【短編小説】コーヒーの揺れる時間に(8100文字)
カラン。
思ったよりも高く、澄んだ音が店内を満たした。
最近懇意にし始めたカフェなのだが、どうも今日は客が少ない。
今日は店内が静かだ。
たまたま今日が木曜日だから客足が遠のいているだけなのか、はたまた雨がそうさせているのか。
カフェは少しざわめいているくらいが好きだ。
普段は話し声のこだまが心地よく、薄っすらと聞こえるジャズが夕暮れのこのひとときを彩る。
今日は一人だな――
カウンター越しに見えるマスターの姿も、今日はこころなしか小さく見える。
「ホットをひとつ」
いつ