、きっと物語の世界なのだろう。 やがて車内アナウンスが次の駅の名を告げる。 女子高生はいそいそと文庫本を鞄にしまいドアへ向かう。 空想の時間から現実の時間へ。 彼女の顔にキリっとした緊張感が浮かぶ。
記憶にはけして残らない一日 ときめきも 感動も 新しい企てすら生まれず 誰かの心に爪痕さえ残せない そんな空白の一日が終わろうとしている 怠惰な自分を責めながら 僕は家路につく 取るに足りない苛立ちなど 微塵も見せずに 一日のノルマを無事に果たした 善良な労働者のような顔をして 人混みに紛れる ショーウインドーに映ったのは 平穏無事な一日に 実は満足しきっている 平凡な男の姿 このようにして僕は 一日一日を浪費してゆく 明日こそ何事か起きるような 淡い期待を抱きながら
大きな空を見上げて 青い空の間を飛んでく飛行機 どこまで飛んでく ぐるんと回って飛行機雲 夢を乗せて いつの日か 大きな空から街を見たい 大きな空を自由に走る 白いもくもく ひつじ雲 後から後から追いかける 空を見上げた昼下がり 青い空に白い雲 #詩 #自由詩 #詩歌 #創作 #短編 #空の日 #スキしてみて #眠れない夜に
いつだって自信はないさ それでもさ 何とかやっていかなきゃいけない それでもさ 何とかなっている そんなつもりもないけれど いつだって自信はないさ それでもなお ひとまずは平気な顔しているさ それでもまだ 何とない不安と 付き合いながら過ごしてるだけ いつだって自信はないさ そんなんでもこうしているさ #詩 #自由詩 #詩歌 #創作 #短編 #自信 #スキしてみて #眠れない夜に
与えられたものだけが きれいだった 手に入れたものは ぜんぶ 「私」で よごれてた
失恋してすぐ こころの持って行き場がなくて いつも優しかった先輩に ”付き合ってください” って伝えたら ”少し考えさせて”って 真剣に悩んでくれたから 浅はかな自分が急に恥ずかしくなって ”やっぱ いいです!!” ってすぐにその場を逃げ出したのも こんなふうに暑い夏だった あれから夏が私には少しこそばゆい