約束の卵〜けやき坂から日向坂へ｜苦悩を乗り越えたアイドルのサクセスストーリー【#私の勝負曲】【note大学軽音部】
日向坂46。
テレビで見ない日はないほど、日向坂46は活躍している。
そこに至るまで、決して平坦な道のりではなかった。計り知れない努力と数えきれない涙があった。
逆境が現れる度に、彼女たちは乗り越えていく。
そこに、応援されている理由があった。
今日は、日向坂46についてコラムを書いていきたい。
不遇のけやき坂46時代
日向坂46は、『けやき坂46』を前身としている。「けやき坂」と書いて、通称「ひらがなけやき」と呼ばれた。
けやき坂46は、欅坂46のアンダーグループ的存在であり、長濱ねるのために2016年に結成されたグループであった。
1期生メンバー
前列左から：高本彩花、齊藤京子、柿崎芽実
2列左から：影山優佳、東村芽依、加藤史帆、潮紗理奈、佐々木久美
3列左から：高瀬愛奈、井口眞緒、佐々木美玲
欅坂46がスポットライトが当たる中、けやき坂は常に影の存在だった。
CDはリリースできない、握手会では閑古鳥がなく状態。けやき坂と欅坂46とでは、人気だけでなく、歌やダンスの実力も誰が見てもその差は歴然であった。
ファンや運営会社の期待に応えるべく、メンバーは必死に努力を重ねた。
もがき苦しむメンバーを誰よりも気を遣ったのが長濱ねるだった。練習が終わるとメンバーと丁寧に対話して、彼女たちのモチベーションを上げる。長濱ねるは、少しも偉ぶることもなく、他のメンバーと同じ目線、歩調を合わせるように接する。メンバーも謙虚な長濱ねるを信頼していった。
左から、齊藤京子、柿崎芽実、長濱ねる、加藤史帆
しかし、長濱ねるは、欅坂46の活動で時間が取られ、けやき坂の練習に合流できない。段々とけやき坂のメンバーとの実力差が出始め、長濱ねる自身も悩み、苦しんでいった。
自分のためのグループというのは、当時18〜19歳の彼女には荷が重かったのかもしれない。
そんな中、長濱ねるが欅坂46に集中するために、けやき坂からの卒業が突如発表される。その知らせにメンバーたちは、強い動揺に襲われる。
客観的な視点からすれば、長濱ねるのために作られたグループなのに、彼女が抜けたら何のために存在するのか分からなくなってしまう。
しかし、メンバーからすれば、精神的支柱である長濱ねるがいなくなってしまうことの不安の方が大きかったのだ。
ハッピーオーラに包まれて
けやき坂は、キャプテン佐々木久美のグループだと言っても過言ではない。表向きは長濱ねるのグループだったが、誰よりもけやき坂を愛したのが佐々木久美だ。
キャプテンがいなければとっくに解散していたと思う。
長濱ねるの卒業を受けて、皆んなが下を向く中、佐々木久美はグループのビジョンとして『ハッピーオーラ』を掲げる。ファンからエネルギーを貰い、メンバー全員がハッピーに向って活躍することをミッションとした。
こうして、メンバーの気持ちを一つにしていく。
2期生との出会い
だが、転機が訪れる。
体制が整いつつあったけやき坂はまたも苦難に遭遇する。メンバーにも知らされていなかった2期生メンバーの募集だ。2017年5月のことだった。
運営会社からすれば、グループを新たに印象付けるための施策だったのかも知れない。それは、資本主義的成功への取り得る一つの戦略だ。
しかし、1期生は、「自分たちには魅力がないから新メンバーを入れるのでは？」と捉えてしまった。なんとも皮肉なすれ違いだった。
『これから入ってくる子たちは何も悪くない』
メンバーと運営会社は話し合い、2期生を快く迎え入れることにした。
この決定は間違っていなかった。
2期生は、精神的に大人で、素直な人柄、優れたタレント性、そしてグループへの愛が溢れている。欅坂46ではなく、何より『けやき坂46』を好きなメンバーが集まったのだ。
2期生メンバー
上段左から：金村美玖、河田陽菜、小坂菜緒
中段左から：富田鈴花、濱岸ひより、丹生明里
下段左から：松田好花、宮田愛萌、渡邉美穂
このメンバーでCDを出したい、ハッピーオーラで高みを目指したい。1期生はいつしかそう思うようになった。頼もしい2期生と共に新たなけやき坂の船出となった。
オードリーとの出会い
もう一つの転機となることがあった。それは、2018年4月に冠番組『ひらがな推し』が放送開始したことだ。MCは、根強い人気を誇るオードリー。どんな化学反応が起きるか、お互いに不安の中スタートした。
しかし、そんな不安は杞憂に終わる。
けやき坂の誰もが爪痕を残そうと必死にオードリーにくらいつく。オードリーも、男子校のノリもそのままに全力で応える。それに、番組制作スタッフは、けやき坂とオードリーの大ファンであり、番組からその熱量が伝わってくる。
単なるアイドル番組と言うだけでなく、純粋にバラエティ番組としても、最も面白い番組の一つと言っても過言ではないクオリティだ。
初めはぎこちなかったオードリーとけやき坂との関係は、近くの女子校の生徒と仲良くなる男子生徒のように、放送回を重ねる度に仲が深まっていく。
今では、普段はウォーズマンの如き鉄仮面の春日俊彰が、メンバーの丹生ちゃんにデレデレの笑顔をするまでになった。
プライベートでも、オードリーの日本武道館公演に足を運ぶなど、交流を深めていく。
なんとも微笑ましい姿が視聴者の心を掴んだ。そして、オードリーのファンがけやき坂46の魅力に気づき、アイドルファン以外のファン層を開拓したのだ。また、けやき坂のファンもオードリーのファンになっていった。
けやき坂から日向坂へ
日本武道館3日間連続ワンマン公演、アルバムのリリースなど快進撃が続くけやき坂46だが、まだ心残りがあった。
欅坂46のアンダーグループというイメージは拭えず、活動の限界が見えてきた。それは、ファンのみならずメンバーも感じていた。
そんな中、グループが結成して3年が経った2019年2月。ついに、けやき坂46から日向坂46へと改名することが決定した。そして、2019年3月27日にメジャーデビューシングル「キュン」が発売されることも合わせて発表された。
この瞬間、欅坂46のアンダーグループから脱却し、独立したグループとなった。
自分が何者か分からなくなり、もがいていた彼女たちが、自分たちのアイデンティティを勝ち取った瞬間だった。
約束の卵
そんな彼女たちには目標がある。
東京ドームでの単独ライブだ。
けやき坂時代のアルバムに収められたトラック「約束の卵」には、いつか東京ドームでライブをする事を夢見て走っていく彼女たちが描かれている。
この『卵』は、東京ドームの創業時の愛称Big Eggに由来する。
そこにはこんな歌詞が書かれていた。
銀色のカップ 伏せたような目印がそこにあるよ
輝いている未来の形は大きな卵だ
待っててくれるか 夢叶うなまで
君のことを連れていく 苦しくても諦めない
僕ら信じてよ
日向坂46は、ただのアイドルではない。
何を支えにして目標に向かえば良いか。
自分たちが何者か分からず、つまずきもがく。
多くの人が一度は体験する、アイデンティティを確立するための試行錯誤。
日向坂46は、そうした挫折と苦悩を乗り越え、努力と笑顔で勝ち抜いてきたアイドルなのだ。
だから、ファンも彼女たちの活躍を自分と重ね応援する。目標に向かって頑張るアイドルに背中を押され、明日からの活力にしているのだろう。
2020年にその目標は達成される予定だったが、コロナで延期を余儀なくされた。
「約束の卵」は、日向坂46にとっての『私の勝負曲』。常に勝負してきた彼女たちを描いた、正に勝負曲と言えるアンセムだ。
今年こそは、日向坂46とファンとの間に、このアンセムが東京ドームに木霊すだろう。
<了>
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note大学の軽音部に入部しました。今回のコラムは軽音部の活動として書きました。入部には、note大学へ入学が必要です。
こちら、軽音部の部長さんMiwaの記事です。
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